60.灰皿
入ったときには誰も
立っていなかった店前へ
ふたたび外気に触れて戻るときには
誰もいない灰皿の
前を行き過ぎるとき
誰のためのでもない
においに注意を促されてみると
さきよりもしかすると二三本多く
網の目をくぐり損ねて
こちらに露出しているのがどうしてか
記憶に残された
明かされない時間が
店頭の灰皿に残って
この眼に
ひらかれている
胸ポケットのKENTが
そこで一本
減らず 数キロ先のこちらで
交差点の赤信号を契機に
点火されたことも
減っていれば吸い終わりに
露出した二三本をともに
網の目に掃き落としただろうことも
されずにあることによって
明かされない時間として
数キロ手前の店前で
現在しているのは
誰の目にへも
ひらかれないまま
明々と現在している
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます