第17話 心って、どこにあるの? 5

〈登場人物〉

サヤカ……小学5年生の女の子。

ウサ……サヤカが3歳の誕生日にもらった人語を解するヌイグルミ。



ウサ「サヤカちゃんの中には、怖がる気持ちはあると思う?」


サヤカ「うん、あると思うよ。だって、夜中に目が覚めちゃったときとか、クモを見たときとかに、感じるもん」


ウサ「その、夜中に目が覚めちゃったときとか、クモを見たときとかに感じる、その感じと同じものを、他人も感じているかどうかっていうのは、分かるのかな?」


サヤカ「それは……だって、同じようにクモを見たときに震えてたら、同じように感じているんだなって分かるよ」


ウサ「でも、それは、その人のその感じを、サヤカちゃんが直接味わっているわけじゃなくて、震えている様子から、怖いんだろうなって推測しているだけでしょ?」


サヤカ「それは……そうだけど……」


ウサ「そうすると、怖がる気持ちそのものが他人の中にあったとしても、それは分からないことになるんじゃないかな。他の気持ちも同じでしょ? そうだとしたら、サヤカちゃんがすごく優秀な脳科学者で、脳の中に心があったとしても、それをその人の心だって判断することはできないんじゃないの?」


サヤカ「でも、わたしの中に心があるんだから、みんなの中にもあるはずでしょ?」


ウサ「みんなの中にもあったとしても、それがあるっていうことが、分からないのよ」


サヤカ「あるのに、あることが分からないって、そんなの変だよ……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る