第8話

車で帰る際にきのこを忘れかけて、慌てて連れ出したら、また助手席へ向かうので、上京がとうとう尻を蹴った。しかし、タフだった。痛いとか言わない。きのこって凄い。

後部座席に押し込むと、オレはもう疲労感を覚えてしまった。

「営業って楽ですね」

なんだあいつ。

「もっと難しいと思ってました」

よくしゃべるきのこだな。

話していないと死ぬのかな。

「お2人だと契約が取れるんですねえ」

うるさいきのこだ。

「スキルとか無くても容姿で取れるんだ」

「は?」「は?」

舐めてるな、このきのこ。

やはり上京の破壊力を見せたほうが良かったか。

契約書にサインさせるまで、いつもは難航するからな。そこを押し切るのが上京。


「生田、喉が渇いたからコンビニでもいいからさ」

「ああ、おまえ、どうせならスタバの方がいいんじゃないの?」

「いや? コンビニでいい。待ちたくない」

「待つの、嫌いだもんな。じゃあ、その先辺りで」


「お2人は、出来てたりするんですか?」


「はあ?」 「はあ?」思わず上京だけ振り返った。

「息、合ってますよね」

このきのこ、窓から放り出すか。

「何か、おかしいですよね」

捨てるか。

「生田主任、上京主任と出来てるんですか?」

「燃やすぞ、きのこ! 黙ってろ!」

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