第50話・アキとオーヤは剣で決闘する

 アキとオーヤは二メートルの距離を置いて対峙した。


 風が吹く。


 オーヤがいきなりアキの喉を突きに出た。


 アキはすばやく左へ払いのけ、踏み込んで腕を右へ振るいオーヤの喉を斬りあげようとするがかわされる。


 左の胴を狙ってきたオーヤの剣を右側に移りつつ下から左へ跳ねあげる。


 剣を横にしてオーヤの腹をなぎ払おうとしたが退かれて受けられる。

 そのまま右へ回られた。


 剣を払いのけ右上から斬りつけてくる鋭い刃を左下から受ける。

 全身の力をかけられ強く押さえつけられた。


 まともに剣で押しあえば大男のオーヤの腕力がまさり、リーチも長い。

 力を逃す受け方をしながら隙きを狙うしかない。


 いったん離れて間合いを取った。


 腰を落として息を整え、再び構える。


「結構、やるな、皇子さま」


 オーヤは燃えたが負ける気はしない。


 アキはまた左の胴を狙われ、受けようとしたところで腕の向きを急に上に変えられ、大きく踏み出したオーヤに顔を下からななめに裂かれそうになる。


 飛びすさったが、前髪を数センチ斬られた。


 オーヤがまた襲いかかる。

 強い力で殴るように圧倒してくる。


 それを何度も受ける。

 守る事が精一杯になった。


 汗が顎をつたい、じりじりと後退させられる。


「アキ!」


 私は激しくぶつかり合う金属の音に心臓が潰れそうになる。


 見ていられない。


 耐えられずに顔をそむけ目をつぶると、アキに、


「憂理、ちゃんと見ろ!」


 と、叱咤された。


 覚悟を決め、戦うアキをまっすぐ見つめた。


 剣を合わせたままアキはオーヤから目をそらさない。


「終わりにしてやる!」


 オーヤが腕を振り上げ、頭を叩き割りにきた。


 アキは右足を引いて腰を落とすと、裏にした剣を左下にして受ける。


 そのままゆっくり刃を起こし、オーヤの剣を左に払いながら腕を伸ばした。


 上からかかる力をオーヤの手元に戻させ、動きをピタリと封じる。


 そこで、一気に腕を右に引き抜く。

 素早く手首を上に向け、その剣の根元を渾身の力で左に殴った。


 オーヤの剣が飛ばされ、砂に付き刺さった。


 あ然とするオーヤの喉元へ切っ先をつきつける。


 睨みつけ、顎をかたむけた。


「私をなめるなよ」


 押されたふりをして油断させ、倒す機会を待ちかまえていたのだとわかった。


「……殺せよ、皇子さま」


 オーヤは両手を上げた。





<続く>

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