第11話
「帰ったら美味しいの、作るからさ」
「パスタかな」
「分かった。少しでも食べろよ」
炭水化物を欲しがるとはね。やられたな、かなり。
「生田。次の会社は刺身用のトレーの提案。あの透明のブリッジが他社より安価にならないかって問い合わせがあったって。直だから、容易いか」
スライスした刺身を斜めに立たせて見目を良くする仕込みの奴、か。
「上京。今、先方は幾らで購入してたんだ」
「1個5円で納品数は4000個。うちなら4円70銭まで落とせる」
「微妙だな」
「だろ? だから商品部に先に問い合わせた。4円10銭」
見事に落としたな。流石、上京だ。
「それが際、か。いけそう」
「生田がそういうなら、まとまるんじゃないか」
「へえ」
オレの意見を聞くとは。随分精神が壊れたな。しおらしくていつもの上京じゃない。
これでは商談に響く。
「上京、オレのカバンの中にクロワッサン入ってるから。それなら食べる?」
糖分、少し取らせよう。
「て、言うかさあ。……きのこ! おまえ、さっきから運転席に張り付いて何がしたいんだ!」
「はあ?」
オレの背後にきのこ?!
「いい香りしますよねえ、生田主任。シャンプーなんですか? 香水ですか?」
気持ち悪い!
「上京! 何とかしてくれ!」
「捨てるぞ、きのこ! と言うより会社辞めろ! おまえは要らない!」
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