第117話

「彼方君?」


「うん」



みさき先輩は、目に涙を浮かべていた。

そして、涙を拭う手には、絆創膏だらけの指。



「指、どうしたの?」


「彼方君にお弁当を作ろうと思って……」


「え?」


「毎日お弁当を作ったのに……

 彼方君、ずっと来てくれなくて……」


「ごめん」


「お弁当食べよう……

 美味しくないかもしれないけど……」



みさき先輩は、よろよろ僕に歩み寄って来た。

僕も自然とみさき先輩に近寄る。



「……はい」



そして、みさき先輩は、僕にお弁当を渡した。


僕は、お弁当の包みを開けて卵焼きを口に運んだ。

しょっぱい……

塩入れ過ぎだ……


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