第25話 あったかいランチ。
「とりあえず、温かいものを食べて温まろう。」
そう言って学が案内したのは、スープバーのあるカフェ。ル・クルーゼの鍋のカフェも考えたが、今日ばかりは、瑠奈と拓也が鉢合わせしてはと、この店にしたのだ。まだ開拓したばかりなので、瑠奈は知らないだろう。
ここは、スープバーのスープがル・クルーゼの大鍋に入っている。グラタンなどはル・クルーゼの器で出てくるので、多分、瑠奈も気に入るだろう。
「オシャレな店だな。」
拓也は落ち着かなさそうだ。確かに女性客やカップルばかりで、男2人の客は他にいない。学も、普段なら瑠奈と一緒なので気にならないが、今日は少々、落ち着かない様子だ。
スープを取ってきて、一口。
「あー。生き返るー!」
「パンも食べ放題だぞ。」
拓也の目が、パアッと輝いた。味になかなかうるさい拓也だが、ここのスープは気に入ったようだ。パンも期待できると思ったのだろう。
「ここのキッチンツールは、オシャレだよね。ママのキッチンスタジオにもあるけど。僕もこういうの、好きで、一つだけ持ってるんだ。」
「へえー。意外な共通点だな。瑠奈がル・クルーゼ好きなんだよ。」
学は言ってから、しまった!と手で口を覆ったが、無駄だった。拓也には、しっかりと聞こえていた。
「ホント?ル・クルーゼのショップに行こうって誘ってみようかな。」
スープを飲む手を休めて、妄想しだしている。さっきまで「瑠奈ちゃんに顔向けできない」と言っていたのに。
…ああ、懲りない奴だ。今度は手首だけじゃ済まないだろうな。
「…頼むから、自分を大事にしてくれ。しばらく近づくのは、やめてくれ。」
「大丈夫。ちゃんと謝るから。」
「やめろ。
「やっぱり学は、瑠奈ちゃんに他の男を近づけたくないんじゃ?」
ーブフッ!
拓也の一言にスープを吹きそうになる。
「誤解だ。まず、メシを食おう。冷静になろう。パン、取ってくる。」
パンを皿に取りながら、考える。
…瑠奈あいつのどこがそんなに良いんだ?拓也が相当な変わり者なのか?
「おい!食い切れるわけ?」
拓也の声でハッとすると、皿の上ではパンが山盛りになっていた。
「お、お前の分も取ってたんだ!さあ、席に戻って食おう。」
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