第32話 なんやかやで樹海実習
「うぷっ」
ギルドの食堂で今日の昼定を食っている俺の右隣で、全く手を付けずメシを見るだけで吐き気を我慢するという、おばちゃんに失礼なことをしているアシュリー。どうも先ほどのバラシがじわっているようだ。
「……大丈夫か?」
俺は片手でメシを食いながら、片手で背中をさすってやる。「パァン!」……手をはたかれた。地味に痛い。
「やめなさいよ! この淫獣!」
「……(ムグムグ)」
白けた顔で俺はアシュリーを見る。……ひでえなコイツ。俺の顔が今どんななのか知らんが、ちょっとは悪いと思ったのだろう。「あっ」て顔をしているアシュリー。
「……ごめんなさい」
「……(モグモグ)」
なんかもうどうでも良くなったので、メシを食うことに集中する。「そんなつもりじゃなかったの」とか「なんとか言いなさいよ」とか「ちょっと聞いてんの!?」とか言っていたがすべて無視。
だがそれが良くなかった。
「無視すんなぁ!」
「ぶふぉっ」
メシを口に含んだまま殴られたので、中身が口から飛び出した。正面にも誰かが……というか……
「マックス先輩……」
「おう、アレックス。愉快なことしてくれんじゃねえか、えぇ?」
ちょうどテーブルに着こうとしていた、マックス先輩の顔面に飯が着弾してしまった。顔のほぼ全域に飯が貼りつき何とも気持ち悪そうだ。定食の乗ったトレイがカタカタなっている。……おそらく激おこ。
「……今日のお仕事は?」
「今日はちいっと調子悪くてなぁ。鍛錬場でちょいと汗を流してそれでしまいだ。後は昼寝して適度に酒飲んで明日また頑張るつもりだよ」
「ふへへ……」と口を歪め、異様な笑い方をするマックス先輩。仕方がないのでスケープゴートに頑張ってもらうことにした。
「俺が悪いんじゃないんすよ。コイツが……」
隣にいた理不尽ガールに押し付けようと思ったがいない。犯人はアイツなので何も間違ってはいないのだが、時すでに遅し。疾風のごとく奴は去ってしまった。
「……」
「歯ぁ食いしばれ。一発で勘弁してやる」
腹をくくり歯を食いしばったが、テーブルの向こうから殴ろうとしたので、狙いが外れたのか、目にいかれた。
このように、色々とありながらも、納品の仕事を終えた。ただ一言「腰に来る」そんな仕事だった。体力も使い切り、寮のメシを食って早々に寝た。次の日起きたら、またメルとシーが寝床に潜り込んできていた。軽くイタズラ心が起き上がるが、違うところが起き上がるとよくないなと理性を総動員し、朝飯を食い、ギルドへと向かった。もちろん寝ぼけ眼の双子も連れている。一緒にいられる時間が少ないので、せめて朝くらいはいっしょに居たい。2人もそう思ってくれているとうれしい。
素材加工、魔術講義、模擬戦と二日目、三日目もつつがなく……とはいかなかったが、まぁ無事に終わり、いよいよ樹海で実習である。今日は日帰りで樹海で活動する。昼でバディを交代し、昼からまた樹海にもぐる。持ち出せるだけの素材を持ち出す。ハンターの活動を実感できる時間がいよいよ始まる……
なお、1回だけ連れ込み宿に行った。まるで猿のようだった、とだけ言っておこう。
樹海、と一言で片づけてしまうが実際には樹海の中は、もう一つの世界と言ってもいいほどである。
樹海の中からも円環都市のいかなる場所へ行くことが出来るように、街道が整備されている。その街道でつながれているのは樹海内全てで50の集落。ただし街道は中域の浅い部分までとなっている。それ以降は魔物が凶暴で凶悪になってくるからだ。補給の問題もあるため、そうそう深い位置には集落は作られない。
街道を外れた瞬間から、森は牙をむき始める。だが、素材が街道に落ちているわけなどなく、実際の活動は道を外れたところで行うことになる。気を付けないと即死だ。
集落にも住み着いている者はおり、○族という言い方をして、代々住んでいる一族もいるようだ。
ちなみにスカーレットもこの集落の出身である。『ラ・スカーレット』というのがフルネームのようだ。丸の部分に頭のラを組み込むらしい。
―――ラ族
……決して裸族ではない。
樹海はとてつもなく深い。なので悪さをして賊に堕ちるやつが、隠れるのにも適している。そのような者たちを『森賊』と呼んで軽蔑している。まぁ森を塒にする盗賊だからという安易な考えだ。森の脅威は魔物だけではない。
川があり、開けた場所があり、畑があり、滝があり、崖があり、丘があり、神山ほどではないが山がある。樹海は樹海で一つの世界だと言われるのも納得の話である。
俺は、もう3年ほど浅いところ限定だが潜っているし、メルたちはさらに深いところまで足を延ばしている。本当に樹海初心者は元リベとスカーレット以外の4名が初挑戦となる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
分かりにくいと思いますので、そのうち修正するかもしれません。すみません。流れを殺さないため、このまま投稿します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます