第19話
奈良県までは無事に着けたけど矢張りと言うか電車待ちを上京が嫌がり、タクシーで先方へ向かった。
「わざわざお越しいただいて恐縮です」
「いえ、お時間をいただきましてこちらこそ」
商談内容はコーヒーショップで使うプラスチックのストローの使用を中止して、紙ストローに切り替えたいが他社では納得する金額と納品日が出なかった、なのでうちに問い合わせたらしい。
「紙ストローでしたら、当社では210ミリ10000本単位、11000円で提示出来ます」
「切りのいいところで、もう少し勉強できませんか」
「お尋ねしますが他社では11700円前後の提示ではありませんか? その卸価格で流通しているはずです。当社では11000円、そして追加生産が可能なので即時納品可能です。何かご不満が?」
威圧するな上京。
「確かに、11700円でした……」
「ではご理解いただけましたね」
押すな、おまえはもう。
「よろしくお願いします」
あらら。
「では、こちらにご署名と捺印をお願いします」
「迅速だ。さっさと切り上げたかったのか? あれ、底値じゃないだろ」
「ああ、もしごねたらと思って際の数字を持ったけど出さずに済んで良かったよ。粗利が取れた」
流石だな。威圧するからなあ。この顔で。
「早めに帰れそうだな、生田」
「ああ、だけど何処か寄る? 折角、奈良まで来たし。東大寺とか拝観するか?」
どうせ奈良駅まで戻るし、近くにあったはず。
「鹿、見たいな」
げ。
上京が言うと女子を連れて歩いてる気分になる。その顔で鹿が見たいとか言うな。
「じゃ、奈良公園ね」
歩道を歩いていると桜の木の枝には咲き始めた花弁が覗いている。こちらの方から咲くんだな、桜前線は北上だからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。