サプラ椅子(仮)
今回は、家具メーカーとして有名なO社が開発を進めているユニークな椅子についてお話しましょう。
O社はいわゆる高級志向の家具を中心に製造しているメーカーだったのですが、社長がその席を自分の娘に譲ったとたんに色物な家具を開発するようになったそうです。有名なものではスターウォ●ズ関連の商品ですね。
もちろん、そんな迷走を続けていたら評判はガタ落ち。O社の株価はいまなお低迷しています。
が。
株価低迷の原因はそればかりではなく、あるうわさが関係しているそうです。
迷走を続けるO社は、とある新製品を開発しました。「我が社はほかのメーカーとは別の路線で突き進む」と宣言せんばかりの、その突飛な商品の名は『サプラ椅子(仮)』と呼ばれていたそうです。
さすがは老舗のO社が製造した椅子だけあり、ふかふかのクッション、背中に負担のかからない背もたれ、革張りの肘掛けなど、椅子の品質自体は申し分ないものだったそうです。
が、そこは混迷中のO社。『サプラ椅子(仮)』は世に流通しているほかの椅子とは、まるで一線を画していました。
なんとその椅子は、座った人間をビックリさせる機能を有していたそうです。
具体的にどのように驚かせるのかといいますとですね。まず、おしりのクッションに電流を流して使用者を痺れさせる。
ほかには背もたれから冷水を発射して背中を湿らせたり、不意をついて腰にベルトを巻き付けて椅子から離れなくさせたりするそうです。いうまでもありませんが『サプラ椅子(仮)』という名前はサプライズにちなんでつけられたそうです。
あ、もちろん危険はありませんよ。おしりの分厚い脂肪でしたら電流を流されてもピリピリくる程度ですみますし、眠気も吹っ飛んで血流がよくなり、健康になるんだそうです。
背もたれの冷水に関しては、装着されたサーモグラフィが使用者の体温や室温を感じ取って、使用者にとって心地よく感じる程度の水温で噴射されるそうです。
ベルトに至っては、巻きつけられた直後に背もたれや腰の生地がうねうねとうごめいて、使用者の肩こりや腰のこりをマッサージしてほぐしてくれるんですって。
椅子に腰をかけているとき、不意にそれらの機能が働いて使用者が驚いてしまうことがあるため、サプラ椅子なんて名前がつけられたそうです。
ところがこのサプラ椅子ですが、発売直前にお蔵入りになってしまいました。
それは、使用テストの最終段階でのことでした。これらのサプライズが偶然にもみっつ同時に発生してしまったのです。
とある密室で被験者が椅子の耐久性や座り心地を確認していたところ、ベルトが作動して腰に巻きつき動けなくなってしまいました。そこへ背もたれから冷水が噴出して全身が水浸しになり、さらにおしりの電流がオンになってしまったのです。全身がずぶ濡れだった被験者は、おしりどころか全身くまなく感電してしまいました。ベルトが外れるころには被験者は頭部から黒い煙を発して、舌と眼球を飛び出させた状態で絶命していたそうです。
……まあ、あまり苦しまずにすんだのではないでしょうか。電気椅子による死刑は一瞬にして意識を失うという話ですし。
なお、O社は懲りずにまた別の新商品を開発中とのことです。もし新商品が発売されたあかつきには、あなたもおひとつ購入してみてはいかがでしょう? 命の保証はしませんが。
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