第18話 ありがとな。
「今日はありがとな。おかげで見合い話も断ってもらえそうだよ。」
「お役に立てなくて、ごめん。かなり不向きな役だった気がする。…お姉さん、優しいねー。ああいう姉ちゃん欲しかったなー。」
帰りの電車での会話。ホッとして、瑠奈の口数が増える。
「ところで、拓也のことだけど…。」
「断っておいて。ああいうの苦手。拓也くんは、いい人だと思うけどね。」
「そっか。断っておくよ。」
「がーっ‼︎早く着替えたい!足が気持ち悪い!」
学がクスッと笑う。“女装”は、ドキドキするほど似合ってたけど、やっぱり瑠奈は、このままがいいと思う。学は男前な瑠奈の隣が居心地がいいのだ。
「ウチで着替えたら、メシ食いに行こう。何がいい?こないだのお詫びと今日のお礼で奮発するぞ!」
電車を下りて、歩き出したとき、学が元気よく言った。
「焼肉食べ放題!今度は思い切り食いたい!」
瑠奈がニヤリと笑みを浮かべて言うと、瑠奈らしいリクエストに学も笑った。
「いいね。行こう行こう!スタミナ補給しないとな。」
「やった~!腹減った~!」
瑠奈の服装に相応しくない言葉遣いに思わず学が吹き出す。
「ナニ笑ってんだよ。」
「今の服装と言葉遣いのギャップがウケた!」
「そんなこと言うならもう二度とこんな服、着てやんねー!」
「言わなかったら着るの?」
「着…ない!」
顔を見合わせて爆笑する。
学のマンションで急いで着替えたら、走り出さんばかりの瑠奈。
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。」
またしても学に笑われてしまう瑠奈だが、気にしちゃいない。
「腹減ったもん!メシメシ!」
「これじゃあ、やんちゃな弟だな。」
「ほっとけ!」
…仲直りできて良かった。こいつと友達で良かった。
それぞれがひっそりと安堵した夜の道だった。
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