第27話
歓迎会はわざと上京と合わせて途中から参加し、部長と菊原課長に挨拶して帰るつもりだった。居酒屋を貸し切った喧噪の中で、上京と離れないようにしてたのに、誰かに呼ばれたのか姿が消えた。
あいつ、何処だ?
まずいな、オレの知らない所で眠り姫になったらさらわれる。
「あら、おいちゃん。活躍は聞いてるわ」
「菊原課長、お久しぶりです。恐縮です、課長もお元気そうで」
「ねえ、かんちゃん知らない? 会いたいんだけど」
え?
「課長の側には行きませんでした?」
「来ていないから心配なの。かんちゃん、飲まされていないかな? 寝ちゃうでしょ?」
スマホを鳴らしても出ない、まずい。
「課長、失礼します、上京を探すので」
この居酒屋、3階まであるのか。上から探すか、どうしたらいい。
「おお! おいちゃん! どうした、顔色が悪いな」
「部長、上京を見ていませんか?」
「いや? 来てるのか?」
「失礼します!」
あいつ! もう誰にさらわれた? 階段を駆け上がって、1スペースづつ挨拶がてら覗いて探すしか無いか。そんな戦術で見つけられるか?
……上京に固執した奴を見つければ早い、商品部か、常務だ。
商品部はさっき菊原課長に会ったから、無い。じゃあ、常務だ。何処だ、あの野郎。
上京に何かしたらただじゃ済まさない、スマホで常務を呼び出すしか無いな。着信音で見つけ出すか。
何処で鳴ってるか、この喧騒じゃ厳しいな。
「いたいた、おいちゃん、かんちゃん見つけたよ! 2階で寝てるみたい! 連れてきて」
菊原課長、いつも助けて下さるな。
「ありがとうございます!」
誰が飲ませたんだ、もう!
「総務部の集まりにいるわよ、おいちゃん!」
何だって?
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