第24話 ようこそ! 狩寮へ!
「フフフ……」
「ヌヘヘ……」
「……」
俺がプレゼントした腕輪をさすり、微笑み(?)を浮かべる双子。どっちがどっちかは、言うまでもないだろう。
俺たちは、もう一度女将さんたちに挨拶をし、帰ってきていたクラリスちゃんに再び抱きつかれ、それに嫉妬する双子という醜い寸劇を演じた後、こうしてギルドの寮へと向かっている。……だがこの状況、そろそろなんとかしなくてはならない。
「……そろそろ、元に戻ろうや」
「「はっ」」
日中の人通りが多い時間帯、ヤバい顔で歩いていたメルとシーに注意を促した。シーなんかよだれでてんぞ。
ようやく目を覚ましたのか、普通の顔で歩きださせることに成功した。
「お前らホントに大丈夫か?」
主に顔。
「へ、平気よ」
「……いや~、うれしすぎちゃってさ。どうする? 一発抜いてく? はりきってイっちゃうよ?」
却下だ。……こないだからシーの様子がおかしい。やたらとシモに絡んでくる。……責任は取るべきだろうか。あの世の親御さんに申し訳ない。
「シー……アンタね……」
「お姉ちゃんも一緒にどうよ? 2人きりでもいいと思うんだけど、3人でも……」
「いい加減におしっ!」
「おしっ!」ってオカンかよ。メルも失言に気付いたのか、若干顔が赤くなっている。テレをごまかす為か、さらにシーに食って掛かる。
「アンタ一線越えてからちょっと踏み込みすぎじゃない!?」
俺もそう思う。
「いいじゃん! やっとだよ? やっと手を出してくれたんだよ? ここでグイグイいかなくてどうすんの!? ランドルフたちにめちゃくちゃにされちゃうかもしれないんだよ!?」
意外とちゃんと考えられている気がする。処女のシーたちを狙っていたことは、奴のセリフから想像できる。
……というかアイツらバカなんじゃね? 端からそのセリフ言っちゃったら、対抗策として誰かとヤっちゃえばそれで終わりだろ? ぐらいのこと想像つきそうだけどな。……まぁそうならないために、俺を怪我人に仕立て上げたわけだし。あくまで推論だけども。
確かにあの時点では俺が人質として有効だったかもしれんが、裏(というほどでもない)をかかれて、結局コイツらは奴らのもくろみを阻止したわけだ。……ついでに自分たちの願望も叶えたわけで、俺は俺でそれがうれしかったわけで。
つまりは損をしているのはランドルフたちだけというわけだ。……そもそもアイツら何が狙いだったんだろう。処女の女の身柄? エロ貴族の紐でもついてんのか? それだったら別にメルたちにこだわる必要もないしなぁ……確かに2人はかわいいが、そんな契約書を絡めてまでやることか?
「っ、それはそうだけど……でも節度は守るべきよ。じゃないとアレクが干からびちゃう」
俺は俺で違うことを考えていたんだが……いくら出しても干からびはしないんじゃないかな。……想像でしかないけども。限界まで絞り出したことなんかないし。というかそろそろ人が歩いてる所で、そんな話止めない?
「大丈夫だよ! いつかこんなこともあろうかと思って、ちゃんと薬屋さんでこれ買ってあるから!」
薬屋って、ニコラ婆のとこか? あの婆さん妙なもん売りつけてねえだろうな……俺たちの間で薬屋といえば、ちょいちょいおかしな薬を勧めてくる『にっこりメディスン』のことを指す。東の方で着られている妙な民族衣装『着物』を着こなす女傑であり、旦那に先立たれたお迎えを待つ身である。いつも正座で、湯呑みとかいう土で作ったコップにお茶を入れて「ふぇふぇ」と笑う婆さんだ。こう言ってはいるが相性は良く、かなりの頻度で世話になっている。長生きしてほしい。
……というか『これ』ってなんだ? 俺が思った疑問をメルも思ったのか、シーにそこんとこ問い詰めていた。
「激烈精力剤よ!」
「1日中ギンギンになるらしいの!」と公衆の面前で言い放つシー。俺の方に侮蔑の視線が刺さりまくっている。……この世に神はいないのか。というか一日中ギンギンとか絶対体に悪いだろ。どう考えても先借りしているようにしか思えん。
「……うそ、でしょ」
ごくりとつばを飲み込むメル。お前までなんだよ! 戦慄すんな! ……もうツッコミにも疲れた。
「とりあえずシー。ヤるのは明日以降な」
「えー!?」
「えー!? じゃない! 昨日散々ヤったろ。そんな怪しげな薬使って、将来がダメになってもいいのか?」
「えっ、将来?」
「えっ?」
何やらくねくねしだしたシー。顔を赤らめ「イヤンイヤン」とか言ってる。……コイツもしかして身柄狙われてんの忘れてんじゃないのか? そんな疑問を持っていると「ぎゅむっ」と俺の足を踏む感触が。シーがあんな感じな以上踏んでいるのは他でもない。
「……痛いんだけど」
「もちろん知ってるわ」
「何でこんなことすんの?」
「あたしとも将来の話、してほしい」
なんて不器用な娘なんだ。お前をないがしろにするわけないだろ。だが関係が進んだ後のパーティ内位置関係が固まってきたのかもしれないな。ムスッとするメルを見て俺はそんな風に思っていた。
どうにもピンクすぎる双子を引きずり、やってきましたギルドの寮。
―――狩寮
門のところには、そんな看板がぶら下がっていた。え? 狩猟じゃねえの? 寮だからか?
言いたいことはわかるけど、という気持ちを抱えたまま看板を見ていると、奥の方からふらふらとエプロンをつけた女性が歩いてきているのを確認できた。メルとシーも気付いたのだろう。そちらをじっと見ている。
女性はその危なっかしい歩き方で、ついに俺たちの前に辿りつき、ピタリと前で直立した。俺たちの喉がごくりとなる。……その女性は開口一番こう言った。
「あんたらが、今日から寮に入るハンターさん?」
「そう、ですけど……」
妙に訛りのある喋り方で聞いてくる女性。俺は戸惑いながらも是と答えた。
「よかったわぁ。改めまして。ウチこの寮の管理人『ミシェレ』言います。『アレックス』さんに『メルフィナ』さん、『システィナ』さんで間違いないね?」
「そうです。その3人です」
「良かったわぁ。いつ来るか分からんで、ご飯の用意どうしよ思うてたんよ」
「あ、なんかすみません」
この寮ご飯でるのか? だとしたら最高だな。
「ええよぉ。そしたら定番のアレ、するな」
「え? 定番?」
何が定番なんだと俺たちが思っていると、ミシェレさんは俺たちを迎え入れるように両手を広げ、こう言った。
「ようこそ! 狩寮へ!」
いい顔しているところ悪いんだが、寮の名前が短すぎて今いちのれない。できれば3文字以上欲しいところである。
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そろそろ、再改題考えたほうがいいかもしれない……この3人、下ネタ絡めて回すの楽しい。
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