第26話
「ああ、生田主任、あれ、お帰りですか?」
顔を見せるなといったはずのきのこがオフィスに生えている。しかも走ってきた。足があるんだきのこって。移動が出来るんだ。ああ、嫌だ。
「何、きのこ。帰るけど」
「あの、お尋ねしたくて。生田主任の住所なんですが郵送した書類があて先不明で返却されまして、引っ越しされたなら届を出していただきたくて」
忘れてた。でも郵送するような書類なんて無いはず。あ、こいつ!
「おいこらきのこ! 勝手に人の住所を探ったな? 何がしたいんだ馬鹿野郎!」
「明日の歓迎会は来て下さいね、生田主任、おつぎします」
こいつ燃やすか。よく焼き目が付くだろうな、きのこだから。
罵れば罵るだけ食らいつく感じがする。気持ち悪い。
「返事になっていないぞ、きのこ! おまえなんか歓迎していない、オレの個人情報を探るな、顔を見せるな、駆け寄るな馬鹿野郎!」
「生田! 新入社員を恫喝するな! 脅すな! こっち来い!」
「……で、俺は車の前で15分も生田を待ったんだ?」
「悪い。何か奢るから」
何か、きのこが絡むと上京、機嫌が悪くなるな。何だろな。話はしたつもりだけどな。
「運転する」
「任せた、帰りに何処か寄ろうかな」
珍しい。上京が寄り道するなんて。
「何処?」
「任せる」
は?
「何? 何処か言わないと連れて行けないぞ」
「……音楽でも聴きたいかな。この気分を吹っ飛ばすような」
「ああ、そうですか」エンジン切るか。
また何か不安にさせたんだな。有り得ないんだけど。
「上京。明日は一緒に抜けるから、飲んでしまってもオレが連れ帰る。心配しなくていい」
「それは心配していない。最初から頼る気でいた。生田、流されるな。それが不安だ」
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