第4話 遺影

・GENESIS・MODERN・GENERATION


「ブラックの姉さん!やっちゃってくだせぇ!」「やっっちゃってくだせぇ!」

 砂塵の中で仲間に囲まれて立つ女が、拳を振り上げて雄叫びを上げる。

「おまえら!用心棒のこのアタイに任せときな!」

 二十人程度の男達が狂喜して鬨の声を上げる。脇の方でコンクリの壁にもたれかかって頭を搔いている体格の良い男性に、眼鏡をかけたナード風の男性が近づいてくる。

「いやぁ。ノリノリですな。マスター。でもあの娘、なんで、あんな格好なんで?」

 女はカウボーイハット、上はビキニで下はホットパンツ、縦縞の法被を着て上からガンベルトともう一本のベルトを締め、首にはマフラーを下げ、左の腰には日本刀、右の腰にはリボルバーだ。

「なんでも昨日、用心棒とかいう映画を見て、それに出ていたキャラっぽくしてみたらしい。」

 マスターと言われた男性他、全員は砂漠の海兵隊風の装備一色。そしてここは、古代から近代まで様々なバリエーションを持つVRMMOゲームGENESISシリーズの現代戦バリエーション、砂漠の廃墟攻略ステージだった。

 身バレを防ぐ為に、本名やコードネームを避け、それぞれ別の名前を使用しているが、ハウのキャラのブラックサンドを取り巻いているのは、GEEKS、ハッカー部隊のメンバーだった。こちらの世界ではCOMBAT NERDSというギルドの形で活動している。

 GENESISは様々な設定のバリエーションがあるが、ファンタジー風の中世ステージでも魔法や亜人なども存在せず、また移動もリアルに行う必要があるという点、そしてリアルなグラフィックとあいまって、特に多人数の合戦、攻城戦、都市戦闘などが受け、ヒットしていた。また戦闘をしなくても普通にその世界で生活するという選択肢もあり、ゲーム中のAIとリアルに生活を楽しむものもいる。ゲーム内でテレワークをして仕事をして稼ぐことも出来るので、ある種の廃人ゲームとして地位を占めていた。

 もう一つこのゲームが受けていたのが、現実世界でアバターなどを利用するBMIと通信規格を揃えている事で、使い慣れたBMIで脳波を使ってキャラクターを操作できること。そして非常に高価ではあるが、ユーザーの全身を中空にホールドして360度全方向に回転もでき、リアルな体の動きをリアルにキャラクターに反映するデバイス、AB360にも対応している事であった。つまり身体能力が高い者はこちらを使ってリアルな能力を生かすこともできるし、日々の運動として使うものもいるのだった。

 NERDSの面々はBMI操作を利用していたが、ハウはそのAB360を利用していた。

「野郎共、行くぞぉぉぉ!援護しろぉぉ!」

「おーう!」

 野太い声が響き、一斉に敵陣地に向けて各種機関銃での威嚇射撃が始まる。今のタスクは目の前の陣地に立てこもる敵の殲滅だった。威嚇射撃に続き、敵陣地との間に無作為に発煙筒が投げ込まれる。

「頭出させんなよ!ロケンローッ!」

 ブラックサンドは抜刀すると、一人で自陣の崩れたコンクリート壁を乗り越え、敵陣地に向かって猛ダッシュで突っ込んだ。マスターと呼ばれた男が味方兵に指示を出す。

「バイザーでブラッキーの位置を確認しつつ、反対側には射撃継続!」

 ブラックサンドは敵陣地内で素早く移動しつつ切りまくっているようで、断続的に悲鳴や命乞いの声があがるが、容赦なく始末しつづけ、最後に動かなくなり、拳銃の音が一発、間を開けて二発鳴り響いた。

「射撃中止!」

 射撃音が止まると、向こう陣営からブラックサンドが走って戻ってきた。

「みんな〜。タマとったど〜。」

そう言いながら煙幕の中から徐々に近づいてくると、体中返り血で真っ赤、肩に載せた刀と相まって、その姿はすさまじくホラーでポップなシリアルキラーだった。

「ぎゃああああ!」

 さっきまで狂喜していたNERDSのうち、こういった描写に慣れてない数人が、悲鳴に似た声をあげる。周りのメンバーが、「お、これリアルだったら吐くところまで訓練だぞ」と言って慰めにならない慰めの言葉を投げかけていた。

「お…、お見事。」

 マスターはここまでやられては褒める以外の選択肢はない、という感じでブラックサンドの肩を叩いた。

「レベルもあがったー。あと職業倫理は持っているから、安心してね♪」

「リアルでそれやったらアウトだろ。」

「いや~、切らないだけで、電磁警棒の打撲なら毎日ですよ。どうですか今度、みんなもリアルで訓練を。」

 このブラックサンドのセリフは、メンバー全員を震え上がらせた。その時、ブラックの視界の中にメッセージのアイコンと名前が光った。

「あ、パ、あ〜、ドール(仮)だ。」

 ブラックサンドはそう言って、個人通話に切り替えた。通話しつつ刀を一振りして、法被の裾で拭い、鞘に収める。すると、そのブラックサンドの右手の上に、黄色い小鳥が舞い降りた。

「ドール(仮)が戻ってくるそうなので…」

 そう言いながら鳥の種類を照合すると、『カナリア』と表示される。カナリアは嘴と胸元を震わせながらひとしきり鳴くと、ブラックサンドに向かって二次元バーコードを吹き出しのように吐いた。続いてまた首をかしげると、全員の方を向いて、同じようにバーコードを吐く。そしてそこから飛び去っていった。

 ブラックサンドはそれを見送ると、少し首をかしげ、なにやら思案したが、やがて諦めてマスターの前に来て頭を下げた。

「今日はこれでOFFしますね。」

マスターはサムズアップでそれに答える。続いてNERDSの方を振り返ると、手近な瓦礫に片足をのせ、リボルバーを抜いて高く掲げると、やや野太い声で檄を入れた。

「野郎共!今度までに、このエリア制圧しておけ!いいな!」

「おう!」

 全員がそう答えると、引き金を二発引いて、OFFラインした。

 

 AB360が初期位置にハウを下ろすと、もう一台のAB360を調整していたギャルソンとタクシーが、駆け寄ってきてハウのハーネスの脱着を手伝った。VRヘルメットを外し彼女を下ろし終わると、ギャルソンがタオルをさしだした。ハウもそこで気付いたが、リアルに運動している事になるので、結構な汗をかいていたのだ。

「すっごい楽しいね、これ!あっと、パトロが戻ってくるから、ごめん、シャワー行ってくるね!借りイチね〜。」

 ギャルソンは手を振ってそれを見送ると、そばに立っていたタクシーに話しかけた。

「いや、あっさり使いこなしてましたね。あれが異能って奴っすかね。」

「鉄砲とか車だったら、慣れや蓄積もあるけど、こういうBMI使う奴は、ほんと才能だよ。全身動かすっていっても、百パーセント使いこなすには、BMI適性がものを言うからなぁ。」

 ギャルソンとタクシーは頷きあった。


 基地管理棟の前に駐車している自動運転車に着替えたハウが走り寄ってくると、車の外に立っていた秋尾が手のひらを縦にして、謝るような仕草をした。

「すまん。これからパトロともう一軒、仕事で出かけることになった。」

「あ、護衛に付くんだったら、アタシも行きます。」

 秋尾たちがカウンセリングルームから帰ってくる途中に、一色が紹介してくれた故井戸名誉教授のご遺族からの許可が送付されてきた。幸せが眠る森も、訪れる遺族の意向にあわせられるよう二四時間開放されている。そして、なにより早く確かめたいことがあるという気持ちから、一旦基地に戻って、そのまま出向く事にしたのだ。ただ、捜査とは関係の無いカウンセラー訪問と、捜査の延長線上の業務とは性格が異なる。パトロが一色に話を聞いたときに現場にいたから連れて行く、という予備知識が無いなら、護衛と思うのも当然だろう。そして護衛にするべきなのだ。ならば不測に事態に備えてユニットで動かすべきだ。

「じゃあハウも頼む。」

「車も?」

「頼む。」

 ハウはBMIとARグラスで、自動運転車を返却し、護衛装備を載せて防弾対EMP仕様の覆面車を引き出した。車が出てくる頃に、管理棟からパトロが手提げ袋を取って戻ってきた。ハウは指で、自分とパトロを指さした。パトロはそれに頷く。運転席のあるクロスカントリー風の車が車庫から目の前に到着すると、リアゲートを開けて、三人分の装備をチェックして、身につけるものは身につけた。運転自体は自動だが、いざという時のために、ハウが運転席、パトロが助手席、秋尾がパトロの後ろに腰掛けて、パトロが目的地を指示すると車は動き始めた。

「あ〜。夕ご飯なしか〜。」

 ハウが前方を見ながらそういうと、パトロが持っていた紙袋から何かを取り出して、ハウの口の前に持って行った。

「AB360のトレーニングした?」

「したした!」

「間食は?」

「しませんで、し、た。」

「はい。」

 そういうとパトロは何かをハウの口に押し込んだ。

「あんまい!」

「隊長は?」

「もらおうか。」

 糖分補給用のレーションのクッキーだった。ビニールの包みを見ると、わずかに賞味期限が切れている。納得した一方で、ハウが満足げなのであえて触れないでおいた。

「はっ!これは間食なのでは!?お夕飯抜きになるのでわ?」

 パトロは小さく笑った。秋尾が

「今から行く場所の併設の施設の食堂が開いているようだから、問題無ければそこで食事しよう。」

「客のふりした張り込みですか?どこいくんですか?」

「ん〜?お墓?」

「ええええ〜!こんな夜にお墓ぁ〜?」


 途中、大橋の途中のサービスエリアで、車にあったストックの衣装を使い服装をややカジュアル風に変えた。三人が房総半島中程の、山の上にある目的の場所に着く頃には一時間半が経過していた。幹線道路から折れ整備された高台への道を上る。やがて入口の庭園風の大きなアーチに付くと、アーチの上方にはバックライトの照明で「幸せが眠る森」の文字が浮かび上がっていた。おそらくもともとゴルフコースとクラブハウスだったものを改装したようであり、宿泊棟もある古城風の建物群が良い雰囲気を漂わせていた。夜も更けているので車は少なめだった。その車の間を縫って、通常対応でナンバー照合を走らせ、特になにも出なかったので、建物から見やすく、かつ街灯が当たりにくいところに駐車した。ハウとパトロは車から降りると、自分と車の隙間に、小動物風の何かを五、六匹ずつ落とす。落とすとそれは素早く動いて、近場の草むらや近くの車の下に消えた。二人はカジュアル型のARグラスで互いに通信が取れている事を確認して、秋尾を先頭に建物の正面入口へ向かった。

 古ぼけた木製の回転扉を回して中に入ると、白黒チェックの石の床の向こう、カウンターの前に立っていた若い女性が近づいてきた。秋尾が捜査権限を付与したARグラスでスキャンをかけると、オートマタ、もしくはアバターと回答が返る。機体の制作技術が向上したため、人目ではわかりにくいが、一般人がこれをやると「身体的差異に関する差別防止法」に該当するのだ。

 切りそろえた前髪に眼鏡をかけ、コンシェルジュ風の制服を着た女性は、秋尾の前で立ち止まり、深く頭を下げて挨拶をした。

「幸せの眠る森へようこそ。初めてのお越しですね。只今のお時間は私、オートマタの美森が承ります。」

落ち着いた美声で美森と名乗るオートマタは話す。

「皆様、当園のことはなにかご存じですか?」

 美森は三人を順番に見る。秋尾は、いいえと返事をした。

「よろしければ、簡単にご説明差し上げたいのですが。」

 秋尾は美森に向かって頷いた。

「では。当園、幸せが眠る森は、生前、ご希望なさった方の記憶を聞き取りにより記録し、またご家族の希望によってはその方の残された映像、写真、日記、手紙等を読み込んで作り上げた、語らいのできる姿をお守りする場所です。ご家族がどなたにでもお会いする事をご希望された場合はどなたでも、ご家族が限られた方のみを対象とされた場合は、登録されたご家族かご家族のお許しをお持ち下さった方のみが、お会いできるようになっております。お会いになりたい方のお名前をいただけましたら、実際の姿形を持ってお会いになりたい場合は、あちらにございますレストランかカフェ、あるいは十二ヶ月の庭を散策されていらっしゃれば、10分ほどで皆様の元にお越しになられます。そうで無い場合は、こちらを…」

 美森は手のひらを三人の目の前で開いて、三匹の光る蝶を取り出した。蝶は手の上から飛び立って、三人の前をふよふよと行き来する。

「お持ちのARグラスにオーバーレイして頂くと、当館にご滞在の方、どなたにでも話しかけて頂けるようになります。お名前をお教えいただければ、お呼び出しも、いらっしゃる場所をお教えすることも致します。」

 3人がその蝶で代替されているレイヤーをリンクして視界に重ねると、目の前はまるで光溢れる避暑地の名門ホテルのように、いきいきとした数多くの人、そして耳に心地よい喧騒に包まれた。近づいてくる人は必ず美森と3人を避けて歩き、人によっては3人に視線を送って軽く会釈をしてから前を通りすぎていく。圧巻の光景だった。秋尾はその風景をひとしきり見回し、一旦レイヤーを切って、美森に話しかけた。

「では、帝都心理医科大学、元名誉教授の井戸栄介さんとお話できますか?ご家族の方の許可はこちらに。」

 秋尾は暗号化された認証データを画像化して美森に提示した。

「承りました。現実のお姿がご希望ですか?」

 秋尾はちらっと二人の方を見て、少しだけ考え返答した。

「そうですね。お願いします。」

「かしこまりました。では十分ほどで、お待ちになっている場所にいらっしゃると思います。なお当館ではいま一時を大切にするために、記録関係機能をご遠慮いただいております。あらかじめご了承下さいませ。」

 美森は微笑んで会釈をすると、元いた場所の方に戻っていった。秋尾は二人を振り返り、レストランの方を指さした。二人はレイヤーをONにしたままのようで、ちょっと驚いた雰囲気が表情に残っている。これはコンピューターへのハッキングとは別の概念で、良い意味での人間の心へのハッキングだ。普段は攻撃と守るという白黒の概念の二人には新鮮なのだろう。秋尾も再びレイヤーONにして、三人はレストランの方に向かった。その間にも通路の両側には、お茶を飲むもの、雑誌を読むもの、談笑をするものが多く存在していた。窓には昼の光溢れる風景がはめ込まれ、人々の目にもそれが映りこんでいた。

 レストランに入ると中は満席に近い様子で、開いている席に案内される。もちろんこの時間に客はいないので、実際はどの席でも空いているのだが。案内したウェイトレスは、料理を運ぶためか本物のオートマタだった。席に着くとレストランの隅の方から音楽が聞こえてきて、そちらを見ると、弦楽のカルテットが生演奏をしている。水を持ってきたウェイトレスに3人ともコーヒーを頼む。しばらくしてテーブルにコーヒーが運ばれてくると、音楽は田園風の緩やかなものに変わった。

パトロが持っていたハンドバックから付箋状の紙を取り出して、片方の先を三つのコーヒーカップに手早く浸し、続いて反対側で三つのカップの縁に紙をつまんですべらせた。そのまま紙を手の中で数秒持ち、ハンドバックの中に戻した。

【問題ないみたい。】

 パトロがBMI通信でそう告げると、秋尾は頷いた。続いて秋尾はハウに向かって通信する。

【ハウは音を残してレイヤーを切っておいてくれ。】

 ハウはそれに答えて、目立たないようにウィンクを返した。

 演奏が再び次の曲に移るころ喧騒の中に足音が聞こえ、背広に棒ネクタイをした年配の男性が近寄ってきた。男性は3人のテーブルの横に立ち止まり声をかける。

「君たちかね、一色君の紹介で来たのは?」

「初めまして井戸教授。秋尾です。こちらは私の研究室の生徒の島と千川です。」

 秋尾が立ち上がり、それにあわせて二人も立ち上がって会釈をした。二人の名前は捜査用に用意されている設定の一つだった。秋尾自身も大学の教授ということになっている。

「元教授だよ。お嬢さん方、ご一緒してもよろしいかな。」

「ええ。ぜひ。」

 髪をかき上げたパトロの顔が営業モードに変わっており、愛想良く井戸を席へ誘った。ハウがピクリと反応する。井戸は四人掛けの席の秋尾のはす向かい、ハウの前に座った。

【隊長、この人の顔、プロジェクションだよ。】

【なるほどな。】

 おそらくリアルな面会を希望する、ARグラスを利用しない客向けに、体格身長調整可能な汎用機体を用意し、本人の体型に合わせたうえで、それらしい服とカツラを被せ、顔は似た形状の面をつけて、そこにインナープロジェクションをしてリアルに見せているのだろう。一方の秋尾のARグラス内では、生身の人間に近い表情がレンダリングされて存在している。

「紹介状には聞きたいことがあると書いてあったな。私は年寄りでなかばボケているから、お答えできるかどうか分からないが伺おう。」

 井戸はウェイトレスに慣れた手つきでコーヒーをオーダーする。

 秋尾は一色とした会話の顛末を一通り話し、その上で残っていた疑問をぶつけてみる事にした。 

「この、人の記憶をプログラムを組むように書き換えることに、だれか政府で関わっているものはいるのでしょうか?」

「関わっているという君の質問は、たぶん今のことを言っているのだろう。私が知っているの昔の事で、しかも当時の生徒達のことだけだ。その後彼らがどうしたかまでは追いかけていないなぁ。私がここに来てからもう10年は経つし、その前の数年間は病院にいた。だからそのあとの世間の話には疎いんだ。ホテル住まいだから手紙も届かないし、ここには僻地で新聞も来ないしね。最後に送り出した生徒のうち、まめに連絡をくれた一色君以外は公務員になったものはしらないなぁ。…すまないね。」

「…では、誰か、当時、実際にそのような手法を理論ではなく実践できたものはいましたか?」

「君、なにか、研究者と言うよりは取り調べをする警察官のようだね。学者はもうちょっと柔らかく、相手の言葉を引き出すようにしないと苦労をするよ。」

井戸はテーブルの上に肘で立てた両手を組んで、そこに顎を乗せていたずらっぽく笑った。

「いや、失礼しました。どうも知りたいことがあると、突っ走ってしまうもので。」

「いいことだよ。やり方次第だ。で、実践できたもの、実践できたもの…。たしか一人たなぁ。名前はなんて言ったっけ。もう顔も思い出せないんだが、たしか危険だって言って、結局論文にはまとめなかったはずだよ。危険なものになる予感もして、私もその研究は以後進めなかった。そのあたりは一色君が知っているはずだ。彼女に聞いてみたまえ。」

 井戸がそう言って、背を椅子の背もたれに預け、手をテーブルの上に置き、コーヒーカップを取ろうとすると、そこにどこからともなく黄色い鳥がやって、一色の手の先に舞い降りた。

「あはは。お前さん、今日も来たねぇ。今日は、お前さんにあげるものはないんだよ。」

「かわいいですね。お友達なんですか?」

「そうさ。ずっとずぅっと昔からね。」

【…カナリア】

【カナリア?…カナリア!】

 パトロがBMIで呟いたので秋尾も認識した。鳥はカナリアだ。鳥は一声二声鳴くと、餌がもらえないことを悟ったのか、開いた窓から外に飛び去っていった。秋尾とパトロはそれを見送る。ハウは3人が同じ方向を向いたので、不思議そうなその顔を目線の先を見た。

「井戸先生、最後に一つお伺いしたいのですが、例えばそういったプログラムを、機械的に自動化して、大規模に行使する事は可能でしょうか?」

 井戸は片手を顎に当てて、しばらく思案していた。そして眼をつぶったまま答えた。

「今の技術では無理だろうな。将来、コンピューターがありとあらゆる言語、ありとあらゆる人の感情を読み取って、それにより瞬時にカスタイマイズしたプログラムを作ることができたら、大規模に、かつ人を思い通りに操ることは可能かもしれん。ただプログラムを書き換えている時間は、安静である必要がある。それに長くなれば長くなるほど難しくなる。そこまでが私たちの実験で得た知見だ。」

「貴重なお話、ありがとうございます。ところでこのホテルは…」

【隊長、ギルマスから通信が入っているので、ちょっと先に行っても良いですか?】

【わかった。】

「あの、アタシ、ちょっと失礼してお庭を拝見してきてもいいですか?お花を…」

「ああ、どうぞ。向こうの通路の奥だよ。」

 また井戸がいたずらっぽく笑った。ハウは会釈をして立ち上がろうとすると、ARグラスがちょっとずれて落ちそうになり、それを思わず手で支える。

「おや、君…」

 ハウが声に釣られて、グラスを手に持ったまま、素顔で井戸の方を見た。

「どこかで見たことがあるなぁ。名前が思い出せないなぁ…。気のせいか。いや失礼。」

 ハウが「はぁ」と気の抜けた返事をして、グラスを付け直して、奥に歩いて行く。

【グラスの誤認識システムが外れた瞬間に認識した。】

【ああ、そうだな。】

【名前を知らないって言うのは…】

【たぶん画像データだけを持っているって意味だろう…。】

井戸が特殊部隊用にARグラスに仕込まれた、顔を特定されないための強制誤認識システムでハウを誰かと認識できずにいたのだ。そう秋尾は推測した。

【ストックに積んどけ。】

【了解。】


【んん?鳥?どの鳥?】

【さっきGENESISの中で見た鳥、いたろ。】

 ギルマスはハウに動画を投げて話を続けた。さっき見たカナリアがひとしきり鳴いた後に、吹き出し付きで二次元バーコードを吐くシーンが表示される。

【うんうん。】

【このバーコード、新人の訓練がてらダメ元で解析させたんだ。強制解読とサイバーコマンド関連人名と用語、最近の事件関係者や事柄でのリスト攻撃。すると三段関連で人名でヒットが出たんだよ。開くと位置座標が出た。場所は千葉県の『幸せの眠る森』ってところだ。】

【え、アタシたち今そこにいるよ。】

【知ってるよ。コマンドルームに隊員の位置出てるから。で、暗号解除キーになった名前は、ヴィクトール・チャン。北洲人の在留人団体の元大物。十年前ぐらいに死んでるけどな。なんか手がかりになるだろうから隊長に伝えてくれ。ついでにここしばらく、政府にテロ情報たれ込んでいる奴も『カナリア』な。】

【わかった〜。隊長〜。】

【ギルマスがCCしてくれていたから聞こえている。】

 ハウが通路の奥から顔を出して様子をうかがうと、秋尾とパトロは、井戸に別れの挨拶をして歩いてくる所だった。

【とりあえず彼女に聞いてみよう。】

 三人はまたホールに戻ると、近づいてきた美森に尋ねた。もし井戸のように家族限定であれば、別ルートを考えないといけない。あるいは暗号解除キーの名前には何か別の意味があり、ここにいると言うわけではない可能性もある。

「すみませんが、ヴィクトール・チャンさんという方とお話できますか?」

「ヴィクトール・チャンさんは、そちらにお掛けですよ。」

 美森はアッサリとそう答え、秋尾たちのうしろのソファを指さした。気難しそうな恰幅の良い老人が腕を組んで座っていた。秋尾は美森に挨拶をして、チャンに歩み寄った。パトロが秋尾を制して進み、チャンの前に座った。

「こんにちは、チャンさん。島と申します。すこし、お話させてもらってもよろしいですか?」

 パトロはにこやかに闊達な雰囲気で、礼儀正しく話しかけた。

【隊長、さっきからあれなんですか?】

【営業モード、っていうらしい。お前もいくつかペルソナ持つといいかもな。】

【ふええ。】

 チャンはソファに深く腰掛けていて、眼を薄く開けてパトロを見たが、反応しない。パトロは、北洲語を含むいくつかの言語で話しかけたが、反応はなかった。だがパトロがため息をついて、秋尾の方を振り返ろうとすると、

「邦語でわかる。」

と、ぶっきらぼうに答えた。パトロが向き直って、再度話しかけようとすると、追い打ちをかけるように。

「だが、話すことは何もないぞ。」

と続け、さらに少し間を置いて、

「俺の一番好きな景色のことなら話してもいいがな。」

と締めくくった。

【これはフリーワードのパスワードだな。】

【…ええ。】

【何回かミスでロックがかかる可能性があるから、今日は引き上げよう。】

【はい。】

【隊長!感あり!車が入ってきた。】

 秋尾とパトロの会話にハウが割り込んだ。

【こんな夜中にか。監視。】 

「わかりました。ではまた出直して参りますね。」

 パトロがそう告げると、三人はチャンをおいて、ホールの出口を目指した。

 出口では美森が待ち構えていて、伝票らしきものを手に持っていた。

「秋尾様。こちらを。それとよろしければご寄付もお願いします。」

【一人下りてきた。普通のスーツだよ。うちの車見てるね。たぶんもう一人車にいる。】

 秋尾は伝票を受け取り中を見て、二次元バーコードを認識すると、適当な寄付額を上乗せして、捜査用の匿名プリペイドカードで決済をした。その上で伝票を美森に返した。美森はお辞儀をしてこう返答した。

「ありがとうございます。ご寄付感謝致します。またのお越しをお待ちしております。お帰りの際は、お車の周りのペットも、お忘れ無くお連れになって下さいね。ここは静謐な思い出の眠る場所ですので。」

 秋尾は回転扉から入ってくるだろう人物に気を取られていたが、美森の言葉にはっとして、彼女を見た。美森はニッコリを微笑み返す。なるほど、ただのハイテクではなく一定のセキュリティがあるのだと理解した。

【入ってくる!】

【パトロは俺の影に。警戒しつつ、そのまま気にせず出る。】

 パトロはハンドバックの中のものを握る。相手とは出入り口で丁度入れ替わりになり、眼が合いお互いの顔は認識したが、回転扉を挟んだ両側のドアからそれぞれ行き違っただけだった。パトロはカチューシャ風のBMIに仕込んだ全周視界で後方を警戒したが、特に何もなく車までたどり着けた。

【細工や信号機は?】

【この子達が見ていた限りはない。】

【あっちの車から死角になる側で回収して出る。】

 3人がそれぞれドアを開け、助手席のパトロが足を地面に付けたまま席に座ると、その足を伝って『ペット』も全て車内に戻った。ドアを閉め、ハウが行き先を指示して車を動かす。アーチをくぐると、パトロはダッシュボードから黒い鳥形のドローンを出して、空に解き放った。鳥は中が見える木の上に留まる。

「車は動かないみたい。」

「こんな時間にと思ったが、杞憂か…」

「ただ、たぶんあの男、私たちがチャンに話しかけたあたりにいる。」

「あの男の顔と、車のナンバーを…」

「隊長。あの車は練馬登録のレンタカーだよ。もうあたり付けたよ。顔はとりあえず出ない。」

「しらべ、といて…。」

「あとで調べてストックに積む。」

「ヨロシクオネガイシマス…」

「ドローン回収。」

「隊長。かしこいハウに、ご褒美のご飯は?ご飯は?」

「基地に戻る前に、今なら外で食って良いのは、コンビニかファストフードだな。すまん。」

「好きなの頼んで良いなら、そいでもいいよ!」

 ハウは運転席の上で小躍りをした。急ぎ足だったので気にしていなかったが、満月のせいか風景が淡い光に照らされてた。その中を車はライトで道を指し示し進む。



・首都高湾岸線北回り船橋工業地帯


 念のため長い橋の上で身動きが取れなくならないように、首都高を湾の北回りで基地に戻るルートを選ぶ。左手に海を見ると、先ほどの明るい月が、海面に光の軌跡を描いていた。月の明かりで日本画のような雲が浮かび上がる。

 パトロは周辺の車を警戒していたが、納得したのかようやく冷めたバーガーに手を付けていた。ハウは既に食べ終わって、先ほどの車と男の顔を、北洲絡みの件での参考的な予備捜査手続を取って、詳細をGEEKSに依頼しているところだった。会話の合間にシェイクをずぞぞぞと音を立てながらすすっている。

「やるのは全然構わんよ。むしろ今日の意見で連中お前さんのファンになっちまったから、喜んでやるだろ。ただ、今、夜勤シフトでほとんど帰っちまっているのと、SNSのBUZZTALKで不自然にトレンドになっている中継予告があるんで、そっち終わってからな。」

「ファンって何の話だ?」

 秋尾はハウとギルマスの会話に割り込んだ。

「ああ、今日AB360の同期向上訓練と、うちの連中とのバーチャル顔合わせで、GENESISっていう特殊部隊ゲームにいったんだよ。そん時、ハウが刀一丁で相手陣地に切り込んで全部殺っちゃって、こんな感じ。」

 ギルマスはそう言って、血まみれで満面の笑みの帰還シーン画像を秋尾に見せた。秋尾は思わず口に含んでいたコーヒーを吹きそうになり、それを辛うじてこらえて激しく咳き込んだ。訓練でゲームをやるのは良いが、あんまりスキルを発揮しすぎて本職だとばれないようにな、と言おうと思ったが、これを見ても、逆に誰も本職だとは思わないだろうと、複雑な思いで頭を抱える。ハウを見るとこちらに顔を向けて、両手の人差し指をあわせ、申しわけなさそうに苦笑いしている。一応申し訳ないと意識はあるんだと理解して、パワハラ上司とコードに引っかからないように、ぐっと飲み込んで、

「ばれないようにほどほどにな。」

 と言った。ハウがうんうんと頷くので、この件はそれで流した。気を取り直しギルマスに質問を続けた。

「で、中継予告って何の中継?」

「そりゃ蓋開けるまでわからんね。まぁ大抵はビデオスターの突撃系のネタのライブ中継なんだが、たまに犯罪行為になるものもあるんで。そう言った場合は発生したらヨーイドンで、プロバイダーなんかに身元特定の要請して、所轄に情報提供やらなんやらしないといけないので。GEEKSは警視庁のサイバーキャッスルからヤサはこっちに移したけど、身分は併任なんでその辺は持ちつ持たれつってやつで。もうそろそろ始まる。」

 パトロはギルマスがシェアしたリンクを、車内のセンターコンソールのモニターに投げた。モニターで放送予告の画面が表示される。可愛らしい狐のお面を被った、三頭身ぐらいのキャラクターが小走り風に描かれている。民芸品やお祭り、昔話に見るような糸目で鼻と口が尖ったデザインだったが、よく知った配色とは異なり、全体は所謂きつね色基調で鼻から顎にかけて白く塗られていた。タイトル画像にはイラスト共にポップなデザインのキャッチコピーも入っていた。

[おキツネさまのお通りだ]

 秋尾がその画面をじっと見つめているうちに画面が切り替わり、画面はどこかの工場地帯のような場所に切り替わった。

『こんばんは〜。世直しおキツネさまだコ〜ン。』

 指でキツネのようなマークを作ってしゃべるその人物は、体のシルエットから想像するに、かなりグラマーな女性だと思われた。おそらく高いところに立っているようで、肩口までの髪が風になびく。足元から照らされる照明が、怪しさを演出している。動画の上に視聴者のコメントが流れて表示されている。

「秋尾隊長。たぶん当たりだ。場所特定、使用しているカメラ通信の特定に入るんで。」

「ONLINEにしたまま、何か分かったら教えてくれ。」

「了解。」

 画面の中のおキツネさまと名乗った人物は、愛想を振りまくようにカメラに向かって手を振っている。

『普段は山の中の神社にいるんだけど、国中の神社を通じて、今の世の中、人を人とも思わない、ひどいことばっかりだって声が聞こえてきたコ〜ン。』

『だからぁ、おキツネさまとしては、みんなの願いを聞いて世直しをするために、山から下りてきたんだコ〜ン。』

『というわけでぇ、みんなのかわりにみんなの心を踏みにじる人たちに、おしおきしたいと思うんだコ〜ン』

 最初は冷やかしや、卑猥なコメントが多かったが、次第に『制裁しろ!』や『おう、やってみろ!』と言った、煽るコメントが増え始める。

『さあみんな、この放送を拡散して拡散して!みんなの力が合わさると、よりたくさんの力が出るんだコ〜ン。』

 表示されている動画の下の拡散数が瞬く間に加速する。

『さあ、みんなもいっしょに声を上げて!て・ん・ちゅう!て・ん・ちゅう!』

 おキツネさまが、人差し指を立てた両手を組み、下げた頭の上に持ってきて、祈るような仕草をする。

『ウンダバダバダバウンダバダ!』

 コメントに次々と天誅をはじめとする過激な文字が流れる。おキツネさまが祈るようなそぶりをして数秒が過ぎると、「きえええーっ天誅!」と、奇声を発した。それとほぼ同時に、秋尾たちの左前方のビルの屋上付近で、爆発と火の手が上がった。

「パトロ!通報!ハウ運転代われ!ラゲッジからM4とジャミングドローン準備!」

「「了解!」」

 ハウは運転席のシートを後ろに倒すとベルトを外し、体を丸めるように後ろに転がり、秋尾にスペースを空ける。秋尾は足から運転席に滑り込み、すぐに背もたれを立てて、ハンドル握った。続いて緊急車両用のボタン押し込むと、グリルとリアバンパーに仕込んだ赤色LEDが点滅しはじめ、前後にホログラムで緊急車両と投影された。走行している車はほぼ自動的に道を空ける。秋尾は高速出口に向けてアクセルを踏み込んだ。

『おお、なんか光ったねぇ。みんなの思いが一つになった印だコ〜ン。もういっちょいこうか!それ、て・ん・ちゅう!て・ん・ちゅう!』

 拡散数は目にも留まらぬ早さで増え、コメント欄には爆発の状況を伝えるものが増え始めた。キツネさまがふたたび奇声を上げると、秋尾たちの遙か前方遠くで光が炸裂した。

『おお!また光ったねぇ!みんなすごいんだコ〜ン。』

 おキツネさまは、三脚かなにかで固定していたカメラを持ち上げて、180度反対側を向く。その向こうに炎上する建物が見えた。

GEEKSと連携を取ったのか、バトラーから通信がつながる。

「隊長!画像から場所が特定されました!隊長の現在地から3キロ先海岸側の工業地帯の製油所です!1キロ先に高速出口があります!三次元座標送ります!」

 ほぼ同時に椎名が通信に割り込む。

「椎名だ!現場には君が一番近い!君がそいつを押さえろ!」

「了解です!」

 目標を車にセットすると秋尾はアクセルを踏む。同時にサンルーフを開けるボタンを押す。

「ハウ、目標をロックして直線で見える位置に来たら、ジャミングドローンを撃て!パトロはバードドローンを放って、そいつを頂点にレーザーメッシュネットワーク形成、ドローンの目に乗って順次位置を流せ!逃がすなよ!着いたら俺とハウで挟撃して確保する!」

「「了解!」」

 ハウとパトロがサンルーフから身を乗り出し、ドローン弾に目標の情報をインプットする。ハウがM4無反動砲を構えると、パトロが後方を見て「クリア」と声を上げ、車の中でハウの尻を叩いた。

「ファイアリング!」

 目標が直線で補足できた瞬間にハウが引き金を引くと、ドローン弾が打ち出された。尾を引く弾道の向こうで少しだけ小さく光が光る。パトロがARグラスをVRモードに切り替えた。

「展開確認!目標視認!サーモ、光学、確認出来る範囲では一名!」

「ジャミング開始!」

 秋尾が指示をすると、センターコンソールに表示されていた中継画像が中継不能の表示に切り替わった。ハウはM4を車内に戻し、申し訳程度の防弾ベスト着て、グロックと電磁警棒を握って、サンルーフから天井に出た。パトロが先行したドローンから、化学プラントの内の目標までのルートを選定しAR上に表示する。秋尾は化学工場の入口を静止を無視して突破し、目標の近くに付けた。

「先に行きます!」

 ハウがカーブで速度を落とした車両から飛び降り、そのままプラントの点検用の足場を駆け上がった。秋尾も反対側に車を回り込ませ、グロックを掴んですぐに後を追った。

【ハウ!目標を確認したら、俺が行くまで出ないで状況を知らせろ。俺が引きつけて、投降しないようなら後ろからやれ!】

【了解!てか、目標視認!なんか立ったまま動いてないよ!】

 秋尾も足場を駆け上がって最も高い場所に辿り着く。ドローン画像で銃などを持っていないことを確認して、派手な動作で目標の前に飛び出て、グロックを構えた。秋尾の前にレーザーホログラムで掲載のIDが表示される。

「警察だ!動くな!」

 そう言った瞬間に、目標は足元から崩れて、足場に倒れ込んだ。そのまま足場からずり落ちそうになる。距離を詰めていたハウが物陰から飛び出して目標を確保、反応がなく暴れないことから、グラスで心拍を確かめた。

「……いったいなんなんだこれ?」

 秋尾はため息をついて、銃を下ろした。

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