第35話 ヤケ酒、まいります!
「…学か?電話に出ないから、心配したぞ。」
「ごめん。実はお前に話がある。今から会えるか?」
「いいよ。お前ん家、行こうか?」
「ああ。」
数分後に拓也は、ビールをひっさげてやってきた。
「で、話って?」
ビールのプルタブを開けながら拓也が切り出した。
「実は…。」
一通り話した。そして、言葉を失っている拓也に土下座をする。
「済まない!横取りするとか、裏切るつもりはなかった!本当に、最近まで何とも思っていなかったんだ。」
「…そうか。」
拓也はそれだけ言うと、グイグイとビールを飲み干す。
「おい。そんなに飲んで、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないから飲んでおるんだぁ~!いいか、学!」
「は、はいっ!」
「お前を特別に許してやる!そのかわり、瑠奈ちゃんをぜーったいに泣かせるな!それから、今日は、飲め!…うっ…うっ…うっ…!」
これで許してもらえるならと、学も腹をくくってビールを高く掲げて叫ぶ。
「ヤケ酒、まいります!」
「瑠奈ちゃんにカンパーイ!」
「カンパーイ!」
ヤケ酒の宴が始まった。もう二人とも、明日の学校のことなどお構いなしだ。
ほろ酔いの拓也は、本当にヤケになっている。もともと瑠奈から「近づかないで」と言われていたので、学がいなくても、相手にされていなかったのだ。でも、なぜ学と?という気持ちがあるのだ。
「今も瑠奈ちゃんが好きです。学に愛想つかしたら僕が…うっ…うっ…。」
「おいおい。拓也。このぉ〜。酔っ払い〜。大好きだぞおー。俺たちの友情にカンパーイ!」
「そうだ!カンパーイ!」
ここまでくると、もう誰にも止められない。
宴もたけなわのその時に学のスマホが鳴った。瑠奈からだ。
「もしもし?ちょっと話したくって。今、いい?」
「んぁ?」
「酔っ払いだな。明日また…」
言いかけたところで、拓也がスマホを奪った。
「瑠奈ちゃん?交際宣言おめれとうございまぁーす!」
「エ?ナニ?コラ、学!何やってんだよ!」
瑠奈がスマホに向かって叫ぶ。
「返せ〜。コラぁ〜。…あ、瑠奈ー。拓也がぁ〜許してくれたぞー!」
すっかり出来上がった二人は、たまらなくロレツが怪しい。
「そ、そう。良かった。お楽しみのようだから、切るよ。」
…まあ、とりあえず良かった、んだよね。
ホッとする反面、飲み過ぎ決定の二人を心配しながら家路についた瑠奈だった。
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