ネット作家の火村君が「売る文章術」をコピーライターに教わるようです

こぴーらいたー@風倉

第1話 なぜWeb小説家はコピーライターの『売るための文章』を知るべきなのか?

「集客」の重要性がわかってる人は、2話から読んで構いません

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 もし、文章を書くだけで億を稼げる職業があれば、それはとても素晴らしいだろう。

 なにせ労力もいらず、紙とペンだけでできるのだから。

だが、そのような職業は何かと言われたら、真っ先に思いつくのは『小説家』ではなかろうか?


 しかし、貴方は知っているだろうか?


「小説家は、食えない奴らの最後の職業」……という言葉を。


 イラっとしたら済まない。私が作った言葉ではないので勘弁してほしい。

 これは、特別な訓練もいらず、妄想1つと紙とペンさえあれば誰でも『名乗れる』小説家は、

 何のスキルも持たない人や、いろんな職にお断りされた人の最後の砦という意味だ。

 まあ、あまりいい意味で使われることはない。 


 しかし「文章で大金を稼ぐ」というのは、それなりに甘美な響きなのだろう。

 特別な元手もいらず、場所も取らず、金も取らず、絶対的な専門知識やスキルもいらない。

 印刷という技術が世に出て以後、万人にワンチャンある職業として、小説家は君臨している。


 だが、こうも思ったことはないだろうか?


『どうせなら、もっと楽に、あるいは堅実にワンチャンつかみたいものだ』と。


 そして今日、そんなワンチャンを……




「氷室(ひむろ)姉さん!氷室姉さんが考える、

 人気ないつまんない小説家と、人気ある面白い小説家の違いって、何なんすか?

 最近小説の壁にぶちあたったんで、教えてほしいっす!」



「火村(ほむら)君、いきなりぶっこんでくるね!」



 そんなワンチャンを、若い内から狙いだし、そして、ある意味禁断の質問を、

 私に躊躇なくぶっこんできたやつがそこにいた。


 どんなエッセイでも、そこまで直球で質問してるのは見たことがないのだが?


 何故ならそんなもんが明確に分かりますと答えようものなら即ブーメランになるからだ。

 分かりますとドヤ顔で答えようものなら「じゃあその理論で天下とって、どうぞ」と返されるのがオチ。

 


 ゆえに禁断の質問である。


 あと、質問が直球すぎて、質問者が浅く思われる可能性もある。

 どんな業界でも、過程をすっ飛ばし、努力を軽視しそうな人は、いい目で見られづらいからだ。


 しかし、相手は高校生になったばかり。私より一回り近く年下だ。

 即効性のある解答を、いきなり求めても仕方はないのかもしれない。

 つうか、いきなりなんで私に。

 そう尋ねると、彼はこう答えた。


「だって、氷室姉さんって、実際に『文章で大金稼いでる』んすよね!?

 そう、ばあちゃんに聞いたっす!しかも、ウルトラ稼いでるとか!

 つーことは、人気取れる小説の秘訣を知ってるはず!

 であれば、是非それを聞きたいっす!そして、俺も人気作家に!」



 ハイテンションな子だ。

 知性を引き換えにテンションを上げる能力!

 そんな言葉が浮かんだ。機会があれば今度キャラクターに使ってみよう。すごく弱そう。


 しかしなるほど。彼の祖母に聞いたのか。この男の子と、私は又従兄弟の関係だから

 私から見ると大叔母……祖母の妹にあたる人だが。


 まあ、確かに私は『文章で食べてる』し、仕事の人気はまあ、かなりあるだろう。

 よって『文章での人気取り』について、そこらの人よりは詳しく語れるほうだろう。

 だが、祖母よ、私の仕事について、もうちょっと踏み込んで彼に説明しておいてほしかったな。



 祖母からどう私を伝え聞いたかしらんが、

 おそらく彼は1つ、勘違いをしている。



「……まあ、確かに私は『文章で』かなーり稼いでいる。

 平均的なサラリーマンの数倍は稼いでるだろう。

 『どうすればウケるか』についても、そこらの人よりは語れるつもりだ。

 人気作家になる手法も十分に語れるだろう」


「ええっ!マジすか!是非教えてほしいっす!」


 まあいい。その『勘違い』は後で正すとして

 今は質問に答えてあげようか。


「まあ、教えるのはいいが……その前に、

 不人気作家と人気作家の違いというが、要は君が人気ないから、

 どうやったら人気出るかって話だろう?」


「うっ……ま、まあそうっすけど」


「じゃあ、なにはともあれ、作品をみせたまえ。

 話はそれからだ。見れる状態にあるんだろう?」


「むむむ……わかったっすよ。ちょっと恥ずかしいっすけど……」

「心配するな。全く期待してないから」

「それはそれで嫌っす!」


 手元のパソコンから、彼の小説を検索にかけて読み上げる。

 タイトルは『異世界での或る若者の一生』……。

 ……なんかもうダメそう。すごくダメそう。

 



  〜10分後〜




「なるほど。だいたいわかった。

 人気がない理由がな」


 やっぱダメだった。


「速すぎィ!!!いや、マジで速すぎっす!

 いや、明らかに最後まで読んでないでしょ!流し見も流し見!

 一冊分ぐらいはあるっすよ俺の!そんなんで何がわかると!」


「馬鹿言うな。こんなの流し見でも十分に分かる。むしろ1分で分かった。

 残り9分は通し見して、ああ、やっぱダメだなあと確認作業をしてただけだ」


「何すかその読み方ぁ!

 聞く前よりよっぽどダメだった!ひどいっす!」


「別に私の答えが信頼ならないなら、言わないが?」


「あ、いえ、聞くっす!聞きたいっす!!稼いでるプロの意見を!

 さあさあ!さあさあ!」


 サーサーうるさいな。君は軍人かよ。


「ふむ。では教えてあげよう。

 君の作品が人気が出ない理由……それは!」


「そ、それはッ?」






「売りこみ力だ!」






 シーン。

 しばらく静寂がこだまする。



「それが、君の作品が人気ない理由であり、

 あるいは、人気作家と不人気作家の境目だろうな」



 数秒か、あるいは数十秒かのあと、火村くんが再稼働した。

 そんなに衝撃だったか?



「う……売りこみ力?

 え?小説の話っすよね?」


「勿論そうだ。

 『商人としての力』と言い換えてもいいぞ」

 

「いやいや……いやいや。なんか……普通に納得行かないんすが……。

 そんな、CM力みたいな……宣伝力というか、本当にそうなんすか?」


「何を言っている。私がしてるのは、小説の中身であり、書き方の話だ。

 CMなどは小説の外側の話だろう。そういう『宣伝』の話はしていない」


「せ、宣伝の話はしてない?中身の話?

 でも、売り込み力って……え、それ書き方の話なんすか?」


「勿論そうだとも……文章の書き方の話。文章力の話だ。

 『売るための文章力』が君には足りないのさ」


「う、売るための文章力?なんすかそれ?初めて聞いたっすよ!!!

 そんなもん必要なんすか?

 つーかそんなもん、そもそもあるんすか?

 小説っすよ?小説に!?」


「あるし、必要に決まっている。

 商品世界においては、タイトルや名前一つで、売り上げが何倍も左右されるのだからな。

 それを詳しく説明してもいいが、その前に……」


「?」


「そうだな……1つ勘違いを正しておこうか」


「勘違いすか?……俺が?」


「そうだ」


 又従兄弟である ……(といっても一回りは年下だが)目の前の男子高校生の質問に

 私は落ち着いた声で返すと、手元の電子タバコの煙を吐く。


 おっと、電子タバコといってもニコチン入りの規制品ではない。

 水にとかした水蒸気の無害タイプだ。お気に入りはストロベリー味だ。

 私は健康を大事にしているのだ。主にサプリとかで。


「確かに私は文章で食っている。まあ、売れてるといってもいいだろう。

 そして、安定して食うための知識もある。

 だが、私は『小説家ではない』」


 そう、私は『ウケ方』について語れる。

 語れるが……それは小説家としてではない。

 何故なら……。


「ええっ!文章で食ってるって言ったら、他にあるんすか?」


「高校生では知らないのも無理はないか……。

 よく聞きたまえ。私は、小説家ではない……


 『コピーライター』だ! 


 あの人はそこらへん、正確に伝えなかったようだな」



 そう、何故なら私は、【コピーライター】だからだ。




「コピー……ライター……?な!なんすかそれは!」


「知らないか。まあ、馴染みがないのは仕方ないな。

 コピーライターとは簡潔に言えば……そう、文章で売るプロのことだ。

 いい機会だから、ちょっと詳しく説明しよう」


 知らないのも無理はない。学生が認知する職業の中に、コピーライターはまず入るまい。

 そもそもコピーといったら、コピー(複写or印刷)しか発想しないような年代である。

 パクリ専門っすか!とか意味不明な事を言いかねない。

 なんでそんな逮捕直行みたいな職業を名乗らねばならんのか。


 あるいは、名前は知ってても、実際の仕事はよく分からんという人は多そうだしな。

 ”将来なりたい職業は、コピーライターです!”という学生……うむ。聞いたことが無いな。

 100人いても1人もいないだろう。


「そうだな……文章で飯を食う、といってもいくつかあるのだよ。

 確かに小説家というのは、それの代表格だろう。

 だが、他にも文章でくう職業はある」


「ふむふむ」


「その1つが、私のやっている『コピーライター』だ。

 チラシやポスター、広告文、セールスレター、あるいはメールマガジンやサイト文章などに手をいれる。

 彼らは、商品・事業・情報を、より拡散・集客し、より販売するために存在する。


 言うなれば『売るための文章のプロ』。


 それが、私、コピーライターだ」


 作業机の上に散らばった、いくつかのチラシを見やりながら答える。

 ちなみに、この場合のコピーとは、広告文、という意味合いである。

 コピー(広告文)を書くライター(執筆者)、ゆえにコピーライターだ。


 ちなみに他にも、文章で飯を食う奴らには

 情報の伝達・判断を扱うプロである『記者』や『批評家』。

 ノウハウを伝えるプロである『実用書作家』などがいる。


「あーなるほど。チラシとか売り文句を考える人のことなんすね!

 謎が解けたっす!意識してなかったけど、そんな職業もあるんすね!」


「まあ、コピーライターが表に……作品とともに名前を出すことはほぼないからな。

 我々の仕事は基本的に代筆だ。完全な裏方業務だな。

 それに数も多くはないしな」


 そうだ、京都行こう……○○作。うむ、ぶち壊しだな。


「へーそうなんすね……ってあれ?

 じゃあ、さっきはウケ方を語れるとか言ってたっすけど、それはなんなんすか?

 人気小説家の知り合いがいるとか?」


「ん?いや、私には特別親しいのはいないな。

 同じ文章で飯を食うもの同士とはいえ、小説家とコピーライターでは生息域が明確に違う。

 ともすれば究極の自己満足を追求する、いわば職人としての在り方に近い小説家と、

 ひたすら市場、他者目線を追求する、いわば商人としての在り方そのものであるコピーライターでは

 余りにも活動場所が異なるゆえな。

 片やサブカル世界、片やビジネスの世界だ。

 あと、お客も違うしな。小説家のお客は一般人だろう。

 コピーライターは、経営者や個人事業主が相手がほとんどだ」


「はーなるほど」


「それに、小説家は金を気にせずやってるやつも多いだろうが

 コピーライターは完全に、金金金だ。金を考えないなんてありえん」


「なんつーか、違うっていうよりは……真逆!って感じっすね!

 同じ文章で食ってるのに!」


「まあ、そうだな……。そういうとこだけみれば、結構真逆だろうよ」


 スパー……と電子タバコをふかす。


「なるほど!……ってあれ?でもそうすると、氷室姉さんがウケ方とやらを語るってことすよね?

 じゃあ、それって、おかしくないすか?

 つか、おかしいっしょ!」


「ほう、なぜだ?」


「いや、その……それって、コピーライターとしてのウケ方、っすよね?」


「そうだな」


「で、でも、今の話だと、小説家とコピーライターって、真逆って話じゃないすか!

 つーことは、こういっちゃなんすけど、余り役に立たないのでは……?」



「ふむ……そう思うか。では、そんな君に言いたいことがある」


「な、なんすか!」




「だから君はダメなのだッ!」




「はぁうッ!ひどぅい!」




「酷くない。真逆といったのは、あくまで生息域や、メジャーな在り方の話だ。

 成功するための方法というなら、私はむしろ、突き詰めれば非常に近いとすら思っているぞ」


「ええッ、小説家とコピーライターがっすか?」


「そうだ。一流の小説家と一流のコピーライターの技法は

 『非常に近い』。これは断言できる。

 私は小説の技法も、セールスの技法も何十冊も読んだし参加した。

 小説技法を調べれば調べるほど、コピーライターとして成功する技法と

 ほぼ一緒だと思わざるを得ない」


 まさしく。コピーライターと小説技法の本を交互に読むとびっくりするぞ。

 あんまりにも同じこと言ってるからな。

 目的が違うから、細かい所は違うが、大筋は非常に似ている。

 参考書を取り替えても全く問題ないほどだ。


「はえ~……そうなんすか」


「特に『人気を取る』という目的の場合はほとんど一緒だぞ。

 いや、むしろコピーライター技法のほうが、これに関しては明確に上をいくだろう。

 なぜなら、売るため、そのために集中した技法だからな」


「人気取りを考えたら、むしろコピーライター技法が上!?」



「そうだ。コピーライターの技法とは『より集客し、より販売する文章技法』だ。

 だが、この方法が、小説にとって本当に無縁といえるのか?

 人気作家になる、というのは、より集客し、より販売される作品を作れる作家になるということじゃないのか?

 まあ、ネット小説だと無料だから販売というより閲覧だが」


 ビシィっと、タバコを挟んだ指を突きつけ、さらに言葉を続ける。


「う……確かに。人気になるってのは、作品が売れるってこととほぼ同じっす……」


「そうだろう?それはつまり、コピーライターの売れるためのテクニックが、

 そのまま小説にも使えるということに他ならない。そしてだ」


 一息おいて、話を続ける。


「良い小説を書くためには、ある程度の、基礎知識やテクニック、パターンがあるだろう?

 起承転結という言葉を知らん作家がいるか?

 プロットが何か分からん作家がいるか?

 話には山や谷が必要で、主人公には見せ場が必要……この程度はパターンだろう?

 ストーリーには、基礎となる型があるんだ。

 それを知らずに書く作家がいたらどうおもう?コケるのが目に見えてるだろう?」


「確かにあるっすね……」


「これと同じように、

 『集客する方法』や『売る方法』にも、ちゃんと『基礎』や『パターン』は存在する。

 だが、それを意識的に踏まえている作家はとても少ない。君も知らんだろう」


「いやそうっすけど……。だってしょうがないっすよ。

 俺は、コピーライターとやらも、今日始めて知ったんすから。

 そんな知識なんてなおさら知ってるわけもないっす」


「まあ、たしかにな。仕方がない。

 私がいうのもなんだが、コピーライトの手法は世に出回りにくいんだ。

 そもそも大半の人は『売る方法』を軽視してるというのもある。

 『創る』が大事で、さもそこさえできれば何も問題はないかのごとく。

 君もその手じゃないのか?」


「ギクッ……」


 あ、こいつ。こいつ自身もそう思ってたな?

 まあ、無理もないか。日本は創作重視の文化だからな。


 


「さらにいえば『売る文章の書き方の知識』を得るのが難しいからな。

 漫画の描き方や小説の書き方は、素人や一般人でも書いてる人はたくさんいるが、

 セールス文章の書き方なんて、一般人が書いてるのはほとんどないだろう。

 本屋にあるのも、良著と呼べるのは少ない。

 だが、逆にいえば、ここを少しでも学べば、大きなアドバンテージになる……ということでもある!」


「おおッ!」


「あえていおう!集客や販売をまともに勉強してる人なんか、ほとんどいない!

 ゆえに、少しでも学べば一気に突き放せるし、成長できると」


 別に小説家にいないのではなく、小説家関係なくほとんどいない。

 フリーランスや経営者ですら、そんなにいなかったりする。




 大半の人が独学(という名の勘)でやってる分野、それが集客と販売だ。






「マジすか!俺、今更テンションあがってきたっす!」

「今までは違ったのか……」


 それとも、こっからさらに上がるのか。

 松岡◯造みたいな子だな。テニスもやってるし。

 そんな呆れを内心でとめおく。




「あ、でも、ちょっとだけ気になることがあるっすけど……!」

「なんだ。言ってみたまえ」


「今更っすけど、なんか『人気欲しい人気欲しい』って

 あからさまなのって、ダサくないっすかね?

 浅ましいっつーか、なんか、そういうふうに、思われないっすか?

 そういう『全力で人気取りにいくぞー!』って勉強してる事自体が、

 なんつーか……ほら、あれっすよ。

 やっぱ、小説家っていうのは、孤高というか……。

 『人気よりも質』を目指してなんぼというか……」


「なんだそんなことか」

「そんなことって……」


「いいかい火村君……。よく覚えておきたまえ。

 小説の世界というのは『売れた数=権威』だッ!」


「はぁうッ!」


「小説に『売れてないけど、これは分かる人には分かる素晴らしい作品だから、1冊100万円』なんて芸術的な評価をされたことがあったか?

 一度もない。

 一度もだ。

 たったの一度もない。 

 小説価値の指標は売れた数だけだ。

 小説の世界では『売れてない奴に、発言権などない』」


「ぐうう……!」


 常々不思議なのだ。小説ってブランド価値で値段上がることはない。

 売れた数だけが正義の商品なのに、分かる人だけ分かればいい、をブランドにしたがるんだろう。

 そんなブランドが存在したことなど、小説には一度もないのに。


「いいかい。現実を見たまえ!

 ノーベル賞候補が本出しても、今年デビューのアマチュアが本をだしても同じ『1500円』だ。

 ブランドによる価格の差などない!

 だからあとは、売れた数だけだ。つまり、人気が全てなのだ!」


「ぐはぁっ!

 ……いや、言われてみればそうっていうか、知ってたけど!

 知ってたからこそ、気づきたくなかった!」


「現実から目を逸らしても、勝てる事は永久にないぞ。

 『売れた数でしか評価されない現実』からは逃げられん」


「追い打ちやめて!」



「だから、むしろ全力で人気を取りに行け。

 プロでも3000部すら売れないような小説家に、なんらかの発言力があると思うか?

 ネット小説でも、全くポイントがない作者に、発言力があるだろうか?」


「ほ、ほぼないっす……」


「そう。皆無だ。皆無。

 確かに、人気を取るというと浅ましくみる人がいるかもしれん。

 だが、彼らは、だからといって、人気のない作品を格好良くみてくれることはない。

 むしろ『雑魚が何いってんの?』みたくみるだろう」

 

「ううっ……!

 い、いわれてみれば確かに……!」


「あいつらがいう、人気のない作家とかでも、

 一般作家からみれば、上の下だったり、上の中だったりが大半だぞ。

 上の上ほど売れてないっていうだけで。

 ワンピースを嫌って、マガジン中堅漫画を評価するみたいな……

 どっちも上クラスだろ」


「あう……!」


「だから人気は積極的に取りに行け。

 何がみっともないものか。

 大体、一番ダサいのは人気を欲しがることじゃない。

 『本音では人気がほしいくせに、表では人気いらないというヤツ』だ。

 これが一番ダサい。

 彼女実は超欲しいやつが、表でいらないと言ってるようなもんだな」


「なんか胸が痛いからそこらへんで!

 本音!本音はほしいっすよ!人気欲しい!」


 まあ、この子のは知ってた。

 そもそも開幕から飛び込んできたぐらいだしな。


「というわけで、積極的に人気はとりにいけ。

 モチベーションの維持にも繋がるしな。

 まあ、シンプルに考えれば、人気はあったほうが楽しい。

 楽しい方にいけ。趣味なら尚更な。それだけの話だ」


「な、なるほどっす……!」



「それにだ……そもそも

 『良い作品作り』にも、売り込みの技法はいるぞ」


 集客集客というと、そこしか見られないのもあれだから忠告しとこう。

 コピーライターの技法は、作品の質そのものにも影響する。

 

「えっ……。作品自体にも!?なぜっすか!!!」


「簡単だ。集客・販売に通じるコピーライトの技法というのは、

 ただ目立つための技法などではない。それは浅い理解だ。

 本質は

 『その商品を手にとる前に、良さそう、面白そう、と思ってもらうための技法』だ。

 『ワクワクさせるための技法』といってもいいぞ。つまり……」


「つまり?」


「『ワクワクさせるための技法』を一切無視してる作者が、どれだけのものをかけるんだ?

 連載とは、その連続だろう。

 『面白そう』が書けない作者に『面白い』話がかけるのか?

 ありえない!と断言しよう」


「うぐっ!た、確かに

 『手に取る前にワクワクさせる技法』と考えると……!

 急に、小説の中身にも影響してくる技法のように見えてきたっす!」


「見えてくるじゃなくて、実際一緒なのだ。

 商売において販売者を魅力的に見せる手法は、

 小説においてキャラクターを魅力的に見せる手法と同じであるし。

 チラシで『引き』を連続させて最後まで読ませるテクニックは、

 もちろん小説でも使うに決まってるな。

 さらに『これ面白そうな商品だな』と興味をひくテクニックは

 小説で使わない作者がいるのか?

 また『ありきたりな商品だ』と思われないための戦略は

 小説でも全く同じじゃないのか?

 ざっとあげるだけでも、これだけ共通点があるぞ」


 

 特に、面白そう、と思われることは非常に大事だ。

 これこそが、集客の核でもある。

 同時に、小説の核でもあるだろう。

 

 面白そう、と思わせることができないけど。

 読んでくれたら面白いですよ。

 

 そんなのは成立しない。

 「次の話が待ち遠しい!」という状態にできない作者に。

 面白い話は書けるんだろうか?

 私は書けるとは思わない。



「むむむ……確かに!っす!」


「納得してくたようで何よりだよ」


 

 作品の中身にも影響するということが。




「それに、今後の時代にも繋がる」

「時代?」


「今、出版業界に波がきている。いや、なっている。

 電子出版という波がな。作家一人で、本を形にできる時代がきたのだ。

 この波が出版業界をさらに覆うとどうなると思う?」


「どう……なるんすか?」



「簡単だよ。今まで『作る』だけだった作家に

 『売る』力も求められるようになり、

 それが出来る作家のみが生き残るようになるという話だ。

 いや……既にそうなっている。

 出版社や編集の力は落ち、作家単体の力が求められている。

 『作る+売る』の足し算で作家は測られるようになり、

 自然、売れない作者は、消えていくことになる。

 もはや、小説家の仕事は書くだけである、

 ウケるかどうかは、編集が頑張ることだ、

 という時代は終わりを告げつつある。

 作者自身が、ウケ方を身につける時代だ」



「時代が……変わる。

 売る力がないと……生き残れない?」


「そうだ。目ざとい作家は、既に売る力を積極的に

 身につけつつあるぞ。それが求められていると知ってるからだ。

 故に尚更、私は売る力を身に着けたほうがいいと思うぞ」


「な、なるほどっす!」


 マジで今、編集者の存在価値が問われてるからな。

 作者が全部売り込みも売り方も手配するのかというような時代だ。

 下手すると、集客すら作家だ。

 作家が集めて、作家が書き、作家が告知し、作家が届ける。

 そういう時代になりつつある。

 

 出版社のネームバリューも強烈に落ちている。

 大手が出したから買う、という時代ではもう、間違いなくない。



「そしてさらにいうなら、私は、ストーリーの作り方より先に、

 広告文の作り方の文章や集客の理論を

 先に学んだ方がいいとすら思っている」


「ええぇ?マジッすか?」


「どうPRするか?を考えて、

 考えた挙句に『根本がウケない』とかいう結論だと

 ストーリー書いたり考えたりの労力が全部ムダになるじゃないか。

 どうPRするかまで考えてから、話を書いたほうが楽だし、

 そもそも、適切な商品作りってのは、そうやるんだ。

 売り方や売り先まで考えてから、その後に、商品を作るんだよ」


「売り方や売り先を考えてから、売ったほうが楽……なるほど」


「かき氷を売るのに、夏うるか冬うるか考えない。

 あるいは、海のそばでうるのか、田舎の路上で売るのか考えない。

 冬に田舎の路上で売っても、これは商品以前の話だろう。

 根本の考えから崩壊している。

 ここに至ってから、どうPRするか、を考えるなんて遅すぎるだろう」


「た、確かに……」


「それに、反応がもらえたほうが楽しいだろう?

 初心者なら尚更だ。

 君は無反応でも書き続けられるのか?」


「いや〜正直な話、続けられないっす!

 だから、今日ここに来たっすよ!

 反応欲しいっす!人気欲しいっすよ!」


「だろうな。だから、売り方を勉強してからやったほうがいいぞ。

 それに、最初いらんとかいってても、

 作者というのは贅沢なものだ。最初は自己満足のためにといいつつも、

 形になったら反応が気になるものだ。

 よく出来たと思えば思うほど、人に見てもらい、反応が欲しくなるものさ。

 しかし、自己満足……

 美しい作品や、綺麗な作品、そのようなものを

 第一にと考えた結果、起こる不幸がある」


「綺麗さを優先すると起こる不幸!な……なんすか!気になるっす!」


「それは……『そもそも読まれない』という不幸。

 そしてそれを……『読まれた上での反応』と勘違いする不幸だ!!」


「ぐあぁっ!!!!」


「その結果、何が起きるか?

 『こんなに反応がないなんて……』

 『俺がバカにしてるあの作品より反応が弱いなんて……』

 『俺は才能がないんでは?』

 『いっそ引退しようかな……』

 『書くゆえに苦しまねばならぬ!こんなに苦しいなら……創作などいらぬ!』

  といった現象だな」


「おもくそ身に覚えが!」


「だが、違う。違うのだよ。そういう作品の大半は、

 面白いかどうか以前に、まず読まれていないのだ。

 だが、書ききることだけを重視してきた結果なら、当然の結果だ。

 落ち込む必要は本来ないのだ」


「そ、そうなんすか!?」


「そうだ。だってそうだろう?

 そんな意識もしてなければ、勉強もしてないんだから。

 意識も勉強もしてない……。

 つまり勘と運でしか当たらないんだから、そりゃ外れて当然だろう」


「なるほど……」


「だが、コピーライターは違う。

 コピーライターは『読まれる事』を最優先に書き、学んでいる。

 反応を取ることこそ第一の目的だ。

 もし、その『読まれるための技術』を小説家が会得したなら……」


「たくさん反応が取れるってことっすね!

 いや、面白さと読まれやすさが噛み合って最強なことに!」


「そうだ。『良い商品』そこに『売る文章』ががっちりハマった時、

 どれくらい注目度が跳ね上がるか知っているか?」


「いや、知らないっす。2倍とかすか?」


「10倍以上は軽く変わるぞ。これはリアルの企業商品などでもそうだ。

 中身同じで『売れる名前』にした途端、売り上げが何倍何十倍も変わった例はたくさんある。

 100倍以上変わった例もあるぞ。中身を一切変えずに、名前だけ変えて、だ」



「名前変えただけで、100倍以上!?嘘っすよね!!!」



「嘘ではない。これは極端な例だがな。

 まあ嘘だと思うなら、あとで『お水のいらないうどん』などで検索したまえ。

 あと当然だが、単に目立ったり流行りに乗っかれば

 いいってもんではないからな。『売りこみ力』とはそんな単純なもんではない。

 また、タイトルだけに関わるものでもないぞ。

 私の本分はチラシやセールスレターの製作だしな。タイトルだけ考えることはレアだ」


「はえ~……。まじっすか」


「そして大事なことだが、この理論は当然小説にもいかせる。

 全く考えてないのと比べたら、まさしく数倍数十倍はPV変わったりもするだろうよ。

 私が昔小説を書いた時も、大分この売る文章の理論を使わせてもらったものだ」


「ええッ!マジっすか!書いてたことあるんすか!」


「大分前の話だがな」


「実は小説の実績が!?

 すいません氷室姉さん!いや師匠!

 改めてそれを……『売るための文章術』を教えてほしいっす!」


「ふむ……どうするかな」


「この通りっす!」


 ジャンピング土下座する火村君。

 凄まじく綺麗な着地だった。いっそ音がしないほどに。

 ちょっと引いた。


「……ふむ。よかろう。今度から、教えようじゃないか。

 コピーライターとして、売るための文章術をな。

 だが、その呼び名を改めたらな」


「なんでですか!」


「なんでもだ」


 だってなんか偉そうじゃないか。

 私からしたら弟みたいなもんなのに。

 あと、師匠って響きには、なんか年いってる感じがしなくもないし。

 

 私は若いのだ。



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