第24話 話がある。

「おはよう。春奈。話がある。サボって外に行かない?」


昨日のことを春奈に話しておきたいのだ。できるだけ知り合いのいない場所で。


「何?話って。」


ドリンクバーでホットココアを運んできて、春奈が切り出す。


「実は昨日、春奈と別れたあと、拓也君が来て…。」


「そうだったの?会いたかったわ~。」


「手首を掴まれた。」


拓也の話題に嬉しそうにしていた春奈が言葉を失った。


「どういうこと?」


「メシ誘ってきたから断ったら、手首を掴んできた。離してと言っても離さなかったから、護身術の技をかけた。」


「何それ?」


「……ごめん。手荒なことはしたくなかったんだけど。ムカッときて、気づいたら…。」


…もう、春奈は口をきいてくれないかもしれない。でも、黙っていて、後から知られたら…。


「信じられない!」


…ああ、やっぱり。


「拓也君がそんな失礼なことをするなんて!」

絶交を覚悟していた瑠奈はビックリだ。春奈が瑠奈のために激怒しているのだ。

「春奈?」

「だってそうでしょ?そんなの、チカンの一歩手前よ!瑠奈、拓也君のこと、良いって思ったことは取り消すわ。忘れて!拓也君ってサイテー!」

瑠奈は、春奈がこんなに怒ることがあるということに驚き、そして拓也が少しかわいそうな気もした。



一方、学のマンションでは─


「頭痛い~。」


そんな拓也に学は冷ややかに言う。


「飲みすぎだよ。自分のしたことわかってんのか?」

「エ?」

「エ?じゃないよ。遅くまで“瑠奈ちゃーん!”って叫びまくりだったくせに。いつ苦情が来るか、ヒヤヒヤだったんだぞ。」

「俺、そんなことしたの?」

拓也は全く憶えてないらしく、ポカンとする。

「ホントに憶えてないのか?旨いツマミを作って、その少し後から、大騒ぎしてたんだぞ。」

…そういえば、ノドがガラガラだな。そんな恥ずかしいことをしたなんて…!

「申し訳ない!」

拓也は学に向かって土下座をする。拓也としては久々の酒の失態にそのまま、床と同化してしまいたいくらいの気持ちだ。

「まあ、いいよ。運良く苦情も来なかったし。ところで学校どうする?一限目はもう始まってるけどな。」

「どうしよう。瑠奈ちゃんに顔向けできない。」

「このまま、帰って寝たら?頭痛いんだろ?休んだら?」

「そうしようかな。学は?」

「俺はもう少ししたら、昼メシ食ってから行くけど。」

「やっぱり行こうかな。」

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