第28話

「失礼します! 営業部の生田です! うちの上京、いますよね!」

パーテンションで区切られたスペースに駆け込んで怒鳴った。

「あ、ああ、生田くん?」

「いるけど寝てるよ?」

寝てるよじゃないよ、何飲ませたんだ! 割と有名な話だろ、上京が飲めないなんて!

「引き取ります」

場を乱すようで悪いけど、お邪魔して奥で横になっていた上京を抱き起した。吐かなければいいけど、どれくらい飲んだだろう。聞けば早いけど、飲ませた連中に声もかけたくない。腹立たしい。

「失礼します!」

「あ、生田主任」

きのこか。今、苛立っているから声をかけないでほしいのに、空気も読めないか。

「悪いけど、急いでるから」

「僕が、その」

「何? 急用?」

「上京主任にお勧めしたのが、ウーロン茶では無くてウーロン……」

こいつ……。

「ねえ、きのこ。わざと?」

「飲めないと聞いたので、ほんとかなと」

抱き上げていた上京を一旦床に置き、前髪をかき上げて顔色を窺った。

「ちょっと待ってて」寝ている上京に声をかけて、きのこの側に行き胸倉を掴んだ。

「上司を愚弄する奴は許さない! ふざけるな! おまえの遊び心でもし上京が中毒でも起こして倒れたら、どう責任を取るつもりなんだ! こいつは替えが利かないんだぞ!」


「生田くん、我々がちゃんと見ていなくて……」

「黙ってて下さい! 飲んで横になった上京を介抱もしないくせに!」

どうして、会社にとって大事な戦力の上京を放置出来るんだ。

「生田主任、どうして怒るんですか」

ああ、こいつは。そうか。


「大事な人が出来たら、今のオレの怒りが分かるはず」

何も理解しない奴に恫喝しても利かない訳だ。

上京を抱き上げて、連れ帰った。


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