第11話 等級格差

 2018・10・23 大改稿

 ―――後半、眠気と酔いで書いたことを覚えていませんでしたので、書き直しました。すみません!


「どういうことよ!」


 シーが俺の発言に対し、食って掛かってきた。俺は、彼女のほうを向かずに会話を進める。


「どういうことも何も、解散するって言ってるんだ」

「何で!?」


 何で、と言われても……一度離れたほうがいいかと思ったからだ。先ほどのメルとテレンスのやり取りを見ても、等級を見て冒険者というものを判断していると感じた。なら俺は? いつも初心者用の依頼を回され、討伐系は一切させてもらえない。つまり、組合からは戦力と見なされていないということだ。そんな俺が2人から見られた場合どういう風に見られるかなんて、特に明言する必要もない。情……はたぶん移っているの……かな? 他の人よりは特別であってほしいと思うのは、俺の欲目だろうか。


「お前ら、俺のこともって思ってるんだろ?」

「そんなわけないでしょ!」

「いや……メルフィナがさっき言ってたろ。『たかが7級風情が声かけてくんじゃないわよ』って。俺なんか8級だぞ。さっきの……アレだ、テレンス? アイツより等級は下なんだぞ。やっぱり3つ等級に差があると、さすがに俺の方が組合に怒られちまうよ」


 尤も、怒られるどころか解散を要求されているのだが。


 冒険者のパーティというのは突出して高い等級の存在は、あまり歓迎されない。もちろん逆に低い場合もだ。平均的に±1ぐらいで組むのがベストだと言われている。パンディックの全員4級に対し、メルとシーの5級は臨時とはいえ普通にOKがでる範囲の中にある。

 対して突出しての俺は、組合から歓迎されていない。受けられる依頼に制限がかかるからだ。だから、ビアンカが解散を進めてくるのもあながち間違いでもないのだ。……俺が正当に評価されているかどうかは別として。


 受付で唐突に騒ぎ始めたことに気付いたのか、メルがテレンスを放ってこちらへやってきた。……なぜかランドルフとユリウスも連れて来て。


「どうしたの? シー」

「……アレくんがパーティ解散するって」

「……どういうことよ? アレク。ちゃんと説明してくれるんでしょうね」

「僕たちとしては歓迎するけどね」

「ようやく決断したか。お前のようなやつが2人とパーティを組むなど愚の骨頂」


 ちなみにテレンスは先ほどケンカをしていたところでボケッとしている。案外空気が読める男のようだ。……メルはともかく、なんでお前らまで首突っ込んでくるんだよ。テレンスを置いてけぼりにしたランドルフたちに、シーが突っかかっていく。


「何でお前らがここにいる?」

「僕たちにも関係ある話だからね」

「あるわけないだろ。とっとと消えろ」

「……そんなこと言っていいのかい?」

「……おい、ビアンカ」

「えっ? 私?」


 ランドルフの挑発もなんのその。シーはビアンカに話を振った。急に振られてびっくりしたのか、ただ確認するだけのビアンカ。


「パーティのごたごたに、よそのやつが混じっていいのか?」

「……一応ダメですね。個人情報はパーティ内でのみ共有されるのが、基本です」

「だってさ。とっとと消えろ」

「……仕方がないね。ユリウス、行こうか」

「まったく……今更だと思うんだがな」


 そう言うと、ランドルフとユリウスは組合に据え付けてある、酒場兼軽食所に向かう。あ、テレンスを連れて行った。思ったよりあっさり引いたが……帰らねえのかよ。というか相変わらず口が悪いな、シーは。


「……さて。邪魔者はいなくなったということで。もう一度、一から話してもらおうか? アレくん」


 ……尋常じゃないプレッシャーを放ってくるシー。魔法を使っているわけでもないのに眼力が凄い。


「……前から言われてたんだよ。『解散しないんですか?』って。なぁ、ビアンカ?」

「えっ? ……知りませんけど」

「えっ?」


 ……いやいや、さすがにムリがあるだろ。つか目合わせろや。グリッと首を向こうに向けて『わたしは知りません』ってか。さっき『解散してくれるつもりないんですか?』って言ってたろうが。さすがにそれを聞いたシーはすかさず反応した。


「……ビアンカ。さっき言ってたじゃない。『解散してくれるつもりになりました~?』って」


 いい感じのものまねを交えながら、シーはビアンカの首を掴み、こちらを向かせ追求する。お互いダウナー系の雰囲気を持つ者同士だけあって、フィーリングはハマるようだ。メルはいまいち流れが見えないのか、黙って見守るつもりだ。他は……


「……迂闊でしたね。ハァ……そうです。組合としてはあなた方の等級格差を認めるわけにはいきません」

「冒険者は自由にしていいはずだと思ったけど?」

「組合がパーティ編成に口を出すなんて、聞いたことないわね」


 メルとシーが次々、ビアンカを問い詰める。


「……組合長~! もう手に負えませんよ~!」


 早っ。もうギブかよ。いくらなんでもそんなすぐに組合長が……


「なんだ、騒がしいな。面倒事は御免だぞ」

「組合長~」

「なんだ? ビアンカ。何があった?」

「観察指定パーティが、反旗を翻しました~」

「なんだと? ……それはリベンジデルタか?」

「イエス! マイロード!」


 ……ホントに来やがった。マーカム冒険者組合、組合長―――


 ―――マテウス・カペルマン


 元1級冒険者らしいが……どうにも経歴が胡散臭かった。こんな人格的に問題のある男が、組合長にまでなれるなんてちょっと考えられない。しかも円環都市という樹海にダイレクトにかかわってくる場所のだ。すんげー田舎とかいてもいなくても変わらんとこなら大丈夫だと思うのだが……

 呼ばれてすぐに出てきたことといい、コイツ待ち構えてたんじゃないのか?

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