【小説】『まず牛を球とします。』を読みました。いい意味で惜しい小説

2024年5月7日





 どうも。相変わらずポケモンSVのランクバトルに潜りっぱなしでまともに読書していない生活。


 まあそんな人間でも少しずつ手軽に小説を楽しもうと思い、今回は短編集をチマチマ読み進めました。タイトルは『まず牛を球とします。』。






  書籍情報



  著者:柞刈湯葉


 『まず牛を球とします。』


  河出書房新社より出版


  刊行日:2022/7/21



  あらすじ(Amazonより転載)

 牛は食べたいが、動物は殺したくない。そんな人類の夢が実現した未来を描いた表題作ほか、大正電気女学生、石油玉、現代の箱男などが大活躍!

非人類にもおすすめの奇想天外な作品集。







 こちらの小説の作者はカクヨムではお馴染み、第1回カクヨムWeb小説コンテストで『横浜駅SF』で受賞した柞刈湯葉……お馴染みですよね? 今考えるとカクヨムももう8年くらいサービスが続いているので、カクヨム初期作品はもう古参の中でもとくに古参にしか伝わらないかもしれませんけど、カクヨムお馴染み作家。


 今回の『まず牛を球とします。』という短編集は割とWEB小説らしさが出ている印象で、感覚的に言えばカクヨムに投稿されているような一万字程度の短編を集めたといった具合。まあ収録作品にはもちろんWEB初出の作品もありますので、まさにカクヨム短編の感覚で読み進められます。


 収録作品は、


『まず牛を球とします。』

『犯罪者には田中が多い』

『数を食べる』

『石油玉になりたい』

『東京都交通安全責任課』

『天地および責任の創造』

『家に帰ると妻が必ず人間のふりをしています。』

『タマネギが嫌い』

『ルナティック・オン・ザ・ヒル』

『大正電気女学生 ~ハイカラ・メカニック娘~』

『令和二年の箱男』

『改暦』

『沈黙のリトルボーイ』

『ボーナス・トラック・クロモソーム』


 となっており、あとがきやら解説やらを含めて300ページ程度の書籍で14作品も収録しているあたり、詰めに詰め込んだ短編集と言えますね。単純計算で割ってもまさにカクヨムの一万字短編といったところ。




 というわけで、今までの短編集の感想記事だと収録作品の紹介をしていましたけど、さすがにこの文字数の短編を紹介すると作品の核心部分に触れかねない。カクヨムでも短い作品のレビューを書こうとしてもネタバレを配慮すると書く内容に困ります。


 まあ表題作品の『まず牛を球とします。』だけ紹介するならば、食肉生産を求めた結果タイトル通り牛が球体になったというSF。多少叙述トリック的なものがあって後半は意外性があるものの、そこは本質でもないしそもそもその部分を語ってしまうとネタバレになってしまうので、やはり「食肉生産を求めた結果タイトル通り牛が球体になったというSF」以上に語れることがないです。





 ただ短い作品とはいえ読み応えがある作品もあって、個人的にとくによかったのが、『大正電気女学生 ~ハイカラ・メカニック娘~』『改暦』『沈黙のリトルボーイ』の三作品ですかね。


 その中でも『沈黙のリトルボーイ』は面白く、もし広島原爆が不発弾となったらという発想で、米軍が不発原爆を処理する歴史改変SF。着眼点が素晴らしくSF作品としてとても楽しめましたね。ただオチはそれでいいのかと思いましたけど。





 短編集全体を通しても、「このネタ短編にしておくにはもったいない」と思わずにいられないほどの、いい意味で惜しい作品が多く収録されていました。というか『沈黙のリトルボーイ』は長編で読みたかったです。







 まあそんなこんなで既述通り短編集故にあまり多くを語れませんけど、いい作品集でした。






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