第109話

キスは、5分程続いた。

先輩は、僕から口を放した。



「彼方君」


「……ん?」


「ありがとう」


「え?」


「私、勇気出た」


「勇気?」


「手術する勇気!」


「手術??

 みさき先輩、どこか悪いの?」


「目の手術。

 ドナーが見つかったんだ……」



先輩の目が治るのか……

目が見えるようになったら、僕なんて相手なんかされないよね。

みさき先輩の目が見えるようになる事……

それを心から祝福できるようにならなくちゃ……



「そう……

 よかったね」


「どうかな……」


「え?」


「ドナーが見つかったと言う事は、誰かが亡くなったって事だから……」



みさき先輩は、寂しそうに言った。

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