第26話 KEEP AWAY!
「いやー、あの店、良かったよ。」
昼食を済ませて、午後から大学に向かった学と拓也。キャンパスに着くと、見覚えのある二人が横切る。学がヒヤッとして隣を見た時には、拓也はもうそこにいなかった。
「瑠奈ちゃん。昨日は、ごめんなさい!」
瑠奈たちの目の前で、体を二つ折りにして頭を下げて詫びていた。
…おいおい。知らないぞ。
「瑠奈にもう近づかないで!この変態野郎!」
学がヒヤヒヤとして見ていたとき、声をあげたのは春奈だった。瑠奈と拓也の間に立って瑠奈をかばっている。
…意外な展開だな。春奈ちゃんが…。
そう。学は瑠奈の行動を心配していたのだ。
「僕は、反省しています。お願いです。許してください。仲良くしてください!」
春奈を押しのけるようにして、拓也は頭をまた下げる。2人があっけにとられていると、ひざまづいた。
「お願いです!」
まわりの視線が気になるが、土下座している拓也は気にしていない。
「あのー。やめてくれない?昨日から、私がいじめてるみたいじゃない。みんな見てんだよ。」
「そうよ!自分がチカンまがいのことしておいて、まだ瑠奈を困らせるなんて最低よ!」
春奈は今にも拓也を蹴飛ばしそうな勢いだ。
「…春奈、やめなよ。ホントにイジメみたいになっちゃうよ。」
瑠奈が春奈をたしなめる。そして、腰をかがめて、土下座したままの拓也に向き合う。
「昨日のことは、もういいから。」
「じゃあ……!」
ガバッと顔を上げる拓也に向かって続ける。
「悪いんだけど。拓也君の気持ちに向き合う気はないの。そういうつもりなら、もう近づかないでくれる?」
瑠奈が踵を返すと、春奈も、後に続く。拓也を睨みつけて。
「そんなぁ〜。」
拓也は泣きそうな表情かおで二人の後ろ姿を見つめている。
瑠奈はイライラと、無言で歩いた。まわりの視線が集まってしまったことや、拓也が思った以上にめんどくさい人間ヤツだったことに、かなりの苛立ちを覚えて何も話したくない。昨日からのことを見てしまった人々の目がない場所に行きたかった。午後の講義も、もう出る気になれない。
「瑠奈?大丈夫?」
心配そうに春奈が言う。
「ごめん。帰る。」
もう、近づかないで!というオーラをまとってキャンパスを出て行く瑠奈だった。
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