第114話

「先輩、目が治るんだってさ」



だけど、僕は思いのほか、あっさりと答える事が出来た。



「良い事じゃないか?」


「うん」


「もしかして、それが先輩から離れた理由か?」


「うん」


「どうしてだ?」


「目が見えるようになったら、先輩に相手なんてしてもらえなくなるから」


「うん?

 どうしてそう思うんだ?」


「だってほら、僕は化け物だし……」


「先輩は、そんなこと思う人じゃないと思うが……」


「僕だってそう思いたいけど……」



そう、そう思いたい。

僕もそう思いたいけど……

現実は、そう甘くない。

僕には、現実の厳しさだけが付きまとう。

優しい顔なんてされても次の日には、厳しい現実が待っている。

毎日が、そんな日の繰り返し。

僕は、そんな現実に疲れているのかもしれない。

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