■情報の整理と推理5


○スターメゾン中目黒1階/5階 見取図

【https://ioriinorikawa.web.fc2.com/map_1F_5F.html】

○スターメゾン中目黒503号室 見取図

【https://ioriinorikawa.web.fc2.com/map_503.html】



「……で、話を戻しますが。第二の密室、これが厄介です」

 琴子は溜め息をついて、コーヒーを流し込んだ。室内の冷気で、すっかり冷めてしまったようだ。

「あ、そうそう」

 琴子は何かを思い出したように、パソコン画面を指さした。

「さっき気付いたんですけど、ここを見て下さい」

 防犯カメラ映像が一時停止の状態になっている。彼女が示したのは、五〇三号室の腰高窓だ。パソコン脇の見取図を見て、そこが共同通路に面した寝室の窓だと分かる。

「ここ、電気が点いているように見えませんか?」

 そう言われたので目を凝らしてみるが、いまいちよく分からない。顔をしかめていると、琴子が苦笑した。

「じゃあ、動かしますね」

 映像が動き出す。するとたった今、窓が暗くなったように見えた。注意して見ないと分からないのは、おそらく窓のカーテンが遮光カーテンだからだろう。遮光カーテンは照明の光が透過せず、反射される。合わせ目や端などの隙間から僅かに漏れた光が、辛うじて確認できる程度だ。

「電気、消えました?」

 薄井が聞くと、彼女は頷いた。

「ええ。最初は私も錯覚だと思ってたんですが、繰り返し観るうちに、やっぱり消灯されているような気がしてきて」

 消灯された日時をタイムカウンターで確認すると、十一月二五日午前四時十五分四五秒となっている。

「死亡推定時刻は確か、二五日の午前〇時頃から午前三時頃までの間でしたよね?」

 薄井が確認すると、琴子は肯定した。

「ですよね。じゃあ、誰が電気を消したんでしょうか?」

「うーん……」

 映像を観る限りでは、五〇三号室には被害者しか中に入っていないから、被害者の他に消灯できる人物はいない。だが、この時すでに被害者は殺害されているのだ。かといって、部屋の中に犯人が潜んでいたのかというとそうでもない。それも映像で確認済みだ。

 つまりという状況である。

 密室の謎を解き明かすどころか、謎が増えてしまった。

「ね、おかしいでしょう?」

「う~ん……」

 薄井は腕組みした。

 捜査が思うように進まない時は、いつも閉塞感を覚える。狭い部屋に閉じ込められ、外に出たいのはやまやまだが、扉を開く為の鍵が手元にない、そんな感じだ。

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