この恋をもう一度

高嶺れいこ

第1話 失恋

運命の人はふたり居る。


恋を教えてくれる人そして、愛を教えてくれる人。


でも、やっぱり私は運命の人はひとりだけだと思う。


私に、恋を教えてくれた人も愛を教えてくれた人もこの世であなた…ひとりだけ。


苦しくて、悲しくて、楽しくて、言葉では表せれない感情。


きっと、私は何度生まれ変わることが出来てもこの時代のこの時の恋を何度も繰り返すだろう。


新しい恋をする前にこの恋をもう一度。




私の初恋は叶わない。


どんなに思っていても所詮、思っているだけ。


別に、きっかけは普通だった。


私が6歳の時、隣に引っ越してきたのがきっかけでよく遊ぶようになった。


何をするにもいつも一緒。


小学5年生の時に私がクラスに馴染めなかったのを助けてくれた。


そこから恋が始まった、ただそれだけ。


別に、特別でもなんでもないよくあるようなものだ。


でも、私にとっては特別だった。


世界が一気に変わっていった。


見るもの全てが華やかに色づいていった。


いつもと変わらない日常が特別な日常になって、会えるだけで幸せで会えないと寂しくて悲しいものに変わっていった。


思いを伝えることも出来ずに5年の月日が流れていった。


この片想いが終わるかもしれない日はやってきた。




その日は……


初めて恋に落ちて5年が経った冬。


16歳の高校1年。


「ごめん、もうお前と一緒に帰れねぇわ」

「ん?」

「だから…俺、彼女ができたんだ」


その一言で私の5年の片思いは終わってしまった。


私は初めて失恋してしまった。


実は少し前から知っていた。


昨日、スーパーの帰りにふたりが手を繋いで私には見せない笑顔で歩いているのを…見てしまった。


それでも、何かの間違いだって言い聞かせてたのに…。


直接言葉にされるとキツい。


その日の放課後、いつも隣に歩いていたあなたは隣を歩いてなかった。


「…うっ……うふっ……うっ……うふっ…」


目から勝手に涙がこぼれ落ちて、漏れる声を必死に抑えようと下唇を噛む。


歩いているのに足は重しが付いたように重く、思うように足が動かない。


スカートをぎゅっと握りしめる。





汚い感情が溢れ出す。


“あなたを1番思っているのは私なのに…

どうして、あの子なの?私を見てよ!”


どうして、あの子が隣を歩けるのか頭では分かっている。


でも、感情が追いつかない。


道行く人の視線など目にも止まらない。


やっとの思いで家に着くと走って階段を駆け上がり、ベッドへとダイブする。


「ふぇ……っん……うわぁ……っん……」


抑えていた声がだんだん大きくなる。


枕は一瞬にして涙で濡れる。


誰もいない家。


私の声だけがただ響く。


私があなたを思い泣いている間、ふたりがデートしていると思うと余計に涙が溢れ出す。


昨日見た光景が思い出される。


間違いであって欲しかったあの光景が現実なのだと思い知らされる。


泣いても泣いても泣いても泣いても…


私はまだ、あなたに恋をしている。


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この恋をもう一度 高嶺れいこ @makiochan09

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