010:魔王領の話
今日は『わたくし』が帰ってきたから魔王領の最新情報をお伝えしようと思う。
正確に言えば『バルバトス魔王領』となるんだけど、今連合国で一番ナウでイケてるのがこの領地っていうか連合国の首都『カリヤス』だ。なんたって内地になった上に私が作った、あるいは私のレシピを応用して生産された品物が一同に集うのだから。交易地としては『エイリーズ』だが、盛り上がりはやはり『カリヤス』だね。もともと領都であることもさながら前線から離れた内地であること、また魔族という新しいフィールドであることから決定した。というか議事堂代わりに魔王城使ってると言ったほうがいいかな。
やっぱねぇ、エルフやドワーフと違って魔族は居心地のいい環境ってのが在るから、こっちのが都合がいいのだ。
で、いまや世界屈指の安全地帯かつ人族魔族が融合した文明地として栄えている。ぶっちゃけ賑わいだけなら大魔王の城よりイケてるんじゃないかな? 見たこと無いけど。だが街の様子を見れば案外間違いじゃないって分かるとおもう。住民は増える一方で、夜も場所によるけど騒がしく、もはや不夜城もかくやという賑わいを見せているんだ。
集まる者は商人は当然のこと、労働者、貴族はもとより『文化人』が集結しているのが大きい。特に哲学者といった認知心理学者が集まっているのが注目すべき点だろう。彼らは本当に平和じゃないと活動できない人種だからね。今正に飯のタネを奪う奪われんってときに『命とは一体』とかつぶやいてるやつの面倒なんて誰も見ないよ。まぁほっとくと新興宗教立ち上げて扇動始めたりする者もいたりするから、重点注意は必要なんだけれどね。重要なのは思考のための学問が安全にできる環境があること。これは世界的にも貴重なわけだ。
特に私のような『魔物』という絶滅不可能な脅威が存在する以上は特にね。
そんなわけで今正に空前の景気が押し寄せており、だれしもが嬉しい悲鳴を上げている魔王領。結果として身元の分からぬ人も多く出入りしていて、治安が問題視されてたりするのだけれど……そこはハウランドの辣腕が映える所。我等が暗躍部隊SHINOBIの暗殺部門KUNOICHIが仕事をしているらしいよ。退魔とかするよ。きわどいよ。
まぁ前提はおいといて、ここからは『わたくし』の目線で書くとしよう。
魔法で整備された街道をひた走る高速魔馬車に揺られること三日、魔王領中枢の都市に辿り着いた私達は魔王の娘ちゃんことシュテルンちゃんの手厚い歓迎を受けることと成った。わたくしはアイリスちゃんに抱えられて城の応接間に通される。
「御機嫌ようシュテルン様、お加減はいかが」
「ええ御機嫌ようアイリス様。とっても良くってよ、なんたってお友達が来る日ですもの」
そういって瀟洒にカーテシーをする彼女の角はゆるくカーブしたルビーの角を持っており、漆黒の濡髪は肩口にかかり先端がくるりと巻いている。黒眼白瞳に真っ白な肌は典型的な魔族といったところか。また今日のシュテルンちゃんは胸元に一輪の青い花をあしらった、涼しげなレース地ドレスを纏っている。マジでハウランドの面影がまったくないんだが、何処を受け継いだんでしょうか。わたくしはそれが知りたい、知り過ぎたい。
『ごきげんようでつわ、しゅてるんさま』
「まぁ! ミーティもなんだか可愛らしくなってしまわれて……一体どうされたのですか?」
『ほごしゃでつわね』
そういいつつ、なでなでされる。粘体だけれど表面は硬化しているので、なで心地はつるつるひんやり最高にきもちいい。この暑さの中でわたくしを抱っこしていれば、かなり涼むことが出来るだろう。でもそれだとお腹が冷える悲しみ。この世界の婦女子はコルセットなんぞつけて食が細いと来た。不健康極まりないからちょっと心配なんだ。
「アイリス様ばかりずるいですわ、私も抱っこさせてくださいましな」
「ふふふ、ではシュテルン様もどうぞ」
「では失礼致しまして……はぅぅ~」
そう言ってわたくしはぬいぐるみのようにぎゅうと抱きしめられた。昔っからこの子は私をもみゅもみゅするのが好きだからしかたない。そもそもぬいぐるみが好きなのだから是非もないよね。
「ふわぁ……たまりませんの」
何処か恍惚としてキラキラした彼女は何とも表に出せないユルユルした顔になる。何時もシャッキリした表情とはまるきり変わっているが仕方ない。私の戦闘スペックは災厄級だが、触り心地も人をダメにするソファ級だからね。ちなみに彼女はアイリスちゃんとことなり豊満である。何がとは言わないが豊満である。
「それと新作のドレスを持ってきてよ。お直しをするから早く試着しましょう」
「有難うございます。アイリス様のドレス、本当に楽しみにしていてよ♪」
『そのようすだと、またはうらんどがふあふあよういしたのでつか?』
「そうなのです……まったく、お父様ったら乙女心がまるでわかっていないのだから!」
ぷんぷん怒る彼女は、その二つ名である『氷帝』とは打って変わって表情をくるくる帰る。彼女はオンとオフがはっきり分かれているのだ。
「では急ぎ針子を用意しましょう。衣装室においでくださいまし。早くみたいわぁ、アイリス様のドレス! それだけで期待が高まります!」
やんわり微笑む彼女は見た目相応の女の子といった所で、わたくしは『あー、女の子ってこういう感じなんだなー』とぼんやり考えていた。いやボディは女の子だけど魂は男だからね? そういうファッションとか機微には疎いっていうか、興味あんまないんだよ。っていうかスライムに衣服のセンスを求めないで? だがそんな事言うと烈火のごとく怒られるから、賢いわたくしは口をつむぐ。衣装部屋に移動するとすぐさま荷物が紐解かれいくつかのドレスが姿を表した。
「今年の夏は果物を意識してみました。マスカの実とクレフの実、それぞれをモチーフにデザインしてみましたの」
「爽やかな碧と、深い紫が美しいですわ……」
『ほわぁー』
取り出されたものは碧のエンパイアドレスと、紫のマーメイドドレスだ。葡萄のような果実であるマスカとクレフが、シャンパンに踊るようにランダムにあしらわれている。お洒落に興味のないわたくしでも、一等素晴らしいことはわかった。逆に言えばなんかすげぇしかわからない。私の美的感覚はこう、アレだ。スライムさんだからね。仕方ないね。
「早速試着を――」
「姫様、一度検品を」
「むう……仕方ありませんわね」
魔族側メイドの一人がドレスに検出魔法をかける。これはアイリスちゃんを信用していないと言うよりは、二人を貶しめんとする悪意の検出と言ったほうが良い。アイリスちゃんとシュテルンちゃんの間にわだかまりはないが、それを壊そうとする不届き者は存在しているんだ。たとえばここに小さな針が仕込まれて、その針に毒が塗り込められていれば……それだけでこの和平関係は破綻しかねない。
とはいえだ。この旅の中ですでにわたくしがチェックを済ませているので、万が一にもことが起こることはない。
おこるとすれば魔族側の対応だがそれこそありえない。シュテルンちゃんに侍る侍女たちはその道のプロ、史上最強にして最高のメイド達だ。彼女たちは要人警護を可能とする戦力を保持している。そう、バトルメイドなんだよ彼女たち! そのスカートのしたには仕込み武器を数多く備えているんだよ……!! 浪漫溢れすぎてヤバイ。
実際彼女たちは澄ました顔してわたくしにも注意を向けているから、本当に出来たメイドだと思う。そうそう、それでいいんだよ。魔物は警戒して悪いことは無い。ましてや災厄級ともなればすぐさま殺すぐらいの気概でなくては。まぁ彼女たち程度で殺せるはずもないんだけど、警戒しない理由にはならない。
こうして検品が終わったドレスを二人が身にまとう。
アイリスちゃんは碧のエンパイア。肩を大きく出した攻めるスタイルだが、そこに決していやらしさはない。かくあるべしと収まった慎ましやでありつつ、しかし存在感が無いわけではない。まるで籠に乗る果実のように、つい手を出してしまいそうになる魅力が有る。
対してシュテルンちゃんは紫のマーメイドだ。肩口は細やかなレースで包まれており、若干エンパイアのようになっている。ただし胸元から下はゆったりではなく体系にあった形になっていて、彼女のボディラインの艶めかしさが何とも際立っている。安産型って良いよね。こちらはシャンパングラスにおどる果実のように、硝子のビーズが散りばめられていて、目で楽しむ飲み物のような感覚がある。そして豊かだ。何がとは言わないが豊かだ。
「流石ですわね。いい仕上がりです」
「ふふふ、当然でしてよ」
『ふたりともおきれいでつわね』
「「でしょう?」」
声を合わせた二人はころころと笑う。それに護衛のメイドたちも鋼の面持ちをゆるくさせていたので、彼女たちも楽しめているようだ。その後も姦しく騒ぎながら、他のドレスも試着していく。何とも目麗しいのでわたくしはうむうむ頷きながら眺めていた。目麗しいしかわからんのだけれど。
眺めていたら、ふいに『ぞくり』とした感覚がコアを震わせた。これでも災厄級、1コアとはいえそこらの騎士に遅れを取ることはない――そのはずのわたくしが、怯えを? 一体何がと思えば、二人が笑顔で此方を見ていたのだ。
「そう言えば――ミーティの服はそのままですわね」
『は、はい? アリシアさまをこぴーしたときのままでつわ』
具体的にはデフォルメされたドレスアーマー姿だ。当時着ていた衣装をそのまま再現してしまったという形となる。
「それは少し寂しいですわね。アリシア様の模倣なのはわかりますが、だからこそもっと着飾るべきですわ」
『まって、まって。ひとのかたちをかえるのってむっかしいのでつわ』
「あら、裸にはなれるでしょう?」
『え、まぁ、それは……はい』
そう、正確に模倣したからこのドレスアーマーは脱げる。つまり裸になれるというわけで……アリシアちゃんがパンパンと手を叩くと、わたくしがチェックしていなかった小さなトランクが運び込まれてきた。もうこの時点で嫌な予感しかしないよね。
『あの、あの、あの……』
「前も同じような事がございましたから、サイズを記録していまして。今回は特別に誂えたのです。着てくださいまし♪」
「それは名案ですわね♪」
『ひええ』
そう言って取り出されたのは、朱い小さな果実をあしらった、おそろいのミニチュアドレスだ。フリフリは控えめだが、ふわふわもこもこなドレスである……おいまて、着ろというのか、これを。にじり寄る二人に、私はテーブルの上で後退りした。でも狭いテーブルだ、すぐに端っこに追いやられてしまう。
『ま、まってくだたい! わたくしきなくてもよくてよ!』
「問答無用ですわ、シュテルン様!」
「任されました!」
『ひゃあ!』
シュテルンちゃんが中空にルーンを書いて魔法を行使する。拘束の魔法だが、しかし
「甘くってよ」
『ふぇ?!』
ジャンプしたところをアイリスちゃんに捕まってしまった。無残にぎゅうされたわたくしは怪しく笑う二人に捕獲されてしまったのだ。
「さあ、お着替えの時間ですわ」
「覚悟してくださいませ」
『ひぃー!』
その後滅茶苦茶着せ替え人形にさせられた。わたくし乙。よくがんばったわたくし。着替えさせられるたびにポーズ取らされたりしてほんとうに気疲れすごかった。そもそもスライムになぜ服を着せようとするのか。それがわからない。ただの粘体じゃん? お前それに服て……いや分かるけど。でもわたくしはわたくしじゃん……? 虚無が心を支配してエゴが崩れかけるも此処はぐっと堪えるわたくし。わたくしはえらいとおもう。
「夜会では此方が宜しいのではなくて?」
「いえ、おそろいの方が統一感があってよ」
「一理ありますが、ミーティの可愛らしさは此方のほうが――」
「なら此方を――」
『ゔぁー』
そんなわけで微笑ましいファッションショーが繰り広げられて、なごやかーな空気が流れた。ホンマに夜会にでるんかい。わたくしには知識はあっても作法も何も知らないのだが。そんな事を口にしたらこの娘ズは囃し立ててくる。
「今のミーティならそのままで宜しい……いや、今がいいのですわ」
「ですわね。自由に振る舞ってくださいまし」
『えぇぇ……』
待ってほしい。魔王領の夜会っつったら格式で言えば上の中ぐらいに位置するものだ。そんな場所にズブの素人をつっこむか、このサドっ娘どもめ! 常識的に考えてありえんだろう! そう思っていた時期がわたくしにもありました。
『……』
わたくしは淡いピンク色のワンピースドレスを着て、夜会の最中に佇んでいた。お人形みたいなちみっこにどうしろっていうんだ。頼みの綱のアイリスちゃんとシュテルンちゃんは社交の真っ最中で構うどころではない。大切なことなのでもう一度いうが、どうしろっていうんだ!
こうなってはもうヤケ食いするしかない……わたくしははしたないと理解した上で料理のテーブルの端に乗り、小分けされた料理を順にもっくもっくと食べ始めた。勿論フォークなんぞ使わない。手づかみでもちもちだ。っていうか手から吸収だ。君は衝撃的光景を目にしたからSANチェックな。
でもまぁガチのスライムモードなら10秒たたずにで完食だが、それをしたら真心込めて作ってくれた料理人の人たちに申し訳がない。料理は味わってこそ料理なのでゆっくり溶かしつくすことにする。もちろんお皿はお残しですよ?
『ふみゅ、おさかなおいしいでつわ』
川魚を水煮にしたものだが、ちゃんと出汁の味がしてなかなかイケる。泥臭さもないところに技が光るね。これは[日本酒]とか合うんじゃないかな。川魚と言えば塩焼きが定番だが、これはこれで良き良き。
『むみゅ、おやさいしゃきしゃきでつの』
小皿のサラダはなんというかなぁ、[大根]に似た根菜にさっぱりした酸味のあるソースがかけられている。しゃくしゃく、ぽきぽきとした触感がとても楽しいひと品だ。でも夜会の食べ物としては食べづらいんじゃないかなぁ……でも美味しいんだよねぇ。
『んみゅ、クッキーさくさくでつわね~』
[バター]……此方で言うニュークもりもりのクッキーは、ふんだんに使っているだけにさくりさくさくと食感が楽しい。また砂糖でゴリゴリに甘いというわけでもなく、小麦粉本来の旨味もちゃんと感じられる良い品だ。またジャムを載せた花柄の物もありこちらもこちらでまた目に楽しく、口も楽しい。うむ、良き良き。
そんな事をしていたら何となく視線を感じたので振り返ると、複数の人々が此方を伺っているのがわかった。はてな、何か用事だろうか。コテンと首を傾げると、複数人が口元を抑えプルプル震えた。なんだ、こちとら無礼を承知なのだ今更笑われたとて何のダメージにもならんぞ。
そう思っていた時期が(略)。
ふいに周囲がざわつき、何だと思ったら一人の魔族青年が料理を片手にやって来たのである。
「小さなレディ、此方もいかがですか?」
『ほえ?』
そういって差し出されたのは小さな肉の串焼きだ。わたくしは肉の皿と青年を見上げて、ふむと逡巡したあと『よいせ』と手を伸ばしてもっきゅもっきゅ食べ始めた。もっきゅんと飲み込むとわたくしは立ち上がって、下手っぴながらカーテシーでお礼をした。
『ありがとうございまつ。おいしいでつわ』
「ッ~~!」
青年は顔を赤く染めて行ってしまった。はて、どういうことだろう……そう思ったら次々と私のもとに料理を運ぶ列ができあがってしまったよ。紳士淑女、種族を問わずだ。
「此方もどうでしょう?」
「美味しいお菓子は如何?」
「たんとめしあがれ」
『うぃむっしゅ、ありがとうございまつ』
そうしてお辞儀をするとなんでか嬉しそうに皆去っていくのだ……一体なんだろうとわたくしは思っていたが、私ならわかる。
これ『餌付け』だわ……。
可愛くモキュモキュ食べるのが可愛らしくて列に成っていたのだよ! お前ら社交とかしろよ……そう思わないでもないが、アイリスちゃんを素地とした私は実際美少女である。それがデフォルメされたわたくしともなれば、『動く可愛い』そのものだ。
そりゃ群がるわ。私でも群がるわ。そんなわけで鍔迫り合いの中にオアシスめいたほっこり空間が出来上がったわけである。いやーわたくし大満足、このまま素晴らしい一日が終わるのかー等と思っていたらわたくしは見てしまったのだ。
それは武器、正しくは暗器を携帯する無粋な男だ。
どうして入り口の検問を通過できたのか? 勿論体内に魔法的な仕込み暗器を組み込んだから。その上で余剰魔力はスーツの隠蔽の魔法で隠しているな……こりゃ大魔法レベルの使い手が絡んでるな。全く面倒なことをしてくれる。
『ちつれい、ごようができてよ』
「そうなのですか……それは残念な」
『すぐすみまちてよ。すこしおまちくだたい』
「え、はい」
あーんしようとしていたレディを置いて、わたくしはとんとテーブルからおりて、とててててーと会場を走った。それが何とも言えず可愛らしく、微笑ましい視線を幾つも感じる。
ただ申し訳ないがこれから起こるのは修羅場だってこと。まぁわたくしの愛らしさで相殺されるので全く問題ないだろう。たぶん。おそらく。めいびい。
『おにいたま、おにいたま。おまちになって』
ちらりと此方を見たが、無視して男は歩み進んでいく。あーあ、無視しないほうが良かったのにとわたくしは思うのだが、気持ちは言葉にしないと伝わらないからね。
『えい』
「っ?!」
わたくしはとてとて近づいて男をぽこんと殴った。その瞬間ビリィと音を立てて衣装が弾け飛んだ。
「キャーーー!!」
「変態、変態ですわ!!!」
「貴様なんという性癖を!!」
わたくしの最高位アンチマジックを食らって、魔法のかかった衣装は見事解体された。結果ボロを纏う男はパンイチになったのだ。動揺する男をすぐさま粘体で巻取り拘束すると、騒ぎを聞きつけた衛兵たちがやって来た。
「一体何事ですか!」
『わたくしはミーディアム。どくしゅのまほうをもつ、あんさつしゃをとらえまちた』
「なんですと……?!」
『あ、おててでさわらないように。どくがまわりまつわ』
「承知いたしました、ミーディアム様。おい、ロープと革手袋を」
「は、離せ!」
『うるさいでつの』
猿ぐつわのように口を塞ぐ間に、あっという間に男は拘束されて連れ出されてしまった。あとは……うん、仲間も居ないようだ。バカなやつめ、わたくしの目をかいくぐろうなど百年速いわ。
『みなたまおさわがせしまちた! どうぞおたのちみくだたい!』
四方に礼をすると、わたくしはとてててーとまた元のテーブルに戻っていく。そして待っていたレディのまえで、にっこり笑顔で口を開けるのだった。
「あ、あの……私ミーディアム様と知らず……」
『そんなことよりおりょうりたべたいでつ! あーんしてくだたいまち』
「う、は、はい……」
若干緊張気味のレディはプリンを掬いとり、わたくしにたべさせる。
『ふぁー……あまいのでつわ、おいしいのでつわ♪』
ふにふにとほっぺに手を当てて身を捩ると、レディが小さく「かわいい……」と呟くのを聞き逃さない。なのでわたくしはもっと食べたいとねだり、長蛇の列を捌いていくのだった。後にアイリスちゃんとシュテルンちゃんに『ずるい』と言われたので、そちらからも滅茶苦茶あーんしてもらったけれどな。
危険もあったが結局はほんわかしつつ、魔族領のメインイベントは終わった。その日の夜はシュテルンちゃんの寝室で、アイリスちゃんとシュテルンちゃんに挟まれて眠ったのだが……いやはや、女の子はとってもいい匂いがしますね。ハハッ。
そんな感じで魔都『カリヤス』での日々は過ぎていくのでした。
とまぁこんなところで今日はおしまい。また明日。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます