第34話 一生のお願い vs 一生のお願い。
『瑠奈ちゃんとのセッティングをしてくれ。頼むから。一生のお願いだ。』
イヤな予感がしたので、あえて拓也からの電話に出ないようにしていたらLINEが来た。
…勘弁してくれ。俺の方こそ一生のお願いだ。
拓也が思っていた以上に熱烈なことに対する驚きと、拓也への罪悪感で学は悶々としている。
…拓也、ごめん。横取りしようとか、裏切るとか、そんなつもりは微塵もなかったんだよ。でも、気づいたら、惚れちまってたんだ。最初にセッティングを頼まれたときは、本当に何とも思っていなったんだ。ああ、なんて言おう。
派手な着メロにドキッとする。画面を見ると、姉の佳奈からだ。
「久しぶり~。その後どう?瑠奈ちゃん元気にしてる?」
「…実はそのことなんだけど…。」
「何?まさか、フラれたの?」
こういうことをあっさり言い放つ姉だが、意外に要領が良いので、何か知恵を貸してくれるかもしれないと、話すことにした。
「いや、そうじゃなくって…。」
フムフムと相づちを打つ佳奈に一気に話す。
「あらあら。そうだったの?それはお友達とのことが気がかりね。」
一通り話すと、佳奈は驚きながらも、相手が瑠奈ということで弾んだ空気が伝わってくる。
「どう思う?友達も瑠奈も両方、手にしていたいと思うことは、いけないんだろうか?」
「そんなことないわよ。どっちも大事なんだから。まあ、そう思うなら、少しでも早く正直に話すべきね。あとは、ご縁ね。」
「ご縁?」
「そう。ご縁。一時的に気まずくなっても、ご縁があればまた仲良くなれるわよ。」
「そうだと良いけど。」
「大丈夫よ。本当の友達だったらね。それより、学校サボって雲隠れなんかすんじゃないわよ。」
「なんでわかるんだよ?」
「小さな頃から、都合が悪くなると雲隠れの術、使ってたじゃない。」
「そうだった?」
「そうだったのよ!アンタが雲隠れするたびに、私が共犯の疑惑がかけられたんですからね!」
自分の記憶にはない、苦い過去の話とアドバイスを佳奈から聞いてから電話を切った学は、意を決して、通話ボタンを押した。
…神様!一生のお願いです。拓也に許して欲しいです!
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