■現場到着1


○スターメゾン中目黒1階 見取図

【https://ioriinorikawa.web.fc2.com/map_1F.html】



 午前十時三十三分。

 鷹野が乗る捜査用車両に同乗させて貰い、薄井と琴子は現場臨場した。

 現場は、中目黒駅から都道三一七号線を北西に歩いて五分ほどの距離に位置する。周囲は住宅や商業施設が混在する地域で、首都高速と幹線道路が近い為、時間を問わず人や車両の通行は多い。

 薄井は車を降りると、目の前のマンションを見上げた。鉄筋コンクリート製の十二階建て、白い外壁は最近塗装し直されたらしく新築同様だ。

 ベランダは北向きで、都道三一七号線に面していた。その為か、ベランダの目隠し壁は高めに作られており、材質は恐らく壁と同様にコンクリートだろう。ベランダの数からして、一つの階につき五つの部屋があると分かる。雨水を階下に流す縦樋たてどいは建物の東西、つまり両端に取り付けられていた。

 数あるベランダのうち、五階の真ん中がブルーシートで覆われている。あそこが現場なのだろう、既に報道のカメラ対策が取られているようだ。現場内部の状況を映像や写真で報じられると、『秘密の暴露(犯人しか知らない事実を容疑者が自ら話すこと)』を得にくくなる等の支障が出るので、それを防ぐ目的がある。

 エントランスは反対側らしい。薄井は鷹野に付いて行き、裏へと回る。

 裏通りの車線は一本だけ。道幅は狭く、二台の車が離合するには一方の車が停車するか、互いに低速で走行しなければならない程度だ。道路に面したエントランスのポーチは、この規模のマンションにしては狭い。それは、向かって左側に高い壁が築かれ、その向こうにゴミ集積所と車三台が縦列駐車できる程度の駐車場が設けられているからだ。

 エントランスのドアはガラス張りの自動ドア。そこから建物の中に入ると、またもや自動ドアが現れる。自動ドアの手前にコンソールパネルがあるので、オートロック式のマンションだと分かった。

 コンソールパネルには、固定電話のプッシュボタンと同じ配列の数字ボタンが並んでいる。電話と違うのは〈呼出〉と刻印されたボタンと鍵穴、それとCCDカメラのレンズがある点だ。

 鷹野がコンソールパネルを操作して、現場となる部屋を呼び出す。間もなく応答があった。先着していた捜査員が気付いたのだろう。

「一課、殺人犯捜査の鷹野だ。開けてくれ」

 自動ドアが開いた。来客は普段からこうして、住人に通して貰うのだろう。それ以外では、自分が住む部屋の鍵をコンソールパネルにある鍵穴に挿し込み解錠するという方法で中に入ると考えられる。オーソドックスな仕組みのオートロックマンションであるようだ。

 エントランスホールの中は薄暗い。日光が射し込んでいないのもあるが、内装がシックな雰囲気に統一されているのが原因だ。天井の照明はダウンライトで電球色、オレンジ色の光が床に降り注いでいる。床の周囲を見ると、随所に間接照明が設けられ、洒落た空間を演出していた。

 エントランスホールの右手には〈OFFICE〉と書かれたプレートの付いているドア。この向こうが管理室なのだろう。

 管理室の対面側には階段があり、その隣はエレベーターホールとなっている。

 エレベーターは二基ある。上階行きのボタンを押すと、少しして右側の扉が開く。薄井たちはそれに乗り、五階を目指した。

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