結びに

さて、この顛末の後に、語るべきことはあまり無い。


畔戸屋は、抜き荷、人攫い、謀反の準備等々、諸々の罪でしょっ引かれていった。

親父殿が松枝屋に届けようとしていたのは、むかし畔戸屋の内部から届けられた、密告の書状であった。畔戸屋に事がばれて暇を出された書状の主が、千代松の村の一員であった為に、此度の騒動は起きたようだ。

このような直接の動きは予想していなかった、我々の不手際だ、と松枝屋や親父殿には散々頭を下げられた。


畔戸屋が貯めに貯めこんだ私財の数々は、各地への支援として届けられることになった。そのうちいくらかの瓦斯倫ガソリンは、わたくしから強く頼み込んで門司の辻車バスに融通してもらった。


千代松は、広島の剣生として槍を学ぶ決心をしたようだった。馬之輔の、強い推薦もあってのことらしい。毎朝顔を突き合わせては騒ぐのだと、宍戸がぼやくのを、何度も聞かされた。

宿屋の主人との交流も、主人が大往生するまで続いていたと聞いている。


わたくし達はといえば、ようやくたどり着いた広島で、再び一騒動に巻き込まれるのであるが。


それを語るのはまたの機会として、今はひとたび筆をおくこととしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

JK侍、東へ歩く 加湿器 @the_TFM-siva

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ