第13話

「上京、おまえは手を出すな」

「了解」

脇道に入るとブレーキを踏んで見返り「降りろ」と命令した。

オレも車から出て、瀬戸に平手打ちをした。

「態度を改めろ。そうでなければ、オレは何も教える事が出来ない。幾ら上司の指示でも、おまえ自身が社会に沿わなければオレから言う事は何もない」

「パワハラです」

「何とでも言え。おまえの舐めた態度は腹立たしい」

「生田主任、好きです」

「いい加減にしろ。上司を舐めるな。付き合いきれない」

「上京主任と関係あるんですか」

何で?

「あいつに負担を与えるな。うちの会社の稼ぎ頭だ。守るのは当然だ」

「顔だけじゃないんですか」

イラつく。

「人目をはばからない美しさだけじゃないですか」

もう無理。

今度は頭を叩いた。

「上京もおまえの上司だ。馬鹿にするなら容赦しない」

胸倉を掴んで引き上げた。

「あいつは賢い、やり手で大事な戦力だ。容姿だけじゃ仕事は取れない。上京を揶揄するな、暴言を吐いたおまえは許さないし存在を認めない」

財布から10000円札を出して「この先に駅があるから電車に乗って会社へ戻れ」と押し付けた。

「会社にはオレから連絡する。顔も見たくないからな、じゃあ」

きのこが「置いていくなんてひどいです」とぼやいたようだが気のせいだ。きのこは話さない。

車に戻ると「切るのが遅い!」と上京に怒鳴られた。

「俺は生田の顔を立てて我慢した!」

「ああ、悪かった。気分よくないよな。オレもかなりきた」

ウインドウを下げて空気を入れ替えると、互いに大きく息を吐いた。

「じゃ、行くか」

「任せた」

上京が「俺から連絡しておく。あの無能ぶりを」と低い声で言うので「よろしく」と頷いた。上京なら包み隠さず、そして尾ひれまでつけて報告するだろう。


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