不自然な砂場
あなたは砂場遊びが好きなタイプの子供でしたか?
昨今の公園では、様々なルールが設けられてしまったため、子供たちはおろか大人たちでさえ利用の難しい環境になっているらしいですね。
やれ、ボール遊びはするな、ペットを散歩させるな、花火はするな、飲み食いするな──公園の存在意義ってなんなんでしょうね。
そんな、子供の姿が消えて久しくなった公園では、いま奇妙な光景が見られているそうです。
砂場に雑草が生えてしまっているんですよ。
植物の生命力は侮れないですね。さして地中に栄養がないはずの砂場にすら根を下ろしてしまうんですから。
とはいえ、しょせんは砂場です。肥えた土壌とは違うため雑草の生育にいい環境であるはずがなく、スギナやオオバコといった極端に生命力の強い種以外はなかなか生えてこないそうです。
ある公園の砂場でも同様の現象が起きていました。そこはS県の住宅街のはずれにある、比較的大きな、けれどひっそりとした公園だったそうです。その公園にも例のがんじがらめなルールが制定されたために、大人はおろか子供の姿まで消えていました。その公園には滑り台やブランコといった遊具のほかに、例に漏れず雑草の生えた砂場がありました。
ところがです。その雑草の生え方が不自然だったんですよ。
4坪ほどある砂場の中央、半径およそ1mほどの面積にだけ、狂ったように雑草が生い茂っていたそうです。それも砂地で育つとは考えられないような、菊科の花まで咲き乱れていたそうです。
そしてなにより異様だったのは、その砂場からひどい悪臭が漂ってきていたそうです。公園に隣接している家の住人たちは、小動物たちの糞尿とも異なる卵が腐ったような臭いに悩まされたあげく、市に悪臭の元の除去を依頼したそうです。
季節は初夏でした。
市の職員が汗だくになりながら雑草を引き抜きつつ砂場を掘り返してみたところ、死後10年ほどが経過した成人女性の遺体が発見されたそうです。着衣はなく、歯も砕かれていたため身元の特定は不可能だったそうです。死体遺棄の犯人はいまだに捕まっていないんですって。
遺体は黒いビニール袋に包まれていたのですが、経年劣化により破れてしまい、そこから溢れ出た腐敗した肉汁がじわじわと砂中に染み込んでいき、それが雑草たちの肥料となったそうです。深くまで根付いた雑草の根っこによって敷き詰められた砂と砂のあいだに隙間ができてしまい、そこから腐乱死体の悪臭が漏れていたらしいです。
ふふふ。ところで公園の砂場って死体を隠すには悪くない場所らしいんですよね。
ひとつ、土と違って砂はサラサラしていて掘りやすいため、スコップさえあればひとりでも短時間で深くまで掘ることが容易であること。
ふたつ、子供の腕力では深くまで穴を掘ることが難しいため、1m以上の深度に埋めてしまえば、まず死体が発見されないこと。
みっつ、公園の砂場は警察の捜査の盲点になりやすいこと。まさか子供たちの足元に──とね。
今回は雑草が原因で判明してしまいましたが、もしその公園に現在のような厳格な規則が制定されなければ、いつまでも死体は発見されなかったかもしれません。
ところで、あなたが暮らす地域の公園に、雑草が不自然に生い茂っている砂場はありませんよね?
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