第27話 ケーキバイキング。
イライライライライライラ……。大股で歩いて、気づいたら駅にいた。イライライライライライラ……。次に気づいた時には知らない街を歩いていた。夢中で歩いていくうちに、電車に当てずっぽうに乗っていたようだ。
「あー!くそー!めんどくせーんだよ。もう近づくんじゃねー!」
人目を気にせずに叫んでみる。
「腹減った!何か食おう!」
店を物色してみるも、食べたいものが思いつかないので、またイライラしてくる。
「迷ってる?」
「まあね。」
「迷うなら、ケーキバイキング行きましょ。」
…誰?一人で行動していたはずなのに。
不思議に思って振り返ると、春奈がいたずらっぽく笑っていた。
「どうして?」
「私もムシャクシャしてたから、飛び出してきちゃった。さあ、行くわよ!モトを取りに!」
春奈がガシッと瑠奈の腕を掴み、勢いよく歩き出す。
「ちょ、ちょっと!店、知ってんの?」
「当たり前よ。この界隈は高校時代の庭みたいなモノだったんだから。お気に入りのケーキバイキングに案内するわよ!」
張り切って歩く春奈はワクワクしたオーラ満開で、そしてなんだか頼もしい。
案内されたのは、ホテル内のカフェ。ジーンズでもOKな気軽な場所らしい。
「オシャレなトコだね。ホントにジーンズでも大丈夫?」
「もちろん!さ。入ろ!ガッツリ食べよう!」
席に座ると、店員がワゴンを押してやってきた。ワゴンには見本のケーキが何種類も乗っている。一つのケーキが瑠奈の目に留まる。
「これはフランボワーズ?」
瑠奈は濃いピンクのソースにマカロンが乗ったケーキを指さす。
「はい。フランボワーズのムースです。」
「やっぱりねー。瑠奈は真っ先にそれを食べると思ったわ。」
春奈はちょっとだけ得意げに
「レアチーズケーキも、オススメよ。ソースが選べるの。」
「もしかして…?」
「フランボワーズソースも、あるわよ。」
二人のやりとりを見て、店員が微笑む。
「まだ後からオーダーできるので一度にたくさんオーダーしなくても大丈夫ですよ。」
「は。はいっ!」
慌ててオーダーを一旦〆る。
「おいし〜!」
感動の声を上げる二人。それぞれの皿には、フランボワーズのムース、チョコタルト、イチゴショート、レアチーズケーキ、マンゴープリンなど、ケーキがにぎやかに盛られている。
「やっと瑠奈をここに連れて来れた。絶対に気にいると思ってたんだけど、」意外にタイミングが合わなくてね。」
「春奈。ありがとう!もう感動!」
「まだ早いわよ。ここ、マカロンもバイキングに含まれてるのよ!」
「すご〜い!」
瑠奈はマカロンが大好きなのだ。
「フランボワーズばっかり5個とか頼んでも平気?」
「アハハ!大丈夫よ。フランボワーズもいいけど、私のオススメはキャラメル・サレよ。」
「じゃあ、それも食べよっと。」
子供みたいなはしゃぎっぷりに春奈もニコニコだ。
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