あの頃と・・・
勝利だギューちゃん
第1話
夏の日・・・
「こら、だらしないぞ!それでも、男の子なの!」
僕をどなる、女の子の声がする。
「僕は、か弱いんだよ」
「女の子みたいなこと言わないの!ほら立って・・・」
差し伸べられた手を握る・・・
とても、温かく・・・そして、やわらかい・・・
このままの時が、続くと思ったいた・・・
そう、この時は・・・
数年後・・・
季節は夏・・・
僕は、ある村の駅に降り立った。
生まれ育った、その村に・・・
この路線は、列車は通っているが、まだ電化されていない・・・
久しぶりに見る村の風景は、全く変わっていない・・・
ただ、当時僕が住んでいた家だけは、取り壊されていた。
生い茂る雑草が、何とも痛ましい・・・
この村は、全員が家族のようなものだ・・・
自分の家が留守の時は、他の家に「ただいま」とお邪魔させてもらう。
「お帰りなさい」と、温かく出迎えてくれる。
僕の事を、覚えてくれていた人も多く、次々と声をかけられる。
「久しぶりだね」
「元気じゃったか?」
心が安らぐ・・・
今も変わっていないようで、安心した・・・
もともと体が強くなかった僕だが、最近、ますます衰えている・・・
(寄る年波には勝てない・・・か・・・)
そんなことを、呟きながら、木陰で一休みする。
「男の子だろ!」
「がんばれ!」
「もう少しだ」
僕を叱咤激励する昔の声が、頭をよぎる・・・
(あの子は、どうしているかな・・・)
あの子とは、幼馴染の女の子で、僕の初恋の人・・・
僕がこの村を出ると同時に、疎遠になった・・・
僕がこの村を出る日も、見送りには来てくれなかった・・・
当時は寂しかったが、今は、その子の気持ちが分かる気がした。
ひとしきり歩いた後、木陰で一休みした。
(さすがに、暑いな・・・)
しばらくした後、声に起こされた。
「こら、こんなところで寝てると、熱中症になるぞ」
顔は、陰になっていて、良く見えない・・・
でも、懐かしい声・・・
「相変わらずだらしないな・・・」
「僕は、か弱いんだよ」
「相変わらず、女の子みたいな事言うんだね」
「君こそ、相変わらずの憎まれ口だね」
「ハハハ・・・とにかく、元気でよかったよ・・・」
「君もね」
「さっ行こう、みんなが待ってる」
差し出された、その子の手を握る。
温かく、そして・・・やわらかい・・・
あの頃と同じように・・・
あの頃と・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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