59.影炎上

許された自己が許せない

早朝 人はまだ起き出さない

路上のカーブミラーが

私を捉えた なんという

光の反射は針のように

東の雲が明るい

叩き落とされた人のかたち

早朝唯一の夜の在処となって

私の後ろで長く寝そべっている

口角を上げるように

厭な仕打ちが

集合住宅の一枚の窓に翳される

叩き割ってしまおう夢は潰えた

どんな避雷針に守られてしまったのか

ハイジャックされた早朝第一便が頭上を通過する

お天気お姉さんの予言を裏切る朝

所在なげに突き立つ

裏道で泣いている一頭の廃車に隠れて

ノートもないのにペンだけをもつ

突き立てる

フロントガラスに月が流れる

朝の光にみるみる色褪せていく

旅客機の残した航跡を口にふくむ

肥大した我を取り戻し揺り動かす

宇宙の中心で一個の謀略が進行している

人類の将来より

終末は美しい夕焼けが地上の

全てのカーブミラーに反射する光景が一瞬

よぎったが到底敵わない

曙光に虐殺されて

廃人がひとり照らし出される

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