第28話 話があるんだ。

「あー。おいしかった!春奈、いいところに連れてきてくれてありがとう!」

「ウフフ。また行こうね。」


なんと瑠奈はフランボワーズのムースを8個、マカロンをフランボワーズだけでも12個、その他の味も何個も食べて、他のケーキ類もがっつり食べて、店員にも、他の客にも驚かれる食べっぷりだったのだ。


お腹いっぱいケーキを楽しんで、笑顔で帰途につこうとしていたとき。甘美な余韻に浸る瑠奈の横でスマホが鳴る。学からだ。

「もしもし…。」

「瑠奈、今、会える?話があるんだ。」

「いいよ。学ん家ち行こうか?」

「…ミスドに来られる?」

瑠奈は学の口調に何か違和感を感じたが、行くことにして、電話を切った。

「どしたの?」

「学が話があるって。今日の件だったらイヤだな…。」

「ふーん…。何だろうね。」


じゃあ、と春奈と駅前で別れ、電車に乗る。もう夕方になっていた。車窓から夕日を眺めながら、学の話ってなんだろう、と考える。

今日たまたま、朝に一緒じゃなかっただけなのに、待ち合わせが久しぶりに感じる。


ミスドに着くと、もう学は座っていた。瑠奈もコーヒーとドーナツをトレーに乗せ、向かい合わせに座る。

「何?話って。」

「今朝、瑠奈が拓也をフった時に、ざまぁ、と思った。」

「やっと私の迷惑がわかったか。ヨシヨシ!」

「拓也を受け入れなくて、ホッとした。」

瑠奈は急にイライラしてきた。

「めんどくさいヤツを受け入れるキャパは持ってねーんだよ!っていうか拓也君あいつの話、やめろよ!」

「拓也は友達なのに、応援する気になれないんだ。おかしいよな。」

「これ以上、拓也君あいつの話をするなら帰るぞ!」

瑠奈は乱暴に立ち上がる。昼間のイライラが完全に再燃してしまったのだ。

「これ以上、私に拓也君あいつを近づけないで!」

「ちょっと待てよ!」

再燃したイライラ包まれて、学の声も無視して、店を飛び出す。


聞きたくない名前を聞かされたことと、学までめんどくさい人間やつに思えてきたことで悲しくなってしまった。


ずんずんと歩いて、立ち止まると、涙が出てきた。

「何なんだよ!ッたく!」

…わざわざ待ち合わせしてまで拓也君あいつの話をするなんて、ありえない!

「もう学なんて、大っ嫌い‼︎」

人けのない公園で大きな声に出してみると、心のどこかで、そうじゃないと声が聞こえる。


「何?この気持ち…。」








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