第5話

「……で。その椎茸がおいちゃんの担当なんだね」

こいつの頭は茶色くないです、部長。

いやその前に総務部に苦情を入れて下さいよ。

総務部配属なのに、営業部が面倒見るのは筋違いも甚だしい。

「おいちゃんなら出来る。なんせ、かんちゃんを管理しているくらいだからな」

かんちゃんをかんり。

よく唾を飛ばさないな。

「わが社の優男と可愛い子が担当なら、すくすく育つだろう」

きのこですからね。

え? 可愛いって。

「上京も関わるんですか?」

「可愛いで、すぐにかんちゃんと分かるおいちゃん。気は確かか」

畜生、やられた。

「妄執に囚われるな。そんなに、かんちゃんが好きか」

「あいつは同期です」

「返事にならない。おいちゃんが固執しても明白な事実だ。誰が見ても狂気の沙汰だ」

このクズ、いつか蹴り飛ばす。

「おいちゃんが動くときはかんちゃんも一緒なんだろ? 常務に対して、そういう怪しい条件を出しているんだろう?」

「部長。お言葉ですが少しも怪しくありません。上京とは同期で入社以来、組んでいますから」

「お茶を濁しても無駄だよ、おいちゃん。なあ、かーんちゃん」

げ。

今は同じ部署だからな。オレが常務から取り戻したんだった。

「……自分もそのきのこを担当ですか? 部長」

自分のデスクで嫌そうに聞くな、おまえ。

上司だぞ。

「教育係は、おいちゃんだ。しかし営業には3人で組んでもらう」

「はあ? 今、何て仰いました?」

「おい! 上京! 態度が悪いぞ」

「生田、おまえこの条件が飲めるのか? 新人連れて営業回りなんてお荷物だ」

おまえはオレもお荷物だろうからな。

「ま、かんちゃんが怒るのも分かる。だが、教育しないといつまでも使えない。そんなきのこに払う給料は無い。きのこの為に力を貸してやれ、かんちゃん」

「……承知しました」

全然納得していないな。少しは外面保てよ。

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