第4話

 僕はゆっくりとその男に近づく。


「あの……

 僕、小間 綾人っていいます」


 僕がそういうと男は僕を見たあと少し驚く。


「小間綾人……?

 鈴鹿さんですか?」


「えっと、うん。

 鈴鹿 隼人は前世です」


「……本当に貴方が?」


「うん」


 まぁ、普通は信じないよね。


「シンガポールだっけ?

 なんでそんなところに行きたいんだ?」


 男は砕けた口調でそういった。

 この男の人の名前は、斎藤 一さん。

 探偵業をやっている人。


 僕は、一さんに事情を話した。

 信じてもらえるかわかんない。

 賭けだ。

 でも、不思議なことに一さんは信じてくれた。


 だからもう一度賭けをした。


「僕を誘拐して」


「なにを言っているんだ?」


「えっと僕パスポートないし。

 お金もない」


「まぁ、両親から虐待を受けているんだっけ?」


「虐待というか放棄かな」


「そっか」


 一さんは僕の身体を見てため息を付いた。


「とりあえず飯食いに行こう」


「え?」


「腹減ってるだろ?」


「うん。

 でも、僕はお金ないよ?」


「んなもん。

 俺が出す」


 一さんがそう言って僕の頭をくっしゃっと撫でる。


「……え?」


「アンタには借りがあるんだ」


「え?借り?」


「ああ、鈴鹿隼人さんにな……

 アンタは覚えてないだろうけどな」





 そうして僕は、一さんに喫茶店に連れて行ってもらった。

 そこで食べたオムライスがとても美味しかった。

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