第42話・皇帝の宮殿に入り玉座の間で膝をつく
アキの宮殿からラセンを従え、長い渡り廊下を進み皇帝の宮殿へ向かう。
床と同じ白い石の柱が丸い屋根を支える先を、赤いカーペットが案内する。
百メートルほど歩き、皇帝の宮殿の敷地に足を踏みいれた。
渡り廊下はそこで宮殿の皇太子専用のエントランスにつながる。
テニスコートを横にした広さがあり、天井はいきなり倍の高さとなる。
使われる石は白から赤に変わった。
宮殿を守る両扉も赤い石で、幅が六メートル、高さは三メートルある。
魔力を持った者が左右に控えており、家の扉を扱うかのように軽く開けるが、その厚さは五十センチもあった。
それについた直径三十センチの太くて丸いリングの取っ手もフレームもちょうつがいも、顔の高さで威嚇する一メートルはある大きなアルマの紋章もすべて金が使われている。
中に入ると天井はさらに高くなり、そこから降りた真紅のベルベットのカーテンが重なり、暗い色をした木の壁を覆う。
床は金のタイルが赤いカーペットを縁どりそれ以外は黒い石になる。
進むうちに三メートルの高さしかない見せかけの細い柱の上で逆三角形を四枚合わせたガラスの内にともる明かりは弱まり闇が増していく。
カーテンの隙間の壁から高い位置でガーゴイルが飛び出して下から照らされ、男女が裸でむつみあう黒い像も幕間にあり、ひたすら足元を見つめ、歩くことに集中した。
いくつもの厳重な扉を通されて玉座の間の表へたどり着く。
最後の金の扉が魔力で開かれるときだけ、アキは左手で私の右手を取ったが、とても冷たかった。
中に入ると、そこは教会のようでひときわ高い天井と奥行きの長い空間になっていた。
明かりはぼんやりとしたものが多くあり、三十メートル先にある正面の壁にはニメートルはある大きな金のアルマの紋章が高い位置で飾られている。
その下に金と宝石でできた玉座があり、赤いカーペットが敷きつめられたなかから幅の狭いものが手前に向かって階段の中央を五段下り、さらに十段下にある平らな場所に着くと、横に長い四角を作った。
アキは入り口から続く赤い道を進むと、たどり着いてそこで片膝をつき、私は左隣で両方の膝をついた。
作法の通り、胸に両手の指をあて頭(こうべ)をたれる。
それを玉座のしもてで待っていたシンバルを持つ者が確認して、一回鳴らして合図した。
身分の高い側近の貴族たちが左右の扉から出るとカーペットを踏んで玉座に向かい、その後ろを守る気配を感じた。
彼らが位置につくと、今度はシンバルが五回鳴らされ、空気を緊迫させる者が右手から中央に向かって進んでくる。
いかにも面倒くさいといったため息のあとで皇帝が玉座の正面にまわり、腰を下ろしたのが二度目のため息でわかった。
「ふたりとも顔を上げていい」
と、しゃがれた声に許されて皇帝を見た。
<続く>
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