第77話・よみがえる金の輝き

 「ラセン、うまく行った。計画どおりイシュリンを封じこめた」


 ふたたび顔を向け、顎を上げて目を細めた。


「何度も激しく攻撃して悪かった」


「憂理さまの魔力に感服しました」


 ラセンは薄笑いを浮かべる。

 短く転移して私のかたわらにひかえた。


 私は口を閉ざせずにいるレジスタンスたちに向き直り告げる。


「“見えない神殿”の本当の名は“永遠の棺桶”。封じ込められたイシュリンが戻ることは永遠にない」


 右手を後ろに回し、頭の高いところできつく結んで巻いていたものをほどく。


 首を軽く振り、髪を長い状態に戻した。


 そして、頭の後ろに手をやり髪の根元に結びつけていたそれを抜きとり顔の前にする。


 少し掲げてしばらく日(ひ)のめを見なかった輝きを堪能すると、金の指輪を左手の薬指に戻した。


 レジスタンスたちは愕然としたが動けずにいる。


 そこへアキが転移して隣に来た。


「憂理、よくやった」


「うん」


 アキはレジスタンスたちを見下して憐れむ。


 見せつけてゆっくりと口を開けた。

 その中から光があふれる。


 舌の裏に秘めていた真実の指輪を回転させ唇でくわえると、左の手のひらを内側にして薬指を下唇に当て、滑らせるようにして指輪をはめる。


 手首を返し、長くそれに口づけた。


 私は愛の仕草にうっとりする。


 移した視線の先でレジスタンスたちは我々三人を見上げるだけの彫像になっている。


 思わず吹き出してしまい、自分はかなりサジンに影響されていると気づき、そちらでもおかしかった。




<続く>

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