第15話
「出張の日、台風が直撃しそうなんだけど」
部屋に帰ると、パソコンを見ながら上京がふくれっ面だ。コーヒーでも入れてやるか。
「ちゃんと帰れるかな。電車の中で缶詰とか嫌だ」
待つの嫌いだからな。
て、電車?
「経路、分かるか? 上京」
「ああ。確認したら名古屋まで新幹線のルートだと乗り換えで近鉄特急で奈良に入るか、大阪まで行って近鉄線で下るか。この2択だけど、どちらも近鉄線は1時間に数本しか走っていない」
困難しか感じない。
だけどその地域に根差す方々は大変だな。苦労が計り知れない。
「しかも、奈良に入ったら取引先まではJR本線だ。これも時間に余裕は無い。タクシーだな」
押し付けられた感が半端じゃないな。
どんな取引先か、確認しないと精神的にもやられそうだな。
「まあ、生田と一緒だからそれはいいか」
四六時中一緒なのにまだ言うか。
いっそ、少しは距離を置いたほうが新鮮じゃないのか。
上京の独占欲もおかしいとは思うが、オレも惚れたしな。
「きのこより」
悪意しか伝わらない。余程懲りたな上京。無敵のおまえにも嫌な壁が出来てしまったな。
と言うか、きのこと比較かよ、この野郎。苛立つな。
「部長と話してたのって、それだけ? 何か別用とか言われなかったか?」
「おまえに手を出すな、とは言われた」
おい。顔色を青ざめるな。
「出さないから」
「腑抜け野郎か?」
イラつく、こいつ!
「最近、手を出さないから病気でも拗らせたかと思った」
「頻繁に抱いてるみたいな言い方止めろ」
これでも抑えてるし。
「萎えたのかなと危惧したじゃないか。いっそ病院行くか?」
EDじゃない。馬鹿にして。こいつ暴言が過ぎるけど惚れたから苦にならないのがオレの負け。
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