第18話

「台風で足止め食らいそうだから、余分に服を持っていく方がいいと思うんだ」

部屋に戻れば上京は着々と準備しやがる。

「業務だから仕方ないけど、これは業績に繋げる機会だと思えば苦じゃないな」

「上京。オレ1人で行かせてくれ」

「何でだ。2人で行く方が確実に落とせる。生田の容姿と低姿勢、俺の剛腕で必ず契約を勝ち取る。その自信はある」

流暢に話すな、おまえ。

「ここで片を付ければ多少の箔は付く。生田にもいい話じゃないか」

「おまえなあ、上京。オレを危惧してくれるのは有り難いけど常軌を逸してないか」

また自分を見失っていそう。

すぐに突っ走るからな。

明日、部長に再度話して、上京に諦めさせるか。オレが言ったところで聞きそうに無い。

「何か、食べる?」

「サラダ」

「ちゃんと食べろ。他には?」

「サンドイッチ」

「パンは止めろ。何の為におまえから食パンを取り上げたと思うんだ」

「じゃあ、オムライス」

「おまえの部屋には炊飯器が見当たらないが。米も無い」

「明日、買いに行こう!」

喜ぶな馬鹿野郎。休日くらい解放しろ。しかし可愛い、ほだされる。

「生田と歩くの好きだ。高揚する、こんないい男だからさ」

嬉しがられると止め刺された。

だけど女子みたいに買い物選ぶの遅いんだよな、上京。

「買ってくるから」

「俺が選ぶから生田が使え。一緒に歩くの嫌とか言わせないからな」

吠えるけど子犬みたい。

可愛い、畜生。惚れ直す。目眩がする、落とされた。

「……はいはい」

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