002:アイリスという少女

 今日は私の親友、アイリス・フィル・エイリーズちゃんについて書こうと思う。


 純血のエルフ少女であり、このダンジョン『エテ・セテラ』近郊の街『エイリーズ』の辺境伯令嬢にして、私が住まう最深部ラストフロアへ直接アクセスできる人物の一人だ。


 髪は輝くばかりのオリーブグリーンに香料が入ってとてもいい匂いがする。髪はみぞおち辺りまで伸ばしたものをいつもツインテールに縛り、リボンは私が手慰みに編んだレースリボンだ。贈ったところ大変喜ばれ、お気に入りのように毎日つけて歩いているとのこと。


 ちなみに私が編むレースはかなり凝っている。図案に魔除けの文様を組込んでいるので、不浄が近づくと筋肉ムキムキマッチョマンの精霊ジン達がやってきて、コテンパンにノしてくれるのだ。名前はアドンとサムソン、餌は特製プロテインだ。ちなみに属性は『美』である。うん、わけがわからないね。私も何故こうなったかわからない。


 でもアイリスちゃんの可愛さは本物。私が趣味で作ったスキンケア製品によってさらに倍率ドンである。基礎化粧品大事よな! ましてや鉛、水銀入りのファンデーションなど以ての外だ。おまえ……死ぬのか……? 怖いすぎる。


 そんなアイリスちゃんがひとたび夜会に出れば、皆がこぞってやってくる人気のパーティとなる。っていうか格? がすごい? らしい。疑問系なのは仕方ないね、私人間じゃないし、貴族とかわっかんね。でもアイリスちゃんが表に出るたびに契約を取り付けてくるため、ウチで作っている基礎化粧品諸々はかなりの売上を叩き出している。え、ダンジョンに金が必要化だって? 必要なんだよなぁ……ダンジョンは万能じゃないし、材料も無限に湧き出すわけじゃないのだ。無いもんはないので買わなきゃいかんのですよ。


 災厄級スライムだって、商売というステージに上がれば一般貧弱革装備なのだ。


 そんなわけで外貨獲得手段の一つである基礎化粧品の売り込みをお願いしているのだが……どうも本人はもてはやされすぎてウンザリしているようだ。『おお麗しのエメラルドの君、そなたは美しい』、これを三日三晩語られるんだと。それはきついな。私なら『うるせぇ溶かすぞ』とか言う。でも言い寄るは居ないので問題ない。居ないったら居ないのだ。


 そんな彼女に一つ秘密があるとすれば、ぶっちゃけ『麗しのエメラルド』なんて瀟洒なタマではないという事かな。


「ふぅ、ここは涼しくて大変よろしいわねぇ〜」


 お嬢様らしからぬ有様で"ぐでーん"とリビングのテーブルに頬杖をつく彼女は、はふぅと息をついて心地よさそうにゆるゆるしている。なおテーブル、椅子ともに私がダンジョンマスターとしてD.I.Yしたものだ。肌触りに拘った質の良い石テーブルはスベスベしていて、ひんやりとした心地よい冷たさがある。

 外で売り出したら値段が付かないんじゃないかな。なにせ総アダマンタイト製だし。


『行儀悪いですわよ、アイリスちゃん』

「良いじゃありませんの、ここには貴女と私しかおりませんし」

『まぁそうですけれど……女子校の現実を見ているようでちょっと、ねぇ?』

「ジョシコーとはなんですの?」

『美形ゴリラの巣ですわ』


 ダンジョンの外は夏真っ盛りであり、アイリスちゃんの服装もフリルの付いた半袖ワンピースでとても涼やかだ。薄着の女の子って貴みがすごいよね。


 とはいえ暑いことには変わりない。薄着だからって外気が変わるわけでもないきついもんはきついのだ。その点ダンジョンは私が管理しているだけ有って、とても快適に過ごすことが出来る。エアコン完備のワンルームマンションとでも思ってくれればいい。


 そう、彼女は勉強をサボる、遊びに来る、それ以上に涼みに来ているというわけだ。外は猛暑だししかたないね。熱中症怖いもんね。


 まあ私と友好関係を結ぶという大義名分掲げればなんとでもなる。私はダンジョンを産業工業化してるから、私と取引をするということは大きなアドバンテージになるんだ。この世界においてダンジョンを産業工場地帯として、かつ外部と取引しているのは『エテ・セテラウチ』ぐらいなもんだからね。ダンジョン・マスター権限で結構な無茶が効くから、ウチでしか作れないような物も数多く出回っている。


 なんせ超高精度のフライス盤とか旋盤とか作って売ってるんだよ? 『エイリーズ』の産業革命がとまりませんね、ハハハ。


「あー、この部屋がウチにほしい」

『えぇ……涼やかなものなら、表で氷の販売していますわよね? 街ではかき氷も売っていたはず。あとソーメンも教えたと思うのですが』

「かき氷! あれ美味しいのですが、頭がきゅーっとなるので苦手なのです」

『あー成程ですわー。ちなみにキューって成った時、額を冷やすと治りましてよ』

「……レディはそんな事できなくてよ」

『うわーレディ大変ですわー私レディでなくてよかったですわー』

「ぐぬぬ、ミーティも(見てくれは)レディじゃありませんの! こんどきっちりマナーを勉強していただきますからね!!」

『私を生贄に捧げないでくださいます?』


 姿形は同じだから、表面のテクスチャをいじればあら不思議。瓜二つの令嬢ができあがるというわけだ。嫌だ、私は研究に忙しいんだ。ぜったいまなーになんか屈しない! 即落ち2コマみたいだなぁ。


 ちなみに氷についてだが、我がダンジョン『エテセ・テラ』の入り口で商人相手に取扱を行っている。魔力を通貨としての販売だ。今年は猛暑なので売れ行きは好調、毎日馬車が列になって買い求めにやって来ている。


 魔法がある世界だから氷も自由だと思うじゃない? そうじゃないんだなぁ……氷属性を扱える魔術師ってごく僅からしくて、それもだいたい王族や大貴族が抑えちゃうんだよね。だから庶民に手が届くお値段、つまり魔力さえあれば氷が手に入るとなればこぞって皆やってくる。こんな猛暑の年は特にね。


 ちなみに『エテ・セテラ』と『エイリーズ』をつなぐ街路は私が丹念にアスファルトで舗装したから馬車での行き交いはこの世界でも超高速だ。みんなニコニコ笑顔で利用してくれている。


 本当は鉄道とか作りたいんだけどね~、如何せん魔物が出るから線路の保護が問題なんだよ。あと線路の鉄を狙った盗賊とかな。大事故に繋がるから引けんのだよ。……ってあれ、これ自動車作れば解決じゃない? よし今度作るかな。材料設計から始めんとだけど時間だけは有り余ってるからね。


 とはいえ今はまだ先の話だ。魔石エンジンとか実用化にも程遠いし、とりあえず馬車でお茶を濁そう。


「しかし、なんでしたっけ、あの氷の販売所は」

『ドライブスルー?』

「そう! よく思いつくものですわ。馬車を直列に並べて運び込むなど考えもしませんでした」

『これでもダンジョンですからね。人手……いや、魔物手は沢山あるのです』


 そう、ウチはどう転んでもダンジョン。なので番頭から人足まで全部ダンジョン産の魔物、ダンジョンモンスターである。氷販売の窓口はレジェンダリーコボルトのボルト君を筆頭に、一つ目ギガンテスの超重機戦隊ギガンテズの面々だ。ネーミングセンスとか言ったら溶かす。これでも気にしているんだから……。


 いやー書いてて思うがボルト君は本当に働き者のワンコだ。こんど特製ドラゴンジャーキーを差し入れしよう。今度天然物を狩ってこねば。


「しかしミーティは不思議なことをなさるのね。こんなダンジョン見たことも聞いたこともなくってよ」

『そうでしょうね。でもダンジョン・マスターとは言わば経営者。商会ダンジョンに最大の利益が齎されるよう動くものですわ』


 ダンジョンってのはなんていうのかなぁ、世界の中にある一つの小世界って言ったら良いのか。広義では魔物の一種のはずだ。内部は独自の法則があり、既存の法則に縛られない特異で稀有なる空間魔物となる。当然中心となるダンジョンコアが存在するんだが、活動するには魔力を必要として自ら生み出すことは出来ない。


 基本的に外来生物を呼び込んで、その余剰魔力や死したる魂から発露するリソースを餌に生きながらえてるってわけだ。そういう意味だと私達が住んでいる世界もダンジョンなのかもしれない……うーむ、私はまた一つ真理に近づいてしまったようだ。えっへん。


 おっと、話を戻そう。


 ダンジョンの生態の基本は、オタカラを内部に生成、それを餌に外部から人間や魔物を呼び寄せて魔力を吸い上げるというものだ。けど、ダンジョンが広げすぎれば収集効率がなくなり、さりとてこじんまりとすると人が集まらないで困る。


 このバランスを管理するのがダンジョン・マスターの仕事というわけだな。そして私以外のダンジョン・マスターは……長えな、もう以後ダンマスでいいや。私以外のダンマスはダンジョンがやってることの延長線でしかなかった。


 つまりいい感じのオタカラを考えて、罠とかダンジョンモンスターを設置するとかそんなのばっかり。つまんない仕事をしよる。ダンジョンはもっと効率よく魔力を補充できるはずなのだ。なので私のダンジョン戦略はビジネスとして展開している。


 おかげでこのダンジョンも中小ダンジョンは元より、大手超ダンジョンに引けを取らない程に日々潤い、私の趣味も天元突破するレベルで楽しくやることが出来ている。


 フフフ、褒めても良いのだよ? いいのだよ?


『それより勉強はよろしいのです? お嫁に行けなくなってしまいますわよ』

「それを貴女がおっしゃるのかしら。このように便利で快適なもの、他の領地にはありませんわ。もはや断固として此処を動きたくなくてよ」

『えー……貴女このままだと、本当に行き遅れますわ。分かりますの? 生き遅れ……それは恐るべきなのですわ。お茶会に招かれては子供の世話や旦那の愚痴の言い合い、あるいは幸せそうな様子を見るでしょう。でも何れの会話にも参加できぬのが生き遅れなのです。哀れ、あまりにも哀れ……見るに耐えませんわ。というか私が見ていて辛いので早く旦那様をもらってくださいまし』

「あら、心配してくださるのね」

『それはそうでしょう。私達って気の置けない仲じゃありませんの」

「なら……私を、貰ってくださる?」

『はぁ?』


 ガターンと立ち上がった彼女は眼をキラキラ輝かせて此方を見ている。何を考えているのやら、年頃の娘はさっぱりわからない。いや私が断じてオッサンだからとかではない。マジで彼女は自由奔放なのだ。


『そもそも私はであってではありませんわ。人類とそれ以外で番になるなど……ましてや子をなすなど出来ようはずがないでしょうに』

「結婚だけが人生ではなくてよ。人は愛に生き、愛に殉ずるのですわ!」

『いやこの時代は子を生み育てるのが普通の人生ではなくって?』

「いーえ! "姫百合が見てる"は実在すると、私固く信じておりますわよ! ていうか次巻はいつですの?」

『私、これでも忙しいのですが?』


 アイリスが言う小説のタイトルは、私がペンネーム『鉄棒ねばねば』の名義で書いた百合小説だ。ノリで出版したところ貴族平民問わず婦女子の間で大流行してしまい、連合国議会おえらいさん方で私に対する著しい苦情が入った。親御さんたちには本当に悪いことをしたと思っている。サーセンと深く反省する次第であり、次は薔薇小説も書こうと思った。


 というか私は並列思考マルチタスク可能なので、作家コアの私が大絶賛執筆中だ。ここらへんスライムなのでとても便利、多趣味な私は大変愉快に毎日暮らしておりますよ。フフフ薔薇小説が世を席巻するのも遠い日ではない。


 そんなわけで出会いと同じように感化されやすいアイリスちゃんであるから、百合百合したものを読めば百合百合したくなってしまうのだ。チョロい。私は悪い男にだまされないかすごく心配です。まぁもしクソ男に遭遇したら『エテ・セテラ』全戦力と『ミーディアム』としての全権限を以て掃討するつもり。アイリスちゃんには幸せになってほしいのだ。そんじょそこらの馬鹿にはくれてやらん!


 その点ゴディバさんとは血盟を組んでいる。当然だよね。でも百合小説に感化されちゃったので愚痴りにくるなー等とと思いつつ、私は水分補給にと備え付けのサーバーから甘めのレモンスカッシュを出してやった。


 サーバーとはあれだ。ボタンを押すと飲み物が出てくるダンジョン設備……分かりづらいかな。ようは蛇口付きのワイン小樽がうんと並んでると思いねぇ。私自慢の錬金魔道具である。


「あっこれ好きです。しゅわしゅわがたまらないのですわ」


 そう言ってアイリスはふわわ~と幸せそうにこくり、こくりとレモンスカッシュを飲む。可愛いかよ。私は思わずスクリーンショットを取って画像解析した後密かに印刷しておいた。秘蔵のアイリスちゃんフォトギャラリーに一枚追加だ。でもいいのかなぁ?


『うーん……アイリス様。そのように表情を表に出してよろしいのです? 貴族令嬢たるもの感情は隠すものと伺ったのですが』

「あら? 私は正直者ですから間違った生き方をしているつもりはなくってよ。それに私は教えを請う側ではなく、教えを伝える側でしてよ」

『はいはい、そうですわねアイリス先生?』


 そういってお互いクスクスと笑い合う。うーん、とても居心地がいい。魔物生にもいい人間関係は重要なファクターなんだなぁ。特に仲良しさんは作っておくに限る。だからなんだろうね、今日の彼女ははなんとなくため息が多いように見受けられたんだ。


『どうかしまして? 今日は普段のようなアホ……ンンッ! 可愛らしさが無いじゃありませんの』

「いまアホの娘っておっしゃいました? アホの娘っておっしゃいました?」

『いえ、断じて可愛い娘と申しましてよ』

「……まぁいいでしょう。気落ちしているのも確かですもの」

『あら、何かあって?』

「今度避暑面目で魔王領の方へ出向かねばならなくって……」

『あーめんどくさ』

「でしょう?」


 魔王領とはそのまま魔王が収める領地だ。この夏の季節、婦女子達が集ってお茶会がしきりに開かれる。それは社交の場……つまり情報交換の場であり、見合いの場であり、女たちがつばぜり合いする決闘の地なのである。

 勝てぬものなどあんまりない私の数少ない弱点である『口喧嘩』の場だ。絶対いきたくない場所の1つである。気がついたらタダ同然でポーション卸すとかやりかねない。タダ働きはいかんですぞ。


 そんな場所で戦えるアイリスちゃんを私はリスペクトしているのだが、前述したように彼女は社交界にあまりいい感情を抱いていない。でも出なきゃいけない事情があるのだ。


『ほら、頑張って新作のコーデを宣伝してらっしゃいな。貴女のお父様も、街のみんなからも、正直世界中から期待されていてよ。それにシュテルン魔公女様も楽しみにしているでしょうに』

「……わかっていますけれど。正直見せるより作っていたほうが楽しいのです」

『だからこそです。作品は発表しなくては意味がなくてよ』


 アイリスちゃんは私と関わり、前世の記憶を伝えることで衣装デザイナーとしての才能を開花させてしまった。結果として彼女は連合国のファッションリーダーとしての立場を確固たるものとし、日々最新の流行モードを切り開く彼女は、こうした大きな催しにはほぼ必ず出席しなければならない。女性はいつだって、キラキラしたものに惹かれるもの……なのだが。


「あぁぁ……行きたくない。シュテルンとお話するだけならまだしも夜会は本当に面倒ですわ。ずっとデザインしてぐうたら過ごす生活がしたい……貴女みたいに」

『ちょっとお待ちなさい。私をヒキニートみたいに言わないでくださいます? これでも仕事していてよ、仕事』

「遊んでいるようにしか見えない」

『それが仕事ですから』

「くっ羨ましいッ……妬みで人が殺せそうっ!」

『ワハハ、ワハハ』

「棒読みですわね?」

『"てんぷれえと"というやつですわ』


 まったくこの子ときたら、興味があることにしか力を向けないのだ。生粋の趣味人にして職人ともいえる。さらに最深部ラストフロアみたいな快適な逃げ場ができてしまっているからか、今の彼女はかなり隙が多い。ホンマまじでゆるんゆるんだ。そんな馬鹿っぽいところを晒してくれるぐらい仲はいいのだけど、未来の旦那さんが見たらどう思うことか。


 いやそもそも私とゴディバさんのハードルを乗り越えられる貴人がどれだけ居るだろうか。ふむ、ちょっと考えてみよう。並列思考を利用した必殺私会議である。


(私集合!)

(どうした私、何があった)

(アイリスちゃん結婚できると思う人ー)

(無理じゃね?)

(なんでさ)

(いやろくな男がいないだろ私)

(そもそも私よ、冷静に考えてみろ。私が設けたハードル基準が日本だよ?)

(イクメンとか、家族好きすぎて早く帰ってくるとかレア物件すぎね?)

(ってーかさー、この世界の貴族は基本愛人作るから1人を愛すとか無理なんだよ)

(クソッ! ハーレムクソッ! まぁ性欲無いけどなんとなくムカつく)

(さらに言えば完全男尊女卑世界だから、デザイナーとして自由にやらせてくれる人が居ないだろ)

(つまり?)

(アイリスちゃんは結婚できない)

((((((((マジな)))))))))


 満場一致で『無理じゃね?』と裁定が下った。こいつはヤバイ。私は焦った。魔物生初といっていい程焦った。今度ゴディバさんと相談しよう……こいつはマストですよ。


 さて、話を戻そう。レモンスカッシュをおいしそうにこくこく飲むアイリスちゃんは、突然ティンと閃いて顔を上げた。


「ミーティ、貴女付いて来てくださらない?」

『はい?』

「避暑にならない避暑ですもの、お友達の一人も連れて行かなきゃやっていられませんわ」

『……仕方ありませんわねぇ』


 目をキラキラさせる彼女に私はめっぽう弱い。災厄級スライムさんの数少ない……すくないよな? 弱点の1つである。私はコアの一つをぷりんっと切り離し、デフォルメされた『わたくし』を作り出してテコテコとテーブルの上を歩かせた。よたよたとあるく様は我ながら可愛らしい。元がアイリスちゃんなだけはあるな。


 アイリスちゃんの前まで来ると、てちてちと振り返って『わたくし』は敬礼した。


『じゃあいってちます、わたくし!』

『ええ、行ってらっしゃい私』


 若干知能レベルは下がるが彼女にはこれで十分だ。避暑中の出来事も合流すればすぐに共有されるし、アイリスちゃんに危機が迫れば『わたくし』が対処する。1コアのスライムとはいえ『わたくし』も私だ。戦闘能力は生半可な騎士よりずっと強く、少なく見積もって近衛騎士百人斬りぐらいは余裕だね。またスライム故に隠密もお手の物、対暗殺者なら泣いて謝るレベルで鏖殺可能だ。


 物騒な話をしているけど実際物騒なんだよ。彼女を邪魔に思う人、結構いるからね。彼女の敵は私の敵。敵に情けは無用なのです。


 笑顔で『わたくし』を抱っこしたアイリスちゃんはふわりと花のように笑って立ち上がった。ううむ、そういう可愛い表情は苦手だから私も練習しないといかんね。


「そうこなくっちゃ! 実はもう準備は済んでいるのよ」

『だと思った。存分に楽しんでらっしゃい』

「ええ、それなりにね」


 そういってウィンクして彼女は行ってしまった。何とも嵐のような娘っ子だよ。そのバ可愛いさを肴に酒が飲める辺り、私もゴディバさんもアイリスちゃんには激甘である。こんど新作のお菓子を奢ってやろう。


 とまぁこんなところで今日はおしまい。また明日。

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