第5話

「なるほど、セカンさん それでこの国の住民になりたいということでよいか?」


「それが最良の道ならそうしたいと考えています。

 けど、その前に、色々話したいことがあります。」


「ああ、そうだろう。

 私も、色々と確認したいことがある。」


 応接室には私ことファーストが、かつての勇者の仲間を迎える。

 仲間の証拠としてのペーパーナイフは、既に確認して返却済みだ。

 ちなみにこのペーパーナイフは、勇者ゼロと取り決めた符牒のようなものだ。


 "空間"スキルを持ち、アイテムバッグを自在に作るという少年とも思える童顔の青年で、あまり強そうには見えない。


 アイテムバッグの噂は国の商人から聞いていたが、誰にも頑として売らなかったという程度の話しか知らない。

 冒険者筋の話では、ポーターとしてしか役に立たない奴ということだが、真実は誰も知らない。

 本人が知るのみだろう。


「まず、ここは勇者支援国家と聞いています。

 それはいったいどういう国なのでしょうか?」


「簡単にいうなら、勇者を人的/経済的/物質的に補佐するための国だな。

 必要なら物資を送るし、状況に応じて人を派遣することもある。

 実際に、そういったシーンを見ることもあったのではないか?」


 時にはさりげなく報酬という形で渡したり、時には強引に餞別として渡すように人を使ったりしていた。

 普通の冒険者から見たら不自然極まりないシーンも多々あったはずだ。


「ええ、確かに。

 僕がパーティに入る経緯も色々とおかしなところもありましたし。

 僕みたいな荷物持ちにしかならない人間がいたこと自体が……。」


「いや、それは違う。

 実際、彼ら勇者パーティは限界だった。

 勇者しか倒せないような魔物、そして金銭的価値の高い討伐部位。

 そういったものが重なり、荷物が文字通りお荷物になっていたのだよ。

 それを解決した、そして今ここに来たということは、その問題も解決したということだろう?」


 実際に誘導はしたが、アイテムバッグ以外の情報は入ってこなかったこともあり不安に思ってもいた。

 しかし、これは予想以上にいい奴が来たのかもしれない。


「そしてだ、君はここで何をしたい?」


「……僕ならその支援をもっと素早く確実に、また経費をかけずに行うことができます。

 きっと僕のアイテムバッグのことは知っていると思いますが、更に強化されました。

 勇者様のアイテムバッグと僕のアイテムバッグはつながっています。」


 それが本当なら、確かにすごい。

 換金だって、食料の提供だってこの場に居てできるのは怖ろしく有益だ。


 私は思わず色々と考え込む。


「あ、アイテムバッグですが、何を言われても提供しませんよ。

 かつて伝説の空間魔法使いが作ったといわれる遺品もどこかにあると聞きますが、僕のはそんな便利なものじゃないんで。」


「なるほど、しかし何が出来るのかちょっと知りたいな。

 う~む……こういうのはどうだろう?」

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