第3話
蜂須くんや岡永くんと別れてから、他に行くところもないので公園のベンチにぼけっと座って、老人や子供からパンの欠片なんかをもらって啄んでいる鳩を眺めていた。
漫画のアイデアをあれこれ考えてみたが、ピンと来るやつは思いつかず、気づけば夕暮れで、公園にいた子供や老人や鳩でさえ、みんな帰っていくところだった。
帰り道の途中、夕飯の弁当を買いにコンビニに立ち寄った。コンビニの本棚の中に差し込まれている漫画雑誌の一冊に、気になる見出しのものがあったので手に取ってみる。
『第二十九回和田敦彦賞受賞! 驚異の画力! 期待の新人漫画家!』
そうでかでかと表紙の前面に押し出された見出しだった。
ページを捲ってみると、某漫画新人賞を受賞した某漫画家の漫画作品が載っている。
それを立ち読みし、俺はふんと鼻を鳴らす。
何だ、こんなものか。この程度の作品が新人賞なんか獲ったのか。確かに画は上手いが、画力があるところ以外に褒めるところがないではないか。こんなありふれていて凡庸なストーリーの漫画で賞を獲れるのなら、俺だって疾うに獲っていても良いのではないか。
いくつもの漫画賞に送ってもすべて一次選考で落とされたことを思い出し、苛立ちが胸を締める。嫉妬心が、俺にその漫画の欠点ばかり見せ、認められる気にさせてくれなかった。
何で俺の漫画は一次選考落ちで、この漫画は新人賞受賞なのか――。
あぁ、ダメだ、こんなこと考えても不毛だ。こんなもの読んでも目の毒だ。
俺は漫画雑誌を棚に戻し、弁当を買ってコンビニを出た。
その日は結局、気力が湧かず、漫画の一コマも描けなかった。
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