第4話

「あの、勇者様」


「あ、セカン、飯美味かったぜ。

 いっつも俺ら荷物がごっちゃになるから、お前みたいのいてくれて助かっている

 それに、ほら、みんな戦闘バカだしな!」


勇者様は時々こうして僕を励ましてくれる。

だから、猶更なおさら黙っていられなくて、意を決して話すことにした。


「あの、勇者様。

 ごめんなさい、あの、えっと、その……。」


「なんだ?

 また何か変なこと考えてるのか?

 ギルドで言われていた事は忘れろ、あいつらは何もわかっちゃいないんだ。」


「いえ、変なことなんて。

 ただ報告することがあって……。」


そうだ、言わなきゃいけない。

言わなきゃ始まらないから


「なんだ?」


「僕のスキルが成長してしまいまして……。」


「え! なんだって、すげーな

 いよいよ、空間魔法使い様が降臨されたってか?」


あ、やっぱそうだよね。

そっちを期待するよね。

うん、わかっていた、分かっていたよ。


「いえ、ごめんなさい。

 相変わらず戦力にはならないみたいで、それどころか……。」


「あ、すまん。

 悪気はなかった、許せ。

 それで、なんにしろ成長したんだろ、それは目出度いじゃないか!」


「アイテムバッグに"共有化"という機能がついてしまったんです。」


言った……言ってしまった。

言わなければずっとこのパーティに居られたかもしれないのに。

けど、こんなに心優しい勇者様を騙し続けるなんて、僕にはできそうにない。


それに、やっぱり勇者様も空間魔法には期待していたんだな。


「それってどういう機能?」


「僕の鞄と勇者様の鞄をこうやって、はい、共有化させました。

 これで、僕がここに入れたものをそちらの勇者様の鞄から取り出せます。」


「お、お~便利じゃないか。

 これで、セカンに態々わざわざもってもらわなくてもいいな。」


やっぱりそうなるよね。


そして、ギルドに戻るまで、僕の"共有化"について盛り上がっていたみたいだけど、あまり耳に入ってこなかった。


だって、どう考えてアイテムバッグは必要だけど、僕は必要ないというか、一緒にいる方が不利益だよね!?


ギルドに到着してから、僕は皆が言いにくいだろうとおもって自分で出ていく決心をしたよ


---

「いや、居ても全然問題ないんじゃないか?」


「何言っているんですか?

 換金だって補給だって、鞄越しでできるんですよ!

 それに、僕が殺されたら鞄がどうなるか未だ分からないんですから、そういった危険性は排除するべきです。

 それに戦闘能力皆無の僕がいてもパーティーの能力向上につながりません。」


あっさり放り出されるかと思ってたのに、意外にも皆引き留めてくれていた。

だからこそ、猶更なおさら迷惑をかけるわけにはいかないと、語気を強めて説得することになってしまいました。


最後には、なんとかお互い納得して違う道に行くことになったけど、アイテムバッグで勇者様たちとは繋がっていて役に立てる。

そのことが妙に嬉しかった。


勇者ゼロ様は、別れ際に特徴的なペーパーナイフを持たせてくれて、とある国に行くように勧めてもらい、僕は素直に次の目的地にしたんだ。

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