第12話

「上京主任、生田主任と同じ香りしますよねえ」

きのこに鼻があったか。オレはともかく上京まで嗅ぐな馬鹿野郎。

もうそろそろ本気で黙らすか。

信号も赤だし。

「瀬戸、おまえ本当にうるさいし、距離感が無い。新人だから甘い態度でいけると思うなよ。悪いけど、使えないと判断したら、そのまま報告する。今のところ、オレは瀬戸がうちの会社に必要な人材には思えないし、態度が悪いから教育もしたくない」

吐き捨てたら、隣の上京がため息をついて足を組んだ。我慢していたんだな、上京も。

「反省しろ。今日の件はそのまま報告する」


分からなくも無いんだが。

社会に慣れていないと空気が読めないと言うかずかずか入り込む。Twitterとかインスタ慣れして、距離感が皆無なんだろう。挨拶無しとか当たり前だし、気遣いも無い。

気軽なツールが流行るとネットとリアルの区別があいまいになり、そして人を傷つけても気付かない。気付くことが出来ない。そして不用意に傷付けられたりする。

悲しいものがあるとは思う。気楽なものには心が宿らない感じがする。

言葉が軽んじられている。それが楽しいと思うなんて寂しすぎる。

きのこもそうなんだろう。

距離感とか、無いんだろうな。

その点で言えば、かわいそうだけど、社会では通用しないから。


教育するのはかなり骨が折れそうだ。まずは本人が自分の視点を変える努力をしないと、枠に入れない。

自分自身は変えれなくても、視点は変われる。そこからだ。


「生田主任、すみません」

分かればいい。

「でもなにが?」

捨てよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る