消えゆくもの

勝利だギューちゃん

第1話

季節は秋・・・だれもいない海・・・

さすがに、この時期になると、突き抜ける風が冷たい・・・


でも、私はこの場所が好き・・・

あわただしい日々の生活から、解放され、何かもが無になる・・・


少年は、浜辺にイーゼルをたて、白いキャンバスに絵を描いていた。

それが、毎日のように続いている。


私は、少年に訪ねてみた。

「何を描いてるの?」

「空・・・」

「空・・・だけ・・・?」

「・・・うん・・・」

少年はそれだけいうと、黙々と筆を走らせていた。


後ろから覗いてみると、

キャンバスの下は、白いまま。

上は灰色で塗られていた。


「それでいいの?」

「・・・うん・・・」

「どうして?」

「これが、この世界・・・」

そういうと、彼はその場を立ち去った・・・


「不思議な子だな」

私はそう思ってしまった・・・


次の日も、少年は同じ場所で、イーゼルを立てて、腰かけていた。

失礼ながら、また後から覗かせてもらった・・・


今日は、白いキャンバスが、灰色に塗られ、ところどころに、白い点がぽつぽつと描かれていた。

「それは、何?」

「この世界?」

「海は描かないの?」

「ここには海はない」

「目の前にあるじゃない」

私は、少しムッととして、訊いてしまった。


「これは、ただの水たまり」

「えっ・・・」

少年はまた、黙々と描き続けた。


そして、次の日もまた、少年は同じ場所で、絵を描いていた。

でも、今度は、白いキャンバスに、白い絵具を走らせていた。


「何を描いてるの?」

「この世界・・・」

それだけいうと、少年は道具をそのままにしたまま、その場を立ち去った。


「持って帰らないと・・・」

「僕には、もう必要ない」

「でも、迷惑がかかるよ」

「大丈夫・・・」

そうして、少年はその場を去って行った。


ただ立ち去る前に、私にこう言った。

「気をつけて・・・」と・・・

私は、少年のその言葉が妙に気になった・・・


数日後、巨大隕石が地球に衝突をし、地球は・・・消えた・・・

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消えゆくもの 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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