第3話

 水樹さん……

 僕のこと覚えていてくれたんだね。


 メールを見るたびに不安がよぎる。

 無事にシンガポールから帰ってこれたのか。

 それが気になる。

 メールを送ることはしないほうがいいね。

 いきなり『前世の記憶が蘇った隼人です』

 ってメールを送ったら……

 アカウントがハックされたと思いもうメールを送ってはくれなくなるだろう。

 それは、避けたい。


 だから僕はシンガポールに行くことを決意した。

 でも、どうやって行こうか。


 というか、シンガポールがどこにあるかすら知らなかったりする。

 まぁ、飛行機や船を使えば行けるのだろうけど。

 その手段がない。

 なんたって僕は3歳。


 どうやってもひとりでシンガポールには、いけない。

 誰かに頼むか……


 何でも屋に相談してみるか……

 でも、お金はないしな。


 とりあえず事情を話して話を聞いてくれる人を探そう。

 今のメールアドレスを使って適当に検索にヒットする探偵業の人にメールしてみるか。


  私、小間 綾人と言います。

  実は、前世の記憶を持ったモノで理由は聞かずシンガポールに連れて行ってくれる人を探しています。

  お金は後で払います。


 これで、いいかな?

 いいわけない。

 でも、これしかない。


 とりあえず、同じ文章をコピペして送信してみた。


 ……返事はこないね。


 と思ったらすぐに返事が来た。


  わかりました。

  時間は合わせます。

  一度あってみませんか?


 送り主は、斎藤 一ってある。

 新選組かな?

 とりあえず、この探偵事務所近所だ。

 もしかしたら、すぐに会いに行けるかも。

 そう思ってすぐに返信をした。


  ありがとうございます。

  できれば早めに会いたいです。

  今日の昼に枚方公園の前で会えませんか?


 まぁ、今日とか無理だろうけど。

 そう思っていたらすぐに返事が来た。


  わかりました。

  今日の午後3時に会いましょう。

  その時間くらい枚方公園前で待ってます。


 僕は、すぐに家を出た。

 暑い部屋より外のほうがマシだろう。

 そう思って枚方公園前に徒歩で向かった。

 2048年は、3歳の子どもがひとりで歩いても大丈夫なのだろうか?

 道は変わっているな。

 でも、なんとなくわかった。


 枚方公園前に向かうと天然パーマにサングラスの男が座っていた。

 この人は関係なさそう。

 そう思っていたら、この男は僕の方を見ている。

 なんだろう?

 少し怖いな。

 なんてったって僕は3歳。

 抵抗する術がない。


「……あのもしかして鈴鹿隼人さんですか?」


 違う人に声をかけている。

 しかも年配の人。


 年配の人は答えた。


「いえ、違います」


 男の人はがっかりとした様子で肩を落としてた。

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