第22話

ベッドに上京が寝ころんでいるけど、可愛いけど、手は出さない。冗談じゃない、あのクズに叱られるのもご免だし、この獣に何されるか分かったものじゃない。

「俺の抱き枕が無い」

煩いな。

部屋に入れた時点で負けだけど誰が一緒に寝るか。

タブレットで天気予報を眺めながら、やはり明日は動けそうに無いなと思う。

朝1で会社に連絡して指示を貰うか。

「生田!」

「煩い、上京! 何だよ、吠えるな!」

「眠いって言ってるだろう、この腑抜け!」

「さっさと寝ろよ、馬鹿野郎!」

眠いという割に大声出すなあ。

「そんなにタブレットが好きか、生田」

「あ? 天気予報見ないと。明日危ないからさ」

ああ、このライトが気になるのか。じゃあ、消して寝かせるか。

「寝ろよ、上京。オレはその辺……」腕を取られてねじ伏せられた。こいつ本当に身軽だ。

「抱き枕が無いと眠れないって何回言わせるんだ、俺に隈が出来たら部長が怒るぞ!」

「違う意味でオレが怒鳴られる!」

ああ、もう抵抗しても駄目だな。

「分かった、添い寝する。だから上京は寝ろ。……絶対に手を出すな、触るなよ!」

「隣で寝てる優男に手を出さない奴がいたら、お目にかかりたいな」

脱ぎかけたジャケットをまた着ようかと思った。怖い。

「本当に眠いんだ、生田。腕だけ貸してくれ」

誘うな、こいつ本当に! 手を伸ばすな、分かってるのか?

ああもう。

項垂れてしまう、迷う、絶対やばい。上京もやばいけどオレもきてる。

「分かった、」

もう仕方無いな、さっさと寝かしつけよう。

「上京、もう少し壁の方へ行って。おまえのベッドより広いけどオレも疲れてるから肘とかぶつけたら危険だ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る